仕事に限らず、お店でお惣菜を買うのですらいろいろな判断をしています。
ところが、ちょっとした言い回しやちょっとした比較で判断は簡単に変わってしまいます。
ということで、自分の判断能力をちょっと振り返ってみるクイズになりそうなものをあちこちから集めてみました。
◆1.無料のラーメンと値引きの牛丼
牛丼屋とラーメン屋が隣り合って立っています。牛丼もラーメンも同じ500円。
牛丼屋には「今だけ10%値引きサービス」と書いてあり、ラーメン屋は「10人に1人がなんと無料!」と書いてありました。
どちらに行く人が多いでしょうか?
◆2.「30日間返品自由」の通販サイトがあります。このサイトで気になる商品を見つけたら
A.あとで返品できるのでとりあえず注文する
B.どうしても欲しいものでなければ注文しない
◆3.遠い店ほど価値がある
家族とランチを食べに行くことにした。イタリアンが食べたいということで探したところ2つの店が候補に上がりました。
A. 自宅から徒歩5分のところ
B. 車で30分ほどかかるところ
どちらの店に言ったほうが満足度が高いと考えるでしょうか?
◆4.届かないゴールには努力できない
あなたには小学生の息子がいます。彼は算数がニガテで、今回の学校のテストでは30点しか取れませんでした。あなたはもっと勉強していい点をとってほしいと思っています。どう声掛けをすればいいでしょうか?
A. 次は100点が取れるように勉強しなさい
B. 次は40点が取れるように勉強しなさい
◆5.映画は見始めたらやめられない
ちょっとプロモーションビデオを見てみて面白そうな映画があったので映画館に行ってみることにしました。
上映が始まって30分ほど見てましたが、あまりにも期待はずれでつまらない。
A. 途中だけど席を立って家に帰る
B. 最後まで見る
◆6.松竹梅
あるフランス料理店に行きました。「本日のおすすめワインリスト」を渡されたときに、3,000円、5,000円、15,000円と書かれていました。ワインの銘柄はどれもわかりません。どのワインが最も選ばれやすいでしょうか?
◆7.老後の試算は大企業に任せる
老後の資産運用を検討しています。最初にどちらに相談に行きますか?
A. 個人事業所を構えるファイナンシャルプランナー
B. 大手証券会社の相談窓口
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回答を見る前に、手近なメモ帳に自分の選択を書いてみてください
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回答編
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■1.無料のラーメンと値引きの牛丼
牛丼屋とラーメン屋が隣り合って立っています。牛丼もラーメンも同じ500円。
牛丼屋には「今だけ10%値引きサービス」と書いてあり、ラーメン屋は「10人に1人がなんと無料!」と書いてありました。
どちらに行く人が多いでしょうか?
◆1.数字の見え方で判断が変わる
10人の客が来たとすると店の売上は全く同じです。つまり店としてはサービスの内容は変わらないといえますが、多くの人は「無料」という言葉に価値を起き、ラーメン屋に行くそうです。
同じ条件なのに見え方(フレーム)が異なると、異なる印象を与える現象を「フレーミング効果」といい、これを利用すると人の判断を変えることができます。
■2.「30日間返品自由」の通販サイトがあります。このサイトで気になる商品を見つけたら
A.あとで返品できるのでとりあえず注文する
B.どうしても欲しいものでなければ注文しない
◆2.一度手に入れたものは、実物以上に評価する
「無償保証期間2年」とか「返品で全額返却」とか、企業が無料で返品されるリスクをわざわざ取るのは、現実には A. を選択するため。実際に商品を買ってみて、それに満足できなかったとしても実際に返品するのは、再梱包する手間、宅急便で送り返す手間が必要なため、たとえ返送料が無料だったとしても、それをするのには結構はハードルがあり、それを正当化したくなります。
さらに、その現物を手に入れてしまっているため、その価値をまだ手に入れられていない商品と絶対的な比較ができないので、自分の労力を使って手に入れたものは価値を高く見積もります。
その結果、過去の判断やそれによるサンクコストを正当化するために「この商品はいい商品だ」という判断に傾いて、返品率は低いものにしかなりません。
広告を出す企業としては損にならないわけ。
■3.遠い店ほど価値がある
家族とランチを食べに行くことにした。イタリアンが食べたいということで探したところ2つの店が候補に上がりました。
A. 自宅から徒歩5分のところ
B. 車で30分ほどかかるところ
どちらの店に言ったほうが満足度が高いと考えるでしょうか?
