人を動かす:盗人にも三分の理、他人には他人の行動理由がある



 「どうも、あの人とはうまくいかない」

なにか言えば、その反対のことを言うし、何かをやろうとすれば妨害するような行動をする。そんなふうに感じてしまう人がいます。まあ、仕事は仲良しグループではなく、色んな考え方を持った人が利害で結びついているのが仕事なので、あるていどはあきらめないといけないのですが。




もちろん、自分がやろうとしていることに反対する人や、ちょっとした論理の欠陥をしつこくつついてくるような人は感情的には好きにはなれないでしょう。ただ、考慮に入れておかないといけないことがひとつあります。

■盗人にも三分の理


古いことわざに

 盗人にも三分の理

という言葉があります。悪事を働いた者にも、それなりの理由はあるものだということですね。

自分から見ると、あきらかにやるべきではない行動なのに、その人がしたということは、その人には論理的に成立しているかどうかは別として、その人なりの必要性があってそういう行動を取った理由があるわけです。

これを理解してあげなさいと『人を動かす』では書かれています。




★〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

●8.人の身になる
相手はまちがっているかも知れないが、彼自身は、自分がまちがっているとは決して思っていないのである。

だから、相手を非難してもはじまらない}非難は、どんなばか者でもできる}理解することにつとめねばならない

賢明な人間は、相手を理解しようとつとめる。相手の考え、行動には、それぞれ、相当の理由があるはずだ。その理由を探し出さねばならない―そうすれば、相手の行動、相手の性格に対する鍵まで握ることができる。

ほんとうに相手の身になってみることだ。「もし自分が相手だったら、はたしてどう感じ、どう反応するだろうか」と自問自答してみるのだ。

これをやると、腹を立てて時間を浪費するのが、ばかばかしくなる。

原因に興味を持てば、結果にも同情が持てるようになるのだ。おまけに、人の扱い方が一段とうまくなる。

デール・カーネギー(著) 『人を動かす
―――――――――――――――――――――★


とはいえ、凡人なので、自分の意に沿わないことを相手にされると腹が立ちます。そんな聖人ではないので。

ただ、「腹が立った」という感情を相手に見せないようには努力はしています。
そんなときにお経みたいに唱えるのが、この

 盗人にも三分の理

です。

過去記事で

 なぜ腹が立つ?

という記事を書きましたが、自分が感情的になってしまったときに、「どうして自分はここで感情が揺さぶられたのか」という質問をすると同時に、「相手の三分の理はなんだろうか?」と考えると、多少は感情の揺れが収まってくるような気がします。

言い換えれば、自分に質問をすることによって、「感情を論理で置き換える」ってところでしょうか。

そうして、感情的でなくなったところで、相手の欲求を認めてあげるような発言をすることで、相手の行動をちょっとだけ変えることができるようになるかもしれません。頭ごなしに感情的に否定するのではなく、相手の立場や感情に配慮した上で、異なる行動を促すように。

たとえば、あなたを否定する同僚は、あなたにばかり重要な仕事が降りてくるのを不満に思っているのかもしれません。
あるいは、あなたの発言が彼の大切にしていることを否定してしまったのかもしれません。

