「いい加減」という言葉には2つの意味があります。
1.仕事を最後までやり遂げずに途中で投げ出すさま。
2.程よい程度。手ごろ。適当。
前者の場合には、「加減」の部分にアクセントがあり、後者の場合には「いい」にアクセントがありますが、書くと同じですね。ここでは、後者の意味で書いていますので、そのように読んでください。
■「いい加減」に仕事をする
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●人は自分の力量に見合ったことしかできない
たとえば、仕事をするうえで自分の「力量」を知っておくということは極めて大切です。
しかし、案外、それがわかっていない人が多いというのが実情でしよう。仕事のオファーがあれば、自分の力量と相談することなく引き受けてしまったリするものです。
しかし、人間は力量に見合ったことしかできないのですから、仕事がそれを超えるものだった場合には、対応しきれずに、あるいは結果を出せずに、相手に多大な迷惑をかることにもなります。
自分自身も「できない」ことへのあせリや苛立ち、悔しさや情けなさにさいなまれるということになるはずです。心に大きな負担がかかるのです。そんな事態に陥らないためのカギが「いい加減」を知る、「いい加減」を心得る、ということです。
もう、おわかりでしよう。「いい加減」とは自分の持っている「力量」のこと、そして、「いい加減」を知るとは、つまリは、自分の力量を的確に把握している、ということなのです。
「いい加減」を知る人は、仕事はもちろん、すべてのものごとを堅実にこなします。これが、信頼につながるのです。意識する、しないにかかわらず、「大ボラ」を吹いたリ、「大風呂敷」を広げたリすることがありませんから、周囲からの信頼を得られます。
「できない自分」に、いたずらにぶつからないようにする。そうすれば、いたずらに心を掻き乱されたり、自信を失ったりすることがなく、いつも安定した心でいられるのです。
そう考えると、「いい加減」を知ることは、人生をバランスよく生きるうえでの重要なコツになるともいえそうですね。ただし、ここでちよっと考えてみてほしいことがあリます。「いい加減」とどのように向き合うかです。
「自分の "力量" を超えないようにすればいいのでしよう?」
たしかに、それはそうなのですが、私は少し幅を持たせて考えたほうがいい、と思っています。つまリ、「伸びしろ」を見ておくのです。たとえば、自分の力量が「10」だと理解しているときに、「12」の能力を必要とする仕事のオファーがあったとします。
ここで、「これは、自分の "いい加減" を超えてしまうから、断るべきだろうな」とすぐに判断するのはどうでしようか。
なぜなら、その時点での、自分の「力量」と、能力の「限界値」は違うからです。いま持っている力量だけでは難しいかもしれませんが、挑戦心をもって必死に努力すればなんとかカバーできる。「限界値」はそんなところにあるのだ、と思います。
もちろん、必要な能力が「15」「18」ということになったら、「10」の力量では手も足も出ない。到底、こなすことはできないでしよう。
しかし、「10」の力量で、「12」の能力を必要とすることにチャレンジするならなんとかなる範囲、あえて、「いい加減」を超えるところに足を踏み入れてみる価値は十分にある、と、私はそう思うのですが、いかがでしよう。
一度そのレべルをクリアすると、実績にもなりますし、自信もつきます。そう、力量が上がるのです。当然、限界値もよリ高いレべルに上がっています・今度はその限界値に向かって挑んでいったらいいのです。「いい加減」を知ることは大事です。しかし、その先の「限界値」を見据えておくことも、同じように大切です。そのことをしっかリ胸に刻んでおいてください。
枡野俊明(著) 『心配事の9割は起こらない: 減らす、手放す、忘れる――禅の教え (知的生きかた文庫)』
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少し引用が長くなりすぎですね。でも、とても重要なことだと考えています。
本書にあるように、「120%でやれるプロジェクトをやろう」というのは、少なからず様々な書籍に書いてあります。自分の能力を伸ばしていく上で必要なことなのです。
「やれることしかやらない」では「やれること」は増えていきません。必然的に、その人の守備範囲が固定されてしまいます。
ところが、今の時代、仕事というのはどんどん様変わりしていきます。
たとえば、40代で社内随一の業績を叩き出したとして、その人が50代になった時にどうなっているでしょうか。おそらく、仕事が様変わりしてしまって、「俺はな〜、会社随一のセールスマンだったんだぞ」というだけの「役に立たないおじさん」になっているのではないでしょうか。なにしろ過去の対面セールスありきの時代で、いまはオンライン販売の時代になってしまえば、もう対面のセールス技術は役に立たないのです(ちょっと言いすぎですが)。
だから、常に自分にできること+20%の自分にできないことを仕事にしていくというのは、将来の自分の保身のためにも重要なのです。
■120%で走り続けたらどうなるか
でも、それを真に受けてしまうと大変なことになります。
もし、あなたが、あなた自身の力量に対して「200%の仕事をしろ」と言われたら、即座に「ムリ!」って言えるでしょう。これが120%ならどうでしょう。少し無理すればできそうなのです。で、「ちょっとだけのムリなら」と引き受けると、「ついでにコレも」と別の120%も、さらに「こっちの120%も」とどんどん仕事をもらってしまえば、あなたは結局、300%で仕事をしなくてはいけなくなります。
つねにひとつだけの仕事をするわけではないのです。そしてそれは終りがありません。
マラソンで、自分の持つベストスコアの120%の力で走り続けたらどうなりますか?
多分完走できないでしょう。
仕事は、ひとつだけではなく、そして短期勝負でもないのです。
■120%を出す仕事を厳選して、その他は80%で仕事する
あなたが120%の力を出して仕事をする目的は、自分の能力を広げるためです。だから、自分の能力が尋がならない仕事を120%でやってはいけません。
たとえば、定常業務(いわゆる雑務ですね)、プロジェクトA、プロジェクトBがあったとして、プロジェクトAは初めてのプロジェクトサブリーダを任されたのだとしたら、定常業務とプロジェクトBは力を抜くことです。もっと明確に言うと、抜くのは力ではなく手です。手抜き仕事をするのです。
当然、それでトラブルになっては、トラブル収拾に走り回らなくてはいけなくなって本末転倒なので、トラブルにならないギリギリの線を見極めて手抜きをすることです。
それで、あなたの業務のボリュームが100%を超えないように調整することで、あなたはこの先何十年も仕事を続けられるのです。
真面目に本書を受け取って、全てに全力でやったら身が持ちません。
定常業務 ー いい加減にする(悪い意味で)
プロジェクトA ー いい加減にする(良い意味で) *
プロジェクトB ー いい加減にする(悪い意味で)
どれも「いい加減」にするのが長持ちするコツ。
■参考図書 『心配事の9割は起こらない: 減らす、手放す、忘れる――禅の教え (知的生きかた文庫)』
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