「部門の効率化をしましょう」というテーマが出ると、どこの会社でも、どこの部門でも槍玉に上がるのが、定例の進捗報告会です。
部門内の進捗報告会というのは、多くの人にとって、時間の9割は退屈なだけ。1割は上司からお小言をもらうだけのいやなものです。なので、多くの人が無駄な時間だと考えています。
そのうえ、進捗報告には報告資料がつきもので、これを作るのに1〜2時間、課題が多いときには1日くらいの時間が必要なのですが、発表は数分。ひどいときには前の報告が長引いて、時間切れで発表時間すらないことも少なくありません。
とくにチーム全体で見ると進捗報告を書くのは、チームのリーダーですから、その人の事件費は最も高いのです。もっとも費用が高い人が一生懸命、忙しい時間を咲いて作ったのに、使われるのはわずか数分、それ以降はだれも見ることはありません。
これでは、進捗報告を効率化しましょうという提案が出てもおかしくありません。
しかし寡聞にして、進捗報告が不要になった組織や、進捗報告会をやめた組織というのも知りません。
なぜでしょうか?
それは、「進捗報告」に対する意識が、個人と組織では違うからです。
■進捗報告を意識する
組織が進捗報告に対して期待しているのは、以下のようなものです。
・目標やプロジェクトの達成意識が上がる
・課題や問題を早期発見できる
・スケジュールやタスク、優先度が可視化される
・達成へのノウハウが蓄積される
・目標達成に対してリソースの配分を調整できる
一方で、進捗報告を作成したり聞いたりしているメンバーの意識は、前述の通りなのです。
もしあなたが、自分は進捗報告の意義を感じていると思ってみえるなら、今週の進捗報告会で行われた、自分が参加しないプロジェクトや活動の進捗状況と今週の課題を書き出してみてください。書けないのは、おそらくこれらに対する意識がまだ十分ではないのです。
逆にもしその進捗報告を受ける人、たとえば部長だったらどうでしょう。多分、書けると思いませんか?
もちろん、うろ覚えのところもあるでしょうが、1行も書けないということはないはずです。
それが組織と単なるメンバーの意識の違いなのです。
■進捗報告を活用する
今の会社における自分の目標の進捗状況がわからないというひとはイないのではないでしょうか。でもそれは頭の中にあることで、それを具体的に表現してみると、意外と問題や課題について正確に把握できていないことも少なくありません。
人間の脳は論理よりもイメージを優先に考える事が多いのです。すこし余談になりますが、こんなエピソードがあります。
かつて鉄鋼王と呼ばれた大富豪アンドリュー・カーネギーがひどく悩んでいた時があったそうです。彼は仕事でも家庭でも多くの悩みを抱えていて、「もはや自殺するしかない」とまで考えました。そして、自殺用に拳銃と遺書を書くためにペンを取りました。そこで、なぜ自殺をするのかということを書こうと自分の悩みを書き出したのです。これだけ苦しんだから、百や二百ではたらないだろうと思いながら。
実際に書き始めてみると最初はどんどん書けますが途中でペンが止まってしまいます。
「自分が自殺する本当の理由はどれだろうか?」
「たったこれだけしかないのか?」
結局、彼は自殺を思いとどまって食事にでかけたそうです。
このエピソードから学び取れることはいくつもありますが、ここで言いたいのは、人間は頭の中にあるだけでは問題を具体的に解決することができないということです。その問題を実際に人に説明できるようにしてみてはじめて、それを客観的に見ることができるようになるということです。
進捗報告は、課題を客観的に見ることと、岡目八目、すなわち他人の目から見ると、実は課題がよく見えるということを実現するために利用すればいいのです。
すなわち、
・自分の目標達成の課題に対しては、状況を的確に説明できるように整理してみて、それを客観的に観察できるようにすること。
・他人の課題に対しては、自分の知識や経験を活かすことはできないかと考えること
・他人の課題やその解決方法を、自分の課題解決やリスク回避に利用できないかを考えたり、自分の知識として取り込むこと
を考えながら、自分の進捗資料を用意し、他人の進捗発表を聴くのです。
これで、あなたの進捗会議への意識は大きく変わります。
毎週の進捗会議の場で、全てのプロジェクトについて、1件はこうしたポイントを書き出すことを習慣にしてみてください。あなたの生産性や成果は大きく変わります。