上司から、「あそこの部門の仕事は引き受けるな」と言われているのかもしれません。

そんなことを考えてみてはいかがでしょうか。

■相手の行動の変化を促す


「三分の理」を考えたら、それを肯定しつつ、ちょっとだけ、その人と自分の共通項を考えてみてはいかがでしょう。

本書『人を動かす』ではこんな事例が挙げられています。

★〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

わたしの家の近くに公園がある。わたしはいつもそこに出かけて気分の転換をはかる。

わたしは日ごろから樫の木に対して敬慶に近い愛情を抱いているのだが、その若木が、不注意から毎シーズン焼かれるのを見ると、悲しくてたまらない。

火の原因は、タバコの吸いがらではない。たいていは原始生活にあこがれて公園へやってくる少年たちが、林のなかでソーセージや卵を料理したあとの不始未からである。

ときには大火になって、消防署が出動しなければならないこともある。

「たき火を禁ず。違反者は処罰する」という掲示が公園の一隅に立っているが、あまり人目にふれない場所なので、その効果は期待できない。

騎馬警官が公園の警戒にあたることになっているが、あまり厳重には取り締まらないので、失火は絶えない。

わたしはあるとき、火事を発見したので警官のところへかけつけ、すぐに消防署に知らせてくれと申し出た。

ところがおどろいたことに、受持ち区域外だから仕方がないという冷淡な返事だ。それ以来、わたしは、公園を馬で散歩するときには、公園保安官になったつもりで行動した。

ところが、はじめのころは、残念ながら、わたしは少年たちの立場を考えてみようとはしなかった

林のなかにたき火を見つけると、とても情けなくなり、正義感に燃えて、ついまちがった方法をとった。

少年たちのそばへかけつけ、たき火をすると罰せられるからやめろと、威丈高になって命令した。

それでも聞かない場合は、警官に逮捕してもらうとおどした。

少年たちの立場など少しも考えず、ただ、自分の気のすむようにしていたにすぎなかったのだ。

その結果は――少年たちはわたしのいうとおりにした。内心は怒りながら、しぶしぶいうとおりにした。わたしがいなくなると、彼らはさっそくまた、たき火をはじめたことだろう。大火事になって公園が全焼すればいい気味だと思っていたかも知れない。

その当時から考えると、今ではわたしも少しは人間関係を理解するようになり、まがりなりにも相手の立場から物ごとを考えることができるようになった。

今なら、さしずめつぎのようにいうだろう。

 君たち、ずいぶん楽しそうだね。ごちそうは何だね?わたしも子供のころは、君たちのように野外で料理をつくるのが好きだったよ!

 今でも好きだ。

 だが、君たちもよく知っていると思うが、ここでたき火をするのは危険だよ。君たちにかぎって、まさか火事を起すようなことはないと思うが、なかには不注意な子供もいる。

 君たちのたき火のあとを見て、またここでたき火をする。そして、消しもしないで家に帰ってしまう。すると、その火が枯れ葉に燃えうつって大火事になる。よほど気をつけないと、この公園は丸裸になってしまうよ。

 ここでたき火をすると罰せられることになっているんだが、君たちの楽しそうなようすを見ると、あまりきついこともいえない。

 君たちが楽しそうにしているのを見るのは、気持がいいからね。

 そのかわり、たき火の近くの落葉は全部遠くのほうへ押しやってくれないかね。それから、帰るときには忘れずにたくさん土をかけて、火をよく消すことだよ。

 このつぎにたき火をするときは、あの丘の向こうの砂地でやっておくれ。あそこなら、心配はいらないから。

 じゃ、君たち、せいぜい愉快にやりなさい。

同じことでも、こういうぐあいになると、効きめがまるで違う。

少年たちも協力する気になる。不平不満もない。強制もない。彼らの配争も立つというわけだ。相手の立場を考えることによって、わたしにも彼らにも気持のいい結果が得られるのだ。

デール・カーネギー(著) 『人を動かす
―――――――――――――――――――――★





■参考図書 『人を動かす




これを読まざるしてヒューマンコミュニケーションを語るなかれ!
デール・力ーネギーによる自己啓発の源流とでもいうべき不滅の名著。原版(How to Wln Friends and Inffuence Peaple)は、世界各国で 1500 万部以上、日本語版も 400 万部を超える大口ングセラー。
この脅威の部数は、本書が「人間心理の本質」を正面から扱った最初の一冊であることを示している。多くのヒューマンコミュニケーションに関する本は本書の焼き直しと行っても過言ではない。これらの本を読む前に、まずは本書を読んでから語ってほしいもの。






◆アマゾンで見る◆◆楽天で見る◆◆DMMで見る◆

人を動かす
著者 :デール・カーネギー

人を動かす
検索 :最安値検索

人を動かす
検索 :商品検索する



●関連 Web
 悪用厳禁!心理学で人を動かす7つの秘法 - ライフハックブログ
 人を動かす-Wikipedia
 人ひとを動うごかす―デール・参考カーネギーによる人間関係の古典―:日本語文学ガイド
 転職を繰り返したD.カーネギー――世界最大の自己啓発本「人を動かす」を作った男
 説得コミュニケーションの原則―Diamond Online
 悪用厳禁!心理学で人を動かす7つの秘法 - ライフハックブログ

