目標の立て方(目標評価編)




目標の設定方法についてご紹介しています。本稿では、立てた目標が更に上位の目標の中でどの程度の位置づけにあるのかを確認する方法についてご紹介します。
全会までに書いた基本編・応用編で述べたように、多くの人が躓くのは達成可能で、現実的な目標を立てることです。

最初に決めた目標値は、とりあえず仮の目標です。その仮の目標を達成するためには、その目標値はどのくらい実現可能なのかを考えていく必要があります。実現可能かどうかを判断するためには、自分の知識で達成可能性を判断できるほどの課題に分解していくか、具体的な情報が入手できるレベルに分解していく必要があります。




■成果として妥当なのかを評価する


そして、実際にその課題を実際にやれそうな成果の数字に変更して、最後にそれを合計して最終的な目標値にもう一度戻すのです。

たとえば、「補助業務(部の重点目標以外の業務)20%の削減」という目標があったとします。その場合、補助業務に相当する業務を分解してみると
?   昼礼 15分/週
?   チームミーティング 1時間/週
?   進捗報告書作成 2時間/週
?   出張報告書 2時間/出張
?   役員報告資料作成 4時間/月
があったとしましょう。これを月の単位で揃えると、全体で19時間あります。これの20%なので、3.8時間を削減すればいいことになります。極端な例で言えば、チームミーティングは1ヶ月で4時間かかっていることになりますので、「チームミーティングをやめれば20%は達成できるな」と考えるわけです。
ただ現実には、チームの連絡会そのものをやめるのは難しいと思います。それは難しいかもしれないので、更に別の案を考えます。
?   チームミーティングは1回30分にする → 0.5時間 × 4回 = 2時間削減
連絡事項や情報共有はSNSを導入して議題を減らし、ミーティングでは顔を見て話さないといけないことだけに限定する。
?   進捗報告書の作成は前月の役員報告の資料に変化情報だけを記入するようにすることで、1.5時間に減らす→ 0.5時間 × 4回 = 2時間削減
このようにして、「全体で4時間削減は可能で、20%の目標で活動できる」と判断するわけです。

このように、自分が持っている情報や判断可能なレベルにまで目標をブレイクダウンして、具体的行動に落としていくわけです。

この具体化の方法については多く書籍があります。またそれを考えるためのツールもいろいろあります。

本書は詳細な説明は書面が少なすぎてできませんが、先に挙げた WBS の他に
?   マンダラート
?   マインドマップ
?   OKR
?   GROWモデル
なども活用できます。

私は、WBSとマインドマップを多用していますが、会社の目標から考えるためには、KGI×KPI×KDI法もおすすめです。考え方はすべて同じです。掲げた目標に対して、それを小さな目標に分解していき、具体的な行動がわかるようになるまで分解していくことです。




■上位の目標との整合性を確認する


基本的に組織の目標というものは、それを分解して組織に所属する個人の目標になります。多くの会社の場合、会社の目標(たとえば、「利益1億円」)をそれぞれの部門の特性に合わせて、部門に分解されます(たとえば、営業部門であれば「売上10億円」、技術部門であれば「新製品の販売日程遵守」)。そして同様に、部門→課→個人と目標が分解されていって、個人の目標になります。

役員や管理職が、この分解をするのですが、最終的に個人目標を全部足すと部の目標になっているかという評価が十分にできていないことがあります。理由はいくつかあるのですが、主な問題は個人のスキルに合わせた目標を立てようとすること、組織の最大化をしたいというパーキンソンの法則が働くためです。

結果として、部門の目標にない個人の目標が作成されたり、部門の目標が個人の目標そのものになっていたりします。最悪の場合、個人の目標を足し算しても部門の目標には達しないとか、逆に個人の目標の総和の目標が部門の目標を上回るようなものになっていることがあります。

したがって、あなたが立てた目標が部門の目標に対する貢献度をきちんと評価しないと、ムダな工数をかけるだけとか、部門としては最終的に目標未達成ということが最初から確定事項になっている場合があるのです。
「そんなバカな」と思われる方もかもしれませんが、実際に正確に見てみると、それほど珍しい現象ではなかったりします。

たとえば、昨今流行りのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション;間接業務のPC操作の自動化)も、たまたま製品ソフトを手掛ける部門が、「ソフト屋が多いから」という理由で「全社のRPA導入推進」を担ったりしています。そのためにその部門のメンバーを割いて、製品開発にかける工数を減らしている(結果として開発日程が遅れる)というのは、良い目標と言えるでしょうか?

