戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方2





仕事に役立つ本をご紹介しています。本日は、戦争のやり方の本。

よくビジネスで、「戦術」とか「戦略」という言葉を使いますが、これは文字通り戦争をするために考えられたものをビジネスに転用していることはよくご存知かと。

孫子」なんてその典型的な例ですね。
ただ、「孫子」は普通のヒラサラリーマンにとっては、それを使う場面なんてあまり多くありません。どちらかというと、「あっちに行って、死んでこい」と言われる方なので…。

ただし、何かのリーダを任されるときはあります。小部隊の隊長さんレベル。



そこで、本書は少部隊の隊長になって特定の条件下に置かれたときにどのように判断するのか、どのような情報収集をすればいいのか、どのように上司の支援を仰げばいいのかについて、仮想戦場に放り込まれた感じで考え方を教えてくれます。

まあ、戦場と自分の仕事の共通点を考えられない人にはもう少し具体的に仕事の局面を挙げた本のほうがいいかもしれませんが、エッセンスを抽出したり、教訓を活かしたりする事ができる人には、役に立つ本だと思います。

何回かに分けてご紹介します。

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■要約その1:概説


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似たことばだが、戦術と戦略は、意味することがちがう。

戦略とは、「戦闘部隊が有利な条件で戦場にのぞめるように全体を構成する策略であり、戦闘における勝利を最大限に利用すること」である。

ピジネスにたとえれば、すぐれた宣伝、顧客の人脈の掌握、売れすじ製品のラインアップ、営業マンと顧客の接触の時期・場所の設定、適切な営業経費の提供などによって営業マンが効果的に顧客を説得できる条件をととのえる策略であり、営業マンがえた注文の成果を最大限に利用して、競合企業のシェアをうばい、将来の利益率を高める策略である。

つまり、戦略は戦争の勝利のために一連の戦闘を効率的にアレンジするが、戦闘に敗北すればどんなにすぐれた戦略も、元も子もなくなる。戦闘に勝利する術は「戦術」なのだ。

それでは、現在の日本において、戦術を知ることが、なんの役にたつのか。なぜ、筆者は、戦術を語ろうとするのかそれは、特殊な知識と考えられがちな、戦術というものが、じつは人間社会やピジネスの世界において、かなり有効な要素をふくんでいると、確信できるからである。

人間の決断は、平和な時代においては、きわめて感情的、意志的なものによって決定されることが多い。合理的な思考は、感情的・意志的な決断を正当化するために、そえられているにすぎない。

つまり、平和時の人間社会は″善意″″妥協″安全“″話し合い″″契約″協力″競争″"休息。などが、主として支配している社会である。その場合の決断の物差しは、命が惜しい、お金がほしい、地位をえたい、有名になりたい、権力をにぎりたい、といったものだ。

戦術がとりあつかう世界は、戦場における人間社会である。そこは、″死の恐布朝″錯誤物″妄想み″苦痛石″孤独″″静寂″疲労″睡眠不足″疑惑″″不信″劣等感みなどが、人間を支配している。ここでの決断の物差しは、「勝利」と「生き残り」以外にない。

そして、そこでは、指導力、相対的正義、愛、名誉、誇り、独立、自由、信条などが人間の行動原理となる。

しかし、これらの行動原理は、けっして戦いの場だけのものではない。

人間は、平和なときにおいてすら、好むとも、好まざるとも、愛、名誉、誇りといったものを行動原理に、"勝っ″ことを目的として生きているからだ。

 ・目標はどう立てればいいのか?
 ・状況の変化にどう対処すべきか?
 ・コンピュータ情報をどう読むのか?
 ・上からの命令はどこまで有効なのか?

このような、人間の日常生活やピジネスに必要な要素は、本書が語る「戦術」に、すべてつまっているのだ。

戦術には、ふたつの領域がある。

第一は、「計画戦術」た戦う前に合理的な策をととのえ、戦闘がはじまると、計画どおり実行するものだ。

たとえば、力士が土俵において、仕切るまでに、せめ手を頭のなかで考えておいて、軍配がかえって立ち上がったら、その手を実行するのとおなじである。

第二は、「動きのなかの戦術」である。これは、最初の計画を主導的に変更するもので、そのとき、そのときの状況の変化におうじて、戦術をかえていくことを意味する

じつは、戦術の極意は、ほとんど「動きのなかの戦術」にある。

その典型は奇襲と弱点打撃である。

後述する、戦闘におけるもっとも有効な手段”味方の分散ー敵の分散ー味方の集中。も、「動きのなかの戦術」において可能になる。

なんであれ、戦えば、結果が出る。その結果が、好ましいものかどうかを判断するには、ふたつの指標がある。ひとつは命ぜられたこと、すなわち、「任務を達成したか、どうか」であり、達成できればよしとする。

もうひとつの考え方は「勝ったか、負けたか」であり、当然、勝った場合のみ評価される。

このふたつの結果には、そう大きな差はないようにみえる。しかし、任務を達成したが、敗北した戦史も、任務を達成しなかったが、戦闘に勝利した戦史も多い。

単純にわりきれる問題ではないのだ。

これは、ビジネスの世界でも同様だろう。さらに「勝つ」ことを定義づければ、「こちらがうける損害率より、高い損害率を敵にあたえること」となる。

戦いは、ただ一度で終わるものではない。数多くの戦いのくりかえしだ。ひとっの戦いにおいて、敵に大きな損害率をあたえれば、つぎの戦いにおける勝利の確率は、きわめて高くなる。たとえ任務を達成しても、敵より大きい損害をうければ、まるで意味がない。

だから、戦いをみるときは、

 ・戦いが展開する速度は?
 ・勝ったのか?
 ・任務を達成したのか?

の三つが基本的な視点になる。

本書を、読者は、日常生活にどう生かしてくださるのか?本書が、いまの日本人にどうとらえられるのか?筆者は、その結果を、一日も早く知りたいと考えている。




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