仕事に役立つ本をご紹介しています。本日は、戦争のやり方の本。
よくビジネスで、「戦術」とか「戦略」という言葉を使いますが、これは文字通り戦争をするために考えられたものをビジネスに転用していることはよくご存知かと。
「孫子」なんてその典型的な例ですね。
ただ、「孫子」は普通のヒラサラリーマンにとっては、それを使う場面なんてあまり多くありません。どちらかというと、「あっちに行って、死んでこい」と言われる方なので…。
ただし、何かのリーダを任されるときはあります。小部隊の隊長さんレベル。
そこで、本書は少部隊の隊長になって特定の条件下に置かれたときにどのように判断するのか、どのような情報収集をすればいいのか、どのように上司の支援を仰げばいいのかについて、仮想戦場に放り込まれた感じで考え方を教えてくれます。
まあ、戦場と自分の仕事の共通点を考えられない人にはもう少し具体的に仕事の局面を挙げた本のほうがいいかもしれませんが、エッセンスを抽出したり、教訓を活かしたりする事ができる人には、役に立つ本だと思います。
何回かに分けてご紹介します。
■要約その3:指揮官としてその1
●有効な命令の下し方
指揮官は任務をうけると、参謀たちに「指針」を示す。「指針」には、
・参謀活動(見積り、計画)を終了し、報告する時期
・すぐに処置する事項。
・戦闘指導の基本的態度、作戦の基調、たとえば「始めは処女のごとく、終わりは脱兎のごとし」など。
・特別な兵器の運用、たとえば、核兵器。
・特別に注意をはらう事項、たとえば、マスコミ対策、政治家・官僚対策。
などがふくまれる
注意すべきことは五つある。第一は、指針は指揮官がみずからの責任・哲学において一方的に決定するものであるから、自分の個性に合わないことをのべないことである。
たとえば、慎重な性格の指揮官が大胆な案を要求しても、自分が実行できるわけ力ない。
日ごろの自分を考えて大胆な行動をきらう性格であれは、自分はその程度の器であるとあきらめるしかない。そうでないと、参謀たちがムダな作業をすることになる
第二は、形容詞、副詞をつかわないことである。これは参謀活動に、その解釈をめぐって混乱をきたす元凶になる。
第三は、指針を決定するにあたって背景となった、指揮官の状況認識を、正確に説明することである。生身の人間である指揮官に私心のないことはむすかしく、任務の遂行にあたって、なにがしかの個人的欲望や、政策的判断がはいってくる。それを包みかくさず白状することだ。
指揮官の個人的欲望・政策的判断まで、参謀たちが推測することは不可能である。こうすることによって、参謀たちは、指揮官の状況認識がせまかったり、まちがっていると判断した場合には、指針そのものの訂正を要求することができる。
第四は、この作戦において特別に協同、支援する部隊、配属される部隊に対する配慮である。功をゆずり、損害を少なくするようにしなければ、つぎからまともな協力・支援をうけることができなくなる。
第五は、初陣の部隊、先の戦闘において苦戦した部隊に対する配慮である。彼らには「勝ち味」をあたえるようにしなければならない。
指針をきめたうえで指揮官は、状況を判断することになる。敵の状況を見積り、作戦について考える。
ここでは、「なにが勝ち目か?」をはっきりさせることである。
ビジネスでいえば、セールスポイントを、しっかりさせることだ。
つぎにいよいよ作戦が計画される。
ここでは、「計画できないこと、計画してはならないことを計画するな/だ。作戦が一歩すすめば、状況が変化する。それがわかっていなカら、先のことまで計画するのはムダということだ。先のことは、大ワクと方向性のみで十分なのた。
そして、命令が下達され、命令の実行を監督する。
軍隊の命令は、原則として、「後命は自動的に前命を取り消す」である。前命を取り消さない場合はかならず、前命が生きていることをつけくわえる。
一般企業における命令は、この点がきわめて不明瞭である。部下はいつのまにか、いくつもの命令をせおいこむことになる。命令をあたえた上司は、自分の下した命令を管理しなくなり、都合が悪くなると、部下をよびつけて「どうしたか?」と聞く。このような問題は軍隊にはない。
●現場と中央指揮官のギャップをどううめるか?
一般に人は、他人に自分の仕事を指図されることを好まない。自分でなにをするかを決めたいし、そのやり方も、自分の自由な方法でやりたいものである。
しかし、軍隊は本質的に、組織によって仕事する。
上司から命令をうけて仕事をすることが、あたりまえとなっている。ここには、大きな問題点がある
命令は、一方的に上司から下される。そこには部下の好ききらいの感情は関係がない。前者と後者の間には大きな矛盾が存在している。個人が「自発的」に仕事をしたいという欲望と、「強制的」に仕事を命ぜられることに対する抵抗の矛盾である。これが第一の問題点た。
はっきりいえば、命令者と命令をうける者の間で、部隊の直面している状況についての認識の落差が存在する。これが第二の問題点である。
現場指揮官と中央指揮官との認識のちがいは、ピジネスにおいても、つねに問題になる出来事だろう。このふたつの問題点を解決するには、さまざまな工夫が必要である。
命令をあたえる場合は、任務遂行に見あ、つ「義務」「責任」「権限」をいっしょにあたえなければならないことは当然であるが、同時に任務を遂行するに見あう戦力も、あたえなければならない。さらに、命令者は部下が「もっとも自発的にその任務を達成しようと選択した」ように感じさせることが大切である。
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