もし、あなたの所属する部門が、部門の業務分掌を公開(多くの会社では定義されています)している、あるいは部門のミッション・ビジョンを提示しているのであれば、部門の今年度の目標が、それらに沿っているかを評価してみてください。
次に、部門の目標に対して自分の業務目標がどのくらいの影響を与えているのかを評価してみてください。

部門業務分掌に対して、部門目標のある項目が全く関係ないものであったなら、その部門目標の項目に対応するあなたの業務目標は、会社にとっては無価値です。製品開発が部門の業務であるときに、「RPAの営業部への導入件数」という製品開発部門の個人目標は会社からは業績としては評価されない、ということです。これは良い目標とは言えません。

■やりたくないことをやらない


良い目標の条件は、自分が本当にやりたいことと一致していることです。

「そんな事はわかっている」と言われるかもしれませんが、意外と自分がやりたいことを勘違いしていることに気がついていない場合があります。
いろいろな書籍を調べてみると、この「やりたいことを見つける方法」をよく見かけます。しかし「やるべきこと」と「やりたいこと」の区別がついていない場合が多いのです。

具体的に「やりたいこと」を見つける方法ですが、それほど難しいことではありません。紙に「やりたくないこと」を書き出すのです。タイプミスではありません。「やりたくないこと」を書くことが重要なのです。常識に囚われたり義務感に囚われたりしてはいけません。可能か不可能かも考えてはいけません。

多くの人間は「幸せになる」というのが究極の目標なのではないでしょうか。「不幸になりたい」と思う人はいないでしょう。その一方で、仕事だからと夜遅くまで働き、自宅は風呂と寝床としてしか機能していない。毎日が修行僧のように我慢に我慢を重ねる会社人生。それを乗り越えた先に幸せがあるのでしょうか?

もし、やりたくないことを会社でやっているとしたらどうでしょう。
サラリーマンであれば、やりたくないことでも上司の命令であればやらざるを得ません。やりたくないからと言って本当にやらなかったら指揮命令違反です。これは懲戒免職の対象にされても文句は言えません。……と多くの人は思っています。しかし本当でしょうか?

「これは私はやりたくありません」と言ったからといっても、すぐにクビにしたりはできません。実際にこうした場面で、免職を切り出すのはじつは難しいのです。上司は複数の部下を持っているので、あなたが担当する必然性があるのは、あなたにしかできない仕事です。それ以外はできさえすれば誰でもいいのです。結果としてチームや部門として業務に支障が出るというような場合は少ないのです。
無論、上司の心証は悪くなるでしょうが、それは甘んじて受けるしかありません。やりたい仕事を十全以上にこなせば帳消しにできます。

やりたくないことを無理にやろうとしても、モチベーションは上がりません。モチベーションもなく、それについて考えるのも嫌なのだとしたら、前述したような面倒くさいステップを踏んで目標を具体化できるでしょうか。そして、目標を実現するために、頑張れるでしょうか? おそらく続かないと思います。たとえ続いたとしても、生産性が上がる要素はありません。

まず、目標から外すべきは、「やりたくないこと」なのです。

やりたくないことをリスト化するのは、「いやだな〜」と思っていることを、具体的に言葉にするためです。人間は言葉で考える動物です。言葉がなければ、「気持ちが後ろ向きになる」くらいにしか認識しません。その理由は「これがやりたくないからだ」とちゃんと認識した上で、行動することが必要だからです。

■その目標は自分のミッションに沿っているか


目標を考える上で、「やりたくないこと」の次に大切なのは、自分の人生にとってその目標はどのような位置づけにあるのか、ということです。

「そんな大仰な」と考える方がいるかも知れませんが、これが一番モチベーションが高まる方法です。多くの成功本を読んで「やりたいことリスト」なんて作っても、1年経って、もし仕事の内容が変わってしまっていたとしたら、「やりたいことリスト」はきっとほとんど意味をなさない「過去のお仕事リスト」になっています。
それよりも、「生涯の中で自分がどうなりたいのか」と目標を見比べるほうがよっぽど確実です。

