不可能を秘密兵器にする



今の技術ではやれないこと、あるいは達成する方法がないときに「不可能です」といいますよね。

もちろん、やれないから「不可能」といったのであって、やれるのにやりたくなくて「不可能」と言ったものは除けば、その話はもう打ち切りになります。そのときに、その不可能だったことをメモしておくとあとになって役に立つことがあります。




■不可能メモ


私はノートの後ろのページ1ページを使って、「こんなことやれるといいけどちょっとムリだなあ」と思ったようなことを1〜3行程度で簡単にメモしてました。ノートを新しくするときには、これを見返して、「まだ、ちょっとやりたいかも」と思えるものは書き写して新しいノートに移行してました。

今は OneNote を使って「思いつき」のセクションに一件一葉で書き残してます。

OneNote をざっと見渡すと100件ちょっとあります。紙のノートにもちょっとだけ残ってます(残骸程度)

過去の「不可能メモ」を振り返ってみると、「あれ?これ、今普通にやってるじゃん」というものが結構あったりします。

たとえば、「メモをどこにいても見たり追記したい」。

以前は、メモしたものはメモ帳に書いて、1日の終りにノートに書き写してました。だから、ノートがすぐに出せないような状況では、昨日書いたメモは見られなかったわけです。それが今ではスマホの GoogleKeep にメモするようになったので、いつでもどこでも、PCかスマホがあれば、同じメモが見られますし、それに追記することも簡単にできます。

「仕事で作ったファイルを自宅で編集したい」みたいなものも、PC がなくても、スマホで会社のサーバに接続して、ちょちょっと編集して保存しておけるようになりました。




■今不可能であることも将来に渡って不可能とは限らない


過去に、電話は自宅に鎮座していて外出中にだれかに電話をするには、公衆電話を探して電話するしかありませんでした。電話番号も覚えたり電話番号帳を調べなくても、「○○さんに電話」と発声すればスマホが電話をかけてくれます。

ドイツ語だろうが韓国語だろうが、簡単なものであれば機械翻訳でなんとか通じます。通訳さんなしでもそれなりにコミュニケーションができるようになりました。英語とか中国語なら、まあネイティブにというわけにはいきませんがなんとか話ができます。

今の時点で「不可能」であっても、技術の進歩やスキルを獲得することで可能になることが少なくありません。

「不可能」は現時点の技術やスキルの問題であって、将来に渡って永遠に不可能というわけではない、というのがこの「不可能メモ」を見返してみたときの感想。

特に、私の専門である IT 関連技術だと、本当に日進月歩で、ちょっと前まで不可能だったことがいまでは当たり前に可能なことも多いんです。たとえば、「製品の傷を発見する」などというテーマはちょっと前まで無理だったのが、今では機械学習で Web カメラと PC がありさえすれば新人君でも簡単に構築できます。最近だと、数千円のカメラをネットに繋ぐだけで完成しちゃう。

■不可能に先行して取り組む


最近読んだ本で、『よみがえる飛騨の匠』という本があります。

著者の岡田贊三氏は、老舗木工家具メーカーの社長になってから、輸入木材ではなく地場の木材を使った家具作りに取り組んだそうです。

以前の木工家具の材料はナラ、タモ、ブナ、ウォールナットなど目が積んでいて硬くて丈夫な広葉樹を使うのが一般的で、家具はなんと輸入木材を飛騨まで運んで、そこで家具を作っていたそうです。飛騨は木材は多い(山ばっかり…?)のですが、主な木材はスギやヒノキで、これは年輪の厚みが季節によって異なり、傷やヘコミができやすかったので使われなかったのだとか。

そこで、岡田贊三氏は、こうした地場の木材を圧縮して固くする方法の研究に取り組んで、それを成功させたのだとか。

そのやり方ができるようになると、地場木材なので安価に手に入るようになり、より安価な家具が提供できるようになって、飛騨の地産地消の傾向にも相まって会社は好調になったのだとか。

不可能だったことに取り組んだ結果、それが可能になったとき、大きな先行者利益を得られた例ですね。

もちろん、イチサラリーマンが新しい技術を世の中に先行して開発するなんて言うことはできません。できる人がいたら多分もう、イチサラリーマンではないですね。

でも、世の中にはそういうことに取り組んでいるひとも多くいるわけで、そういう人たちから、その技術をもらってきて、今の現場に応用すると、会社の中では先行者利益を享受することができるようになります。

「今できないこと」は覚えておいて、それがいつか出来るようになるチャンスを掴むようにすると、会社で確固たる地位を築く機会になります。

■できないことと、できるようになったことを結びつける


このためには、

 今できないことを頭の片隅に入れておく
 新しい技術をウオッチする
 新しい技術で「不可能」を解決する方法を考えてみる

ということをしないとできません。

誰かに「××と○○を組み合わせたらできるんじゃない?」と言われてしまっては遅いんですよ。

新聞を読んだり、いろんなニュースを見たりしたときに、「これは自分の不可能に何か影響を与えられないだろうか?」という視点で見ていないと、ただ通り過ぎていくひとつの情報に過ぎなくなってしまうので。

せっかく時間を使ってニュースを読んだのなら、それを利用してやる手段を考えるという習慣と利用するためのネタを持ってないと行けないということですね。

不可能だったことは、自分の秘密兵器にすることができるんですよ。
ただし、ハズレは多いです。だから、アタリにぶつかるまで、いつもアタマの片隅においておかないと行けないのだと思ったりします。

なにもないところからは、発想は生まれませんので。それがセレンディピティなのかもしれません。






■参考図書 『よみがえる飛騨の匠 地場産業を復活させる6つの改革




崩壊寸前の地場産業に必要なのは
“伝統のリノベーション"だ!

時代とともに移り変わる消費者ニーズの変化によって、崩壊の危機を迎えている地場産業。
地場産業が生き残るためには「販売戦略」「製品開発」「生産体制」
「後継者育成」「ブランディング」「地域プロモーション」の6つの改革を今すぐ断行する必要がある。
これらの改革を行ったことで、
一時は倒産寸前まで追い込まれていた岐阜県の木製家具メーカーは驚異的なV字回復を果たした。
そのノウハウについて、わかりやすく紹介する。





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よみがえる飛騨の匠 地場産業を復活させる6つの改革
著者 :岡田 贊三
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