戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方3





仕事に役立つ本をご紹介しています。本日は、戦争のやり方の本。

よくビジネスで、「戦術」とか「戦略」という言葉を使いますが、これは文字通り戦争をするために考えられたものをビジネスに転用していることはよくご存知かと。

孫子」なんてその典型的な例ですね。
ただ、「孫子」は普通のヒラサラリーマンにとっては、それを使う場面なんてあまり多くありません。どちらかというと、「あっちに行って、死んでこい」と言われる方なので…。

ただし、何かのリーダを任されるときはあります。小部隊の隊長さんレベル。



そこで、本書は少部隊の隊長になって特定の条件下に置かれたときにどのように判断するのか、どのような情報収集をすればいいのか、どのように上司の支援を仰げばいいのかについて、仮想戦場に放り込まれた感じで考え方を教えてくれます。

まあ、戦場と自分の仕事の共通点を考えられない人にはもう少し具体的に仕事の局面を挙げた本のほうがいいかもしれませんが、エッセンスを抽出したり、教訓を活かしたりする事ができる人には、役に立つ本だと思います。

何回かに分けてご紹介します。

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■要約その1:戦いに勝つ9つの原則


●「目標の原則」
 とにかく、戦いでは、はじめから終わりまで、目標を見うしなわせるようなできごとが、いつも発生する。個人的な欲望、上司の介入、部下の苦痛などである
 「今しようとしていることの目標はなにか?」をつねに見つめることが、戦術でもっとも大事なことだ。

●「統一の原則」
 アメリカでは、政府が軍事力を行使して遂行しなければならないことを決定する。そのために、ます、問題を見つめ、明確に軍の任務を告げる。そして一人の軍人を選定し、かれにどのくらい戦力が必要かを相談する。それから、こういうのだ。
 「承知した。これはお前の仕事だ!」
 戦いにおいては、一人の指揮官に指揮をまかせなければならない。知恵半分の二人が協力してひとつの仕事をすれば、一人分の知恵が出ると思うのはまちがいである。そうすると、知恵は四分の一になる。衆知は足し算でなく、掛け算なのだ。
 戦いでは、「三人寄れば、文殊の知恵」は役立たないことを自覚せよ。

●「主導の原則」
 「ポールはラグビー場の中央付近にあって、ルーズな状態で蹴りあってころがっている。意志ある者はだれでもポールをひろって走ることができる。さあポールを奪え!・君の走るところに相手チームがついてくる」(マーシャル元帥)
 このことばは、主導権をにぎることの大切さをあらわしている。

 主導とは先動(先に動くこと)・先制(機先を制すること)によってのみえられる。

 そして、一度、主導権をにぎったら、絶対に離してはいけない。主導権を持てば、戦力を節約することも可能だ。

 状況の変化によって、法令・上司の計画が不適切と判断した部下は、部下であることをやめ、上司の立場になって行動してよい。状況にあわない規則や命令にもとづいて行動することは、最高指揮官であれ、一兵士であれ、愚かである

 攻勢は、作戦において、最高の結果を期待できる最良のものだ。主導権をにぎるために、必要不可欠だといえる

●「集中の原則」
 戦いにおいては、自分よりも敵が全体の戦力で優勢である場合がある。そんなときも、あきらめてはいけない。敵の弱点(の部分・場所)に対して、自分の戦闘力が、敵よりも勝るように戦力を集中して打撃せよ。そして、その部分での戦闘力の優勢を、最後まで維持するように、戦力の集中を継続させればよい。
 
 戦いは短期間では終わらない。だから戦いの間は、できるかぎり、軍を長く分散させておく必要がある。そして、決定的チャンスと場所に軍(カ)を集中させればよい。そうすれば、敵より戦力がおとっていても、チャンスはある。

 敵の弱点に対し戦闘力を集中できる最初のチャンスは、敵が分散することだ。分散すれば、当然、守りのうすい部分がでてくる。

 この、敵の分散は、自分のほうが分散することによって生する。つまり「我が軍の分散ー敵の分散ー我が軍の集中」は一連の動きなのだ。作戦成功に大事なのは、集中速度だといえる。

 しばしば愚者は、敵の要点(強点)を攻撃したがる。

●「奇襲の原則」
 大部分の敵は愚かではない。攻撃に先立ち、敵は、こちらの集中計画を察知しよううとするので、ねらった場所と時機に敵より優位でいることは、非常にむすかし。奇襲の要素がなければ、重要な場面での勝利はない。いいかえれば、すべての戦計画には、奇襲の要素が必要である。

 
 奇襲は、きびしい条件と実行の困難性をクリアしなければならない。こちらが動くことによって敵がハランスを失い、こちらの脅威によって、反応を強制されたときに、奇襲のチャンスは生まれる。

 奇襲成功の条件は、予期されないことと、対応のヒマをあたえないことである。

 しかし、奇襲の成功は判断というよりも、大部分は幸運に依存する。
 
 すなわち、奇襲は「動き」のなかから、戦機の女神が持ってくるのだ。走っている戦機の女神は、後頭部がハゲている。

 女神をつかまえようとすれば、前髪をにぎるしかない

 したがって、奇襲が可能なチャンスを的確にとらえ、敵が態勢をたてなおす前、絶えす、新しい奇襲をおこなっていくとよい。その方法は、秘匿と速度である。

●「機動の原則」
 戦闘は敵の消滅と機動(軍隊の移動や運動)によっておこなわれる。すぐれた将軍は機動によって勝利し、おとった将軍は破壊・敵の消滅によって勝利するすなわち、機動とは、速度と策略によって敵を窮地におとしいれ、敵指揮官の精神のバランスを破壊することなのだ。
 
 今週の一個大隊は、一カ月後に到着するより大きな部隊、一個師団より有効である。"速い"ということは、とても大事なことなのだ。
 
 機動速度は "部隊の機動速度" と "精神の機動速度" によって成り立つ。つまり「頭の回転を速くせよ」ということだ。

 戦史における失敗の原因は、ほとんどすべての場合、ひとことでいえる。それは「遅すぎた(too late)」である

●「経済の原則」
 戦闘の間、戦力を遊ばせておく余裕は、どこにもない。戦闘時に、なにもしないでいる部隊は、制圧されているのとおなじである。

 予備は、遊兵ではない。
 コップに水を満たし、最後に一滴たらすと、水は一挙に流れ出す。この一滴の仕事が、予備の役割である。適切な予備を準備することは、戦力のすぐれた経済的運用である。

●「簡明の原則」
 戦いの術は、美しく簡明である。なかでも簡明であることが、もっともよい

 簡明であるためには、
 
 ・目的・目標が明快であること。
 ・作戦方針のコンセプトが奇抜・大胆・明快・新鮮であること。

 これだけでよい。簡明の原則は、内容も簡明である

●「警成の原則」
 油断大敵ということだ。

 奇襲された将兵は、万死に値する。本来、眠っている敵を攻撃することを自漫する軍人はいない。自慢するのは恥である。恥じるべきは、眠っているときに打撃された相手である。それが戦いなのだ。
 たとえどんなに有利な状況であろうとも、警戒をおこたるものは、かならず足もとをすくわれる。

歴史に巨跡を残した英雄たちは、「戦いの原則」にしたがって行動した。どんな戦いであれ、勝っための根本はここにあるのだ。

かれらの行動がいかに剛胆なものであれ、成果がいかに壮大なものであれ、歴史上の大事件であれ、それは、戦いの九原則を適用したにすぎない。



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