いろな社内組織の業務改革のお手伝いをしています。組織運営で、経験的にほとんどの組織で当てはまる無駄というものがあります。
業務改革をお手伝いするときに、最初に着目するのはこの3つです。
・管理の無駄
・是正の無駄
・相談の無駄
そして、これを変えていくと、ほとんどの組織の生産性はものすごく改善します。
なぜ、私がちょっとお手伝いするだけで、そんなに簡単に変われるのかというと、ほとんどの人がそれを良いことだと信じてやっているからです。逆に言えば、それが「悪いこと」だと認識できれば改善する方策が見つかるのです。
これらは、建前的にはやったほうがいいことばかりなのです。だから否定できません。「頑張ってやる」になってしまっています。その結果、個人や組織としての生産性や活力が下がっていくのです。
長文になったので、3回に分けてお送りします。本日は第3回。「相談の無駄」とまとめについてお送りします。
■相談できない無駄時間
たとえば、誰でも難しい問題に直面して判断を迫られると、どうすればいいだろうかと悩みます。それ自体は、まったく健全な悩みです。そんなとき、職場の誰かに気軽に相談できれば、親身なアドバイスやアイデアをもらえたりして、悩みが解消されるかもしれません。たとえ解決しなくても、人に相談するだけで気持ちはかなり楽になります。
それに対して、相談できる人がいない、相談すべき相手が“相談したい相手ではない”場合はどうでしょう?
「報・連・相」とは誰もが知っている仕事の基本ですが、じつは報告・連絡と「相談」では大きな違いがあります。
報告や連絡は、すでに明らかになっている結果や決まったことを伝える行為です。扱う情報は“データ”ですから、会議や報告書など形式を決めれば、機械的に処理できることが多いです。
それに対して、相談の場合は、事実だけでなく主観や感情を含む状況だったりします。
◆相手に対して心理的な距離がある場合
こうしたものは相手を選びます。馬鹿にされる、悪く評価される、自分の無能を思い知らされる、弱みを握らるなど、相手との心理的な距離や関係に依存してしまうのです。
上司と部下、社員間の関係性が、言うと自分が損をすると思えるような状態だと、たとえ困り果てていたとしても周囲には相談できません。
選択肢は自分で何とか解決しなければと悩み続けるか、隠すの2択しかないのです。
ただその間も時間だけが流れていき、ついには破綻する時が来るのです。
人間関係・信頼関係によって、課題の解決速度は変わるのです。
◆相手に対して遠慮がある場合
もうひとつは、信頼関係があったとしても、相談というのは通常、自分よりも経験や知識において上位の人、有能な人なのです。つまり、相談というのは、その上位の人の時間を奪う行為なのです。
相談する側はそのこと(相手の時間を潰してしまうこと)を遠慮して、相談できるタイミングを待っている状態ができたりします。つまり相談事を抱えた人は、その仕事を一時的に保留して、相談する相手の様子を観察するという業務が発生します。当然、本来やらないといけない仕事はどんどん遅れていきます。
◆複数の相手がいる場合
相談をしなければいけない自体というのは、えてして「判断をお願いする」ということもあります。また、単なる技術的な問題だとしても、相談者は一人ではなく複数人であることがあります。そうすると打ち合せの場を設定しなければいけません。
簡単な話であっても、そうした場を設定するということは日単位で時間が必要になります。
多くの場合、1週間位は待たないといけなくなるでしょう。相手が忙しい人(特に管理者・責任者と言われるような人)の場合には2週間先まで予定がぎっしり詰まっていて、さらに複数人の予定が同時に空いている時間はと言うと1ヶ月先、などということも起きます。
どうしても急ぎの場合は、「ご相談したいことがあるので、明日の××の予定を開けてくれませんか?」などと頼むこともあるでしょうが、そうしたことはなかなか連発できるものでもありませんので、打ち合わせの予定を設定して暫く待つ、ということが多くなります。
その結果、スケジュールは打合の時間設定がボトルネックになるのです。
私の経験でいうと、システムの要件定義をするときによくこうした問題が起きます。要件定義はユーザの意見を聞かないといけないのですが、そのユーザは通常一人ではありません。大勢の人が関係します。そのためにヒアリングの場を設けるのですが、毎週少しづつというわけには行かず、不明点が発覚した時点で打ち合わせを設定することになります。そのために、不明点は1週間以上放置されて他の開発が進むのですが、不明点が解消されると、すでに開発してしまった部分にも影響する要求が出ます。結果手戻りになって自分たちに跳ね返ってきます。
またその時に都合で参加できなかった人から「オレはそんなこと要求してない」とかクレームが入れば、とうぜん修正案を出して、また全関係者を集めて承認を貰う必要があります。こうしてシステムの開発プロジェクトは日々遅れていき、工数だけが積み上がっていくというわけです。
◆手待ちの無駄
よくトヨタのカイゼンで無駄の中に挙げられる言葉に、「手待ちの無駄」というものがあります。
これは、ひとつの製品の作業が終わって、次の製品が流れてくるまで作業者の手が止まっているという無駄の事を言います。
通常の業務においても「手待ちの無駄」がこのようにして発生して、全体の生産性を下げているのです。
■3つの無駄に気をつける
前述した3つの無駄は、基本的にはどの組織にも見つかります。そしてそれが生産性を下げる最大の要因となっていることがおおいのです。
こうした問題に対処する方法は、簡単ではありません。それは何らかの必要性があって生じているからです。
その必要性をどのように評価するかによって、判断は変わってきますし、その必要性は会社として、生産性を下げてでも行わなければならないものである場合もあるのです。
簡単に答えが出せるものではありませんが、冒頭に書いたように、単純に「良いことだと信じて頑張ってなんとかする」のでは解決しないことは明らかです。
さまざまな状況があるので、この記事で一概に答えは書けませんが、この3つの課題
・管理の無駄
・是正の無駄
・相談の無駄
に対して、それが無駄であることを認識することから始めないといけない問題です。
常にアンテナを張り、そもそもそれは必要なことなのかを考えながら行動する必要があります。