この 10 年くらいでよく聞くようになった IoT のお話。
といっても、私の所見ではなく、書籍の要約です。
IoT というと馴染みがない人には、「またコンサルが儲けるため3文字英語」みたいに聞こえますが、そのとおりです(笑)。
別にこんな言葉を使わなくても、設備には昔からそんな機能はついてます。設備屋が言うんだから間違いない。
じゃあなんでこういうことを言い出して、それが世の中で騒がれているのかというと、商業ベースで言えば、こういう流行り言葉を作ることでいままで興味がなかった人が、「なにかしなくちゃ」みたいに焦って、お金を使ってくれるようになるからですね。
一方で、技術的に見ると、昔と違うのは、データの収集コストが格段に下がったこと。センサーやメモリ、CPUなどのハードウエアもそうですし通信速度も。これらのおかげで、データ量を増やしてもコストは上がらなくなりました。
……で、これらが安価に小さな装置で使えるようになったことで変わったことが、より多くのデータを収集・集積できるようになったことです。いわゆるビッグデータです。
で、その波のド真ん中にいるIT屋としての立場としては、それをビジネスになんとか生かして、より効率よく、より生産性を増やしたいと思ったりするわけです。
じゃあ、その IoT からどんなビジネスが生まれるか、どのように今のビジネスを変えていくといいかを模索していたりします。
本日紹介するのは、それを調べる過程で発見した、わりと「そのものズバリ」の本なのですが、網羅的に書かれていて全体像がわかりやすかったのでご紹介。
■目次
◆はじめに
◆200年ぶりのイノベーション
「人がいなくてもいい」世界
本書の構成
◆第1章 500億台のモノがネットにつながる日
満員電車を避けるには
RFIDから始まったIoT
急激に拡大するIoT
IoTを構成する要素1モノ
IoTを構成する要素2センサー/他
◆第2章 機械が主導する情報の世界
肌着がネットにつながったら
パピルスの医療情報ネットワーク
機械が生み出す情報空間
注目すべきは打率なのか
塵も積もれば山となる/他
◆第3章 あるべき姿を実現する
目隠しでサイを触ったら?
体温計をスマホにつないだら?
コーヒーマシンとドライブレコーダーが教えてくれるもの
「最適な行動」を起こすのに最適な場所
「モノを買う」プロセスの最適化/他
◆第4章 あらゆるモノを賢くする
魔法のアンクレット
AI玩具の可能性
広告クリエーターになる看板広告
水晶玉としてのIoT
あらゆるモノが賢くなり続ける/他
◆第5章 「電球」ではなく「光」を売る
古代エジプトの「レンタルロバ」
レンタルというビジネスモデル
IoTによるレンタルモデルの進化
ハイアールのIoTコインランドリー
不便と利己主義をIoTで取り除く「タイムズカープラス」/他
◆第6章 ビジネスモデル変革を成功させるために
戦略に秘密は必要か
トップの決断を引き出す
データ収集への信頼を勝ち得る
顧客のニーズと向き合う
将来の技術革新を前提とする/他
◆おわりに
ある世界的イノベーターの破産
技術からビジネスを考える難しさ
機械と人間が融合する世界
あらゆる知見に勝るもの
■要約
●IoTとは
近年注目を集めるIoT(Internet of Things)とは、モノがネットワークにつながり、離れた場所で情報のやり取りができる「モノのインターネット」のこと。この技術を利用した様々なサービスが登場している。
IoTは5つの構成要素を持つ
@ もの
A センサー
B プロセッサー
C 通信機能とネットワーク
D 情報処理
IoTによって、
・情報の収集にかかるコストが圧倒的に少なくなる
・情報の伝達速度が瞬時
・データのクレンジングが不要になる
・大量のデータが蓄積できる
ようになる。
●何ができるか
企業は多くの情報を迅速に集め、正確な全体像を把握し、それに基づいた的確な行動をとることができるようになる。
これらの経験値=データの蓄積により、作業者は熟練工よりも的確な判断ができるようになる。
このデータ群に対して AI や 機械学習 が充実することによって、現実とサイバー空間の情報が一致するようになる。
●IoTを活用することで、モノが賢くなる。
例)スプラウとリング(赤ちゃんの足首に装着):体調や環境のデータを蓄積し、赤ちゃんの起床時間を予測。⇒「起きないうちに洗濯しよう」などのアプローチが可能。
・アップデートの強み
IoT製品のアップデートは、インターネットでできる。
例)テスラの電気自動車:ドライバーに代わって運転の制御をおこなう自動運転機能が、まるでスマホOSを更新するかのようにネットワーク経由で入手可能。
アップデートすることにより、もの自体も進化を続けることができる。
以前の装置は、購入した時点から価値が減り続けるが、アップデートすることによりその価値を維持したり向上したりすることが可能になる。
これにより、「装置をより賢くする」「より現場に適応させる(プレミアムサービス)」ことに対してビジネスモデルが出来上がってくる。
さらに、装置を完璧に仕上げてからリリースするのではなく、より短いサイクルでリリースすることが可能になる。
一方で、価値が減少しないために買い替え需要はより長くなる。
・データの分析サービス
もうひとつのビジネスは、集積したデータの分析である。