私は、『7つの習慣』(スティーブン・R.コヴィー (著)、キングベアー出版、ISBN=978-4863940246)を読んでから、思い立ってこのミッションステートを作りました。

作り方はそれほど難しくありません。以下にそのやり方をご紹介します。

◆自分のミッションステートメントを作る方法@


まず、条件設定をします。あなたの余命が1年位しかないものと思いこんでください。あと1年で自分の人生は終わる。ではその残り1年で全財産を使い切って綺麗サッパリ死のうと考えます。

何をしますか?
この答えが、あなたが今最も重要だと思っていることです。

◆自分のミッションステートメントを作る方法A


あまり実感がなければ、もっと簡単に行きましょう。インターネットで「ミッションステートメント」と検索してみてください。なるべくたくさんのミッションステートメントを眺めてみてください。「そうだな。自分にはいいかな」と思えるものを、Excelにでも書き写してください。

それを1年間眺め続けます。毎日毎日。毎日が無理なら、せめて週イチ。電車の待ち時間、ちょっと仕事で飽きたとき。つねにアプリを立ち上げていて、それがいつでも瞬時に編集できる幼体を維持してください。そして、ちょっと気になった文言を書き直してください。違ったと思うものは除外。一部だけ良いと思えるものは、そこだけ残したり、他の文言と合体させてください。
時間があればまた検索して、「これは!」と思うものを追加してください。

1年も続けると、あなたオリジナルのしっくり来るミッションステートメントが出来上がっています。
ポイントは、ミッションステートメントを一つに絞らないといけないとは思わないこと。たくさんあってもいいです。そして、ちょっとでも違和感がある文言は、自分の言葉に置き換えようとすることです。いつも編集していることです。

◆ミッションステートメントと目標を比べてみる


半年もするとミッションステートメントである程度納得できるものがてきてきます。そうしたら、今持っている目標と見比べてください。仕事の目標も個人の目標も全部です。

そうすると、ミッションを強化する方向の目標と、ミッションと外れている目標がみつかります。

どちらとも判断がつかないものは保留して、ミッションに沿っていないものは目標から除外する方向で動きましょう。





■参考図書 『7つの習慣




全世界3000万部(40カ国語に翻訳)以上の発行部数を誇る、自己啓発書の原典。
著者スティーブン・R・コヴィー博士は、英「エコノミスト」誌によって「世界でもっとも影響力のあるビジネス思想家」として紹介されるなど不動の評価を得ている。

本書では人が真の成功を達成し、永続的な幸福を手に入れるには「原則」に基づいたアプ口ーチが重要であるとし、「私的成功」から「公的成功」へと至るための「7つの習慣」として、
 第一の習慣:主体性を発揮する
 第ニの習慣:目的を持って始める
 第三の習慣:重要事項を優先する
 第四の習慣:Win-Win を考える
 第五の習慣:理解してから理解される
 第六の習慣:相乗効果を発揮する
 第七の習慣:刃を研ぐ
を説いている。








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7つの習慣
著者 :スティーブン・R・コヴィー

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●本書を引用した記事
 人を動かす:相手の話を聞くときには手を止めなさい
 予算管理とは突発費用に対応できること
 記憶術:視点を変えて繰り返す
 矛盾す複数の問題を一気に解決する「インクルージョン思考」
 長期課題マット
 考えは伝えられない
 初対面で必ず好意を持たれる振る舞い方
 影響力の武器
 問題は外にある
 3つの習慣part2


●関連図書
 
完訳 7つの習慣 人格主義の回復
 
まんがでわかる7つの習慣
 
7つの習慣 演習ノート―ビジネス、プライベート、家庭で、効果的な人生を送るための 成功への原則がよくわかる!
●このテーマの関連図書


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CD‐ROM付図解成功の9ステップ

あなたの夢を現実化させる成功の9ステップ(幻冬舎文庫)





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posted by 管理人 at 08:45 | Comment(0) | 知的生産術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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