本日は、ちょっと難しい問題に「あっ」と驚く解決策が出せるようになるための考え方のトレーニングについてご紹介します。
その名も『3分でわかるラテラル・シンキングの基本』。
■いきなり演習問題
いきなりですが、ちょっと実際に考えてみてください。こんなシチュエーションです。
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渋滞している道路を走っていたとしましょう。上り坂にさしかかると、渋滞の状況はどんどんひどくなり、車の速度は低下、ついにはすべての車が坂道でストップしてしまうという光景は決して珍しいものではありません。
このような状況で、ブレーキを踏んで待っているあなたの車の前に止まっていた車がドライバーの操作ミスか何かで、ソロソロと後ろに下がってきたとします。
あなたの車の後ろには渋滞の車がずらりと並んでおり、左右にも逃げ道はありません。
このような状況では一体、どうすればよいのでしょうか?
これをロジカル・シンキングで考えると、 2 つの対応を思いつくはずです。
「相手に自覚させること」と
「相手から逃げること」
です。まずはクラクションを鳴らしますが、それでも下がってくるようであれば、自分の車のブレーキをはずして、後ろに下がることになります。前の車が自分の車にぶつかるまでの距離を広げ、前の車が自力でストップするための距離や時間を確保するという結論です。
相手に注意を促すクラクションを鳴らしつつ自分の車が逃げることで、相手がなんとかするための状況を作り出すというのが極めて妥当な判断なのです。
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さて、この解決策はどうでしょうか?
まあ、大抵の人が思いつきますよね。
会社での問題も同じです。
私の専門分野で言うと、「システムが時々エラーになって止まる」みたいな問題があると、多くの解決策は「エラーになったらアラームメールを出すようなアプリを作って、システムを監視させよう」みたいな結論になります。
エラーの原因が、「割り込み A と処理 B でリソース C が競合する」みたいなものであれば、「リソース C にセマフォをつけよう」みたいな対策になります(意味不明なら読み飛ばしてください)。
こうして、システムは「エラーを起こさない対策」と「エラーが起きたときの対策」がいろいろ入り混じり、ドンドン複雑になります。さらに「エラーが起きた対策(エラーの監視プログラム)がときどき起動しないことがある」みたいな問題が起きると、「エラーの監視プログラムの監視プログラム」を投入して、ますます意味不明に…
まあ、普通の業務で言うと、たとえば「経費処理」というのには、誰かが計算が正しいかの点検印を押す人がいて、その点検印がちゃんと押してあることを確認する人がいて、その確認した人が確認したことを確認して承認する人がいる、という感じですかね。
会社の面倒くさい手続きというのは、こうして作られています(^^;;
■内省
ちょっと難しい言葉を使うと、「内省」という言葉があります。
詳しくは辞書を引いてもらえればいいですが、考えるプロセスのスピードを緩めて、自分がメンタルモデルを形成した仮定をはっきり意識することです。
内省的に考えるというのは、
「××であるべき」
「××なのが理想」
と考えた時に、それに基づいて答えを出すのではなく、なぜ「××でなければならないのだろうか?」と考えることです。
自分の価値観や判断基準、前提条件がなぜ必要なのかを考えてみる、というところでしょうか?
冒頭の「ズルズル近づいてくる車」の問題であれば、対応目的が
「衝突を避けなければいけない」
という条件をみたすための行動になっています。
内省とは、これが本当に正しいのかどうかを考えることを意味しています。
たとえば、あるプロジェクトを任されたときに、「そのプロジェクトに参加している協力会社が倒産してプロジェクトが失敗するリスクを回避するように」いわれたとしたら、何をしますか?
その協力会社の株を買って倒産しないようにする?
■推論のはしご
『フィールドブック 学習する組織「5つの能力」』という本に、能力を高めるためのひとつの考え方、「推論のはしご」の話が載っています。
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●推論のはしご
私たちは、検証されないまま深まっていくことの多い確信の匪界に住んでいる。
そのような確信が受け入れられているのは、自分の観察や過去の経験から推測される自分なりの結論にもとづいているからである。
真に望む結果を達成する能力を蝕んでいるのは、次のような感覚である。
・私の信念は絶対正しい
・真実は明らかである
・私の信念は現実にもとづいている
・私の選んだ事実は、本当の事実である
たとえば、私が経営陣の前に立ってプレゼンテーションをしているとしよう。
テーブルの向こう端にいる部長以外は、全員が注目して興味深く私の話を聞いているように見える。
しかし部長は、どうにも退屈な様子だ。
不機嫌そうな目を私から逸らし、口に手を当てている。部長はそれまでひとつの質問もしなかったが、私の話が終わる直前に割って入って、「それに関する完全なレポートを提出してもらうべきだと思う」と言った。
ここの組織文化では、それは通常「次の話に移ろう」ということを意味する。
皆が書類を整理して、ノートをしまい始めている。私のアィデアは彼の部署がまさに必要としているものだが、残念なことに、彼がそれを取り入れることはないだろう。
彼は明らかに私のことを無能だと思っているのだ。
考えてみると、彼は一度も私のアイデアを気に入ったことがなかった。
彼は権カに飢えた、くだらない男だ。
席に戻ったときには「報告書には使えそうな情報はいっさい入れないでおこう」と、私は心に決めていた。
彼はそれを読みもしないだろう。いや、それどころか私の不利になるように使うだけだろう。
会社の中でこんなに地位の高い敵をもっているのは不運なことだ。
席に戻る直前の数秒間に、私は、クリス・アージリスが「推論のはしご」と名づけたはしごの段を上ってしまった。
「推論のはしご」とは、しばしば人を誤った思い込みへと導く心の通り道のことで、だんだんと抽象度が高まっていく推論の道筋を示すものである。
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ちょっと長くなってしまったので、次回に続く…
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