「ゾーン」や「フロー」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
「ゾーン」「フロー」とは、もともと心理学用語で、若干意味が違いますが、概ねは同じものを指していると考えて構いません。日本語でいうと「境地」とか「没頭」とか言われるような状態です。つまり「ひとつの活動にのめり込んで没頭するあまり、他のことが気にならなくなる状態」という意味で捉えていただければいいと思います。
■逆U字仮説
なにかの作業をしているときに、集中して作業していたら周りの雑音などが全く気にならなくなって、気がついたら2時間も経っていた、という経験をしたことがあるかたも多いのではないでしょうか。これが「ゾーン状態」と言われるものです。
つまり、この時の状態は、非常に高い集中力があり、ものすごく生産性が高まっている状態なのです。これは、適度な緊張と興奮、自己効用感などがあいまって高いパフォーマンスを出すことができます。
ゾーンに入るための心理状態
逆U字仮説という学説があります。
縦軸にパフォーマンス、横軸に精神状態をとると、Uの逆の形になるというものです。スポーツ心理学ではよく用いられます。上の図でいうと、オレンジ色の部分がゾーンと言われる状態にあることを指します。そしてこの範囲にあるときが最も生産性が高く、それに対して横軸の緊張度・興奮度がこのゾーンの領域を外れると、その高低にかかわらず生産性は落ちるというものです。つまり適度な緊張状態でなければ、緊張度が高かろうが低かろうが生産性は下がるのです。これはある程度仕事や勉強を経験したことがある人なら感覚的にわかると思います。
こうしたゾーンの状態にあるときには、全てが自分のコントロール下にあるような感じになっており、時間の流れが自分の思考や作業速度に対して遅くなった、あるいは自分の思考速度が超速度で進んでいるように感じます。
■課題と自分の能力への自信の相関
ここで注目すべきなのは、取り組んでいる課題(作業)と能力・意欲のバランスが高次元で釣り合っているということです。つまり、取り組んでいる課題(作業)が自分の持っている能力と意欲によって次のように分類することができます。
ここでは「自信」と表現していますが、自己効力感、つまり「オレはできるんだ」という事実や思い、あるいは今の自分の精神状態、自分が持っていると考えている技術、そうしたものだと読み替えてください。
そうすると、課題の難易度に対して「自分ならやれる」と思っているときには、難易度が高いとやる気が出ます。これがゾーンに入るための条件になります。つまり、「ちょっと困難だけど、自分にならやれる」と感じる程度の課題と自信の相関関係が必要だということになります。
逆にこの自信のレベルが高いときに新人でもできそうな仕事を上司から指示されると、退屈に感じたりしてやる気を無くします。これが(3)の状態です。
自信がない状態のときに、難易度の高い仕事があると、それは不安を招き(2)、仕事に対して忌避感を持ってしまいます。また難易度が低ければ(4)、やる気はおきずに、ただただ「作業」として手足を動かしているだけになってしまいます。
こうした(2)〜(4)の状態では、最高のパフォーマンスを引き出すことはできません。
感覚としての自分の能力に対する自信
ここで説明した自信を、「自信がないとき」のように「とき」と表現しています。
つまり、この自信、自己効用感は、その日、その時によって変化します。また課題の難易度によっても変化します。
直前になにか大きな会議で、社長から直接成果や能力・技術力を褒められたあとみたいなことのあった直後には、自己効力感は非常に高くなっているでしょう。逆につまらない失敗をして上司から叱られた直後なら、自信も何もない状態になっているかもしれません。人間の心理にかかわる部分なので、かなり揺れ動くので、「とき」と状態を表しているのです。
つまり、課題の難易度も変化しますが、この横軸の変化は結構激しいのです。
そこで本章では、これをコントロールすることでパフォーマンスを上げる、ひいては時間の密度を上げる方法について述べていきたいと考えます。
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ある漁師が、新しい網を手に入れた。初めて使った日には100匹の魚が取れた。漁師はもっとたくさん取ろうと何度も漁に出るようになった。しかし、量に出れば出るほど取れる魚の数は少なくなり、漁師が漁に出る時間はますます長くなった。漁師仲間が彼に聞いた「なぜ網を修理しないのか。穴だらけじゃないか」と。 漁師は答えた。「そんなことをしている暇はないほど忙しい。もっと魚を取らないといけない」。
本書は、あなたの目標達成を手助けするために、時間管理の手法について書かれた本です。時間管理についてあなたが抱えている問題のいくつかを解決するための手助けをしたいと考えています。そのために、「時間」という認識しづらいものをどのように捉え、どのように生産性を上げるために利用するのかについての原理原則を提示します。
従来のビジネス書では、非常に抽象的な時間管理の手法の紹介になるか、非常に具体的で環境依存になって応用のしづらい紹介になるか、出版物にするという制約の中で、ピンポイントに絞られていた時間管理の手法について、その全体像を示すとともに、それを応用したTipsを600ページ超にわたって解説しました。
本書、上巻では、時間管理の概要と効率が高まる時間の管理方法を論じます。 時間管理においては、管理するものは時間ではありません。時間を消費するもの、すなわちその時間に「何をするのか」を管理することで、時間あたりの生産性を高める方法について述べます。 このために、時間管理の3つの管理手法について述べています。最初は時間の配分の方法。次に時間の密度を高める方法。最後に作業の方向性を管理する方法です。従来の時間管理手法に関するノウハウはすべてこの中のいずれかに分類できます。これらのノウハウが生み出された論理的背景と現実への応用方法について述べます。
とくに注意すべきは「時間を記憶してはいけない」ことです。時間は物理量としては認識しづらいため、時間に関する記憶は曖昧になりがちです。記憶ではなく記録し、時間を見える化をする方法が重要です。また時間の自由度に応じてどのような手法を用いるかの選択を適切にしなければ、生産性をあげることはできません。
あなたは、人生という大海で漁をしています。魚をたくさん得るためには、一度漁に出るのをやめて、網を修繕する時間を作ってください。網を修繕するだけでなく、もっと高性能な網を使った漁労方法を知れば、あなたはより短時間でより多くの魚をとることができるようになります。本書は網を修理し、多くの魚を得る方法について詳述します。
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