データを分析することによって、よりユーザのカスタマイゼーションが可能になるとともに、分析結果自身をユーザに提供することによって、ユーザの利益に貢献することができる。これを実現するために装置の初期投資にかかる費用を抑えることが必要になる。
●レンタルビジネスで高度な管理
レンタルビジネスにおいて、IoTは人よりも高度な管理ができる。
例)ハイアールアジアの「ITランドリー」:洗濯機、乾燥機の稼働状況を収集し、データを加工→コインランドリーオーナーに売り上げや機器のトラブル情報を伝えたり、利用者に洗濯が終わる前に直前にメールで知らせたりできる。
使い捨てのものでない限り、ユーザは装置を購入した後継続的なメンテナンスが必要になる。
それに事業者が手を貸すことによってユーザの利益を確保する(コストを下げる)ことができるようになる。ただし、ユーザとしては可能な限りメンテナンスコストは支払いたくないという真理が働くため、ビジネスとしては限られたものになるだろう。
・Bレンタルビジネス
事業者は装置(もの)の販売代金を利益の源泉にしなくなるため、「製造する」ということは事業者の価値にならない。ものを所有しているのは事業者であるが、使うのはユーザである。一方で製造するのは別の事業者でも良いことになる。
IoTによってこうしたメンテナンスコストは大幅に下がるだろう。
・新たなサービスの形
「モノを使う目的が達成された分だけ」料金を支払う、というサービスも登場。
例)ドイツのコンプレッサー企業「コンプレッサーではなく圧縮空気を売る」サービス。:コンプレッサーを長時間使っても、既定の圧縮空気が得られなければ、顧客は料金を払わなくていい。一方企業側は、効率的に圧縮空気を生み出せればそれだけ利益率を上げられる。
・シェアサービス
さらに、レンタルではなくシェアというビジネスも成立する。使った分だけを支払う。
●ビジネスモデル変革を成功させるための組織体制
ビジネスにおいては、いくつかの組織が同じ土俵で争っているように見えて、実際にまったく異なっている場合がある。
たとえばンン夕力ーとカーシュアリンダ以同じ「自動車による移動]というサービスを競い合っているように見えるが、その利用形態や利益の出し方は異なる。目的も仕組みも大きく異なるのであり、一方がもう一方の戦略を真似てもあまり意味はない。
ビジネス上の戦略に置いて、自らの組織とビジネス環境に合致した戦略を立案できるかどうかが鍵となる。
またデータの機密性は十分に保護されなければならない。たとえばある女性が妊娠検査薬を買ったとして、赤ちゃんグッズのクーポンが自宅に送られてきたとしたら、妊娠が家族にわかってしまう場合がある。プライバシーの問題は重要なのである。
●顧客とのつながり
シャオミでは社員が1日最低30分間顧客とソーシャルメディアでつながることを義務付けている。こうしてファンを増やすとともに社員に顧客の要望に対する気づきを与える仕組みを持っている。さらにファンの中から開発に直接参加してもらう場合すらある。
・小さく始めて改良を続ける
IoTは巨大な計画を書き、長い時間とコストを掛けて開発し、盛大に失敗するよりも柔軟で効率的に短期間で結果を出すことができる。
そのために戦略は積極的に作り直す意識が必要である。
私達が本当に固執するべきなのは、「計画を遂行すること」ではなく「なにを達成するか」である。なにより「まず試してみる」ことが重要である。ソフトウエアでは「永遠のベータ」という姿勢が定着している。ビジネスモデルについても同じになる。
ビジネスモデルを描くと陰、その本質工、理想化された状況の中で鮫善のあり方を考えるものになる。
したがってそれを現至の世界ぜ突現しようとした際に、周囲の環境と合致 L ない部分が出てくるの線当然の結果だ。
その時にモデルを迫求して現実を変えていこうとするのか、モデルの方を修正するのか、あるいは両方のパ一フンスを取るのか、目標とする成果を達成するまゼにはいくつもの決断を下す必要がある。
「ビジネスモデルを描く」の中には、本当線モうした修正と実装の作業まで含まれるのであり、紙の上にキレイな絵を描いて終わりで線ない。むしろキレイな絵が描き終わった瞬間から、本当の作業が始まると言えるだろう。
●エピローグ
グーテンベルクは活版印刷を発明したが、ビジネスとしては失敗している。
新しい技術の発明が、新たなピジネスを生み出し、それまでの産業や社会のあり方を一変させる――私たちについそんな連想をしがちだが、歴史を振り返ると、それが短絡的な考え方であることが分かる。
、
・技術発のビジネス
このように、新しい技術が必然的に新しいビジネヌを成功させるわけでもなければ、古い技術が新しいビジ矛スを生み出せないわけでもない・技術が何をしてくれるのかという話と、お金をどう儲けるかといっ話に別の塞元にあるのだ・しかしどうも私たちは、テ夕ノロジーに目を奪われ、そこに思考をつなぎ止められてしまう傾向があるようだ。
IoTは「人がいなくてもいい世界」を生み出す技術だが、顔客の姿を見なくてもいいという意味ゼにない・ビジ矛スとしての成功を目指すに注、むしろ積極的に顧客を意識し、彼らの生活と機械の世界とを融合するににどうすれば良いのか?を常に考える必要がある。
・あらゆる知見にまさるものは行動である。
■参考図書 『IoTビジネスモデル革命』
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