◆3.不都合な情報ほどメリットだと考えたくなる
脳が自分の行動に合わせて、心理を都合良く書き換えることを「認知的不協和」と呼びます。
たとえば自宅の近くにある世界遺産より、半日かけていく世界遺産のほうが価値があるような気がする、あの心理です。
この問いでは、どちらも大差ないのに「30分もかけて車で行く」という行為を正当化することになる B の店のほうが価値が高いと思い込みがちです。
心理学の実験で、時給1000円で折り紙を作るバイトと、無償で折り紙を作るバイト(といえるのか?)では、後者のほうが「意義がある」と思いがちになる、というものもあります。
■4.届かないゴールには努力できない
あなたには小学生の息子がいます。彼は算数がニガテで、今回の学校のテストでは30点しか取れませんでした。あなたはもっと勉強していい点をとってほしいと思っています。どう声掛けをすればいいでしょうか?
A. 次は100点が取れるように勉強しなさい
B. 次は40点が取れるように勉強しなさい
◆4.ゴールが遠すぎると人は失敗しやすい
最終的には100点がとれるように努力をするのは正しい行為ですが、A. を選ぶと現時点30点しか取れる能力がない人にいきなり100店を要求しても、やる気を削ぐだけです。
人は目標に近づけば近づくほど、目標達成の欲求が高まります。「目標勾配仮説」という理論があります。
まずは B. のように達成可能な目標を立て、次には50点、60点と少しづつ目標を上げていくことが高い成果を出せるようになるコツです。
■5.映画は見始めたらやめられない
ちょっとプロモーションビデオを見てみて面白そうな映画があったので映画館に行ってみることにしました。
上映が始まって30分ほど見てましたが、あまりにも期待はずれでつまらない。
A. 途中だけど席を立って家に帰る
B. 最後まで見る
◆5.サンクコストの罠
「せっかくお金を払ったのだから…」と考えて、多くの人は B を選択します。
映画館で上映中に席を立つ事自体に引け目を感じるという点も確かにあります。
経済学で「サンクコスト」と呼ばれる「投資をした以上はもとが取りたい」という心理的な行動原理があります。
せっかく高いお金を払い、家でゆっくりできたはずの休日をつぶしてまで来たのだから、という思いが、つまらない、ただ動く画面を見ているという行為を促進します。
A を選んでも、B を選んでも映画のチケット代は同じです。つまり払ったお金は帰ってこない。
それなら、別の有意義なことをしたほうが実際にはいいはずなのに、払ったお金に注意が行くと正しい判断ができなくなります。
■6.松竹梅
あるフランス料理店に行きました。「本日のおすすめワインリスト」を渡されたときに、3,000円、5,000円、15,000円と書かれていました。ワインの銘柄はどれもわかりません。どのワインが最も選ばれやすいでしょうか?
◆6.真ん中を選びたくなる心理
過去記事でも「松竹梅戦略」については何度か触れています。
普段なら 3,000円のワインでも高いと感じてしまうような場合でも、多くの人が、5,000円のワインを選ぶそうです。
ちなみに私はワインを全く飲まない(飲めない)ので、100円でも高いと思ってしまいますが…。
これは心理学的には「極端性回避」といって、質の違いがわかりにくい3つの選択肢を出されると、人は両端を除外した選択をするようになるからだそうな。
■7.老後の試算は大企業に任せる
老後の資産運用を検討しています。最初にどちらに相談に行きますか?
A. 個人事業所を構えるファイナンシャルプランナー
B. 大手証券会社の相談窓口
◆7.大会社という権威に判断が歪む
私なら、A なのですが、心理学的な実験では、有名な大手証券会社に相談に行く人が多いそうです。
冷静に考えれば、A は企業の商品に縛られない判断ができ、B は自分の会社の商品を強く進めてくるでしょう。どちらが自分のためかというと考えるまでもないみたいですが、そうはならないらしい。
これは、大学のセンセイがこの文章を書いているか、心理学とは全く関係ないサラリーマンがこの文章を書いているかで信憑性が全く違うのと同じですね。
同じように、学術書に載ってたことと、こういうブログに書いてあることでも同じように影響度は変わるでしょう。
まあ、そんなもんです。
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