●本書を引用した記事
 面接で「年上の部下・担当者への接し方」を聞かれたら2
 筋トレはメンタルバロメータ
 キャリアのためにすべきこと、してはいけないこと
 部下力のみがき方3:キーメッセージ
 仕事で使える心理学1:詳細目次
 問題は外にある
 報連相の手段―上司を捕まえる
 人相記憶術―その4連想記憶
 転職面接の第1印象
 会社で生きることを決めた君へ_4

●このテーマの関連図書


道は開ける新装版

話し方入門新装版

輸液療法の進め方ノート―体液管理の基本から手技・処方までのポイントがわ…

薬物動態学

完訳7つの習慣人格主義の回復

7つの習慣-成功には原則があった!





■関連する記事

面接で「年上の部下・担当者への接し方」を聞かれたら2

昇進面接などで、私がする鉄板質問。「あなたのチームの部下やメンバーの年齢構成を教えて下さい」「年上の方にたいして指揮命令をするときにどんなことに注意していますか?」こちらの質問の意図は、被面接者の「リーダーとしての力量」が知りたいのですが、「丁寧語や敬語を使って話ます」「年上としてのプライドを傷つけないようにします」という答えでは20点くらいかな。答えて欲しいのは、「彼ら(年上の部下)に行動を起こさせるための原則を掴んでいるのか、という点。私がいろいろな人を部..

筋トレはメンタルバロメータ

一度メンタルをやられると、もうそういうことがないようにかなり防衛的になります。ちょっと忙しいなと思ったら仕事量をセーブしたり、「それはできません」ってはっきり断るようになったり。ただ、気分の波とメンタルの状況ハンダっていうのは正しく見ようとすると結構難しいものです。「メンタル障害に注意しましょう」的なことは多くの会社では注意していることではあると思いますが、一般に会社が見ているのは、残業時間。でも残業時間が多いか少ないかで単純に..

キャリアのためにすべきこと、してはいけないこと

キャリアサラリーマンとして、「キャリア」と言えば業務経験と職位と社内外の知人の豊富さでしょうか。その中でも特に1つだけであれば、やっぱり職位が上がるというのは、会社の中であなたの能力が認められたという点で、一番嬉しいですかね。当然、職位が上がれば収入も上がります。これもうれしい面ですね。では、職位が上がるためには何をしなければならないかというと、当然仕事で結果を出すことですが、それだけでは不足です。特に上司との人間関係には注意しなければなりません。ここで言う上司とは..

部下力のみがき方3:キーメッセージ

結構久しぶりですが、ビジネス書をご紹介します。図書名称:上司を上手に使って仕事を効率化する「部下力」のみがき方著者:新名史典いかにもサラリーマンに向けの本なので、読んだことがある方も見えるかも。私のブログでも時々引用させて頂いています。とくにポイントだと思うのは上司が仕事のボトルネックという点。仕事の効率を挙げるためには、上司をうまく巻き込んで行くことが重要。その点を「上司を上手に使う」と著者は表現しています。..

仕事で使える心理学1:詳細目次

仕事や日常生活において、だれでも自分は合理的にものごとを判断していると信じています。でも、じつは私たちはそれほど理にかなった生き物ではないようです。たとえば天気の良い日と悪い日でものごとの判断結果が違う。涼しく快適な環境と暑苦しい不快な環境では相手の印象が違う。このように無意識のうちに偶然の要因やまったく関係のない環境要因に影響を受けて判断していることがあるのです。そのことを自覚していないと、思わぬ落とし穴にはまって..

問題は外にある

ちょっと抽象的なお話ですが…「コミュニケーションが悪い」「言ったことが伝わってない」「間違って伝わった」こういった問題は、誰かと協業していく上ではよく起きうる問題です。その時に、「組織体制がだから」「会社の方針が××だから」といってしまうのは簡単です。その瞬間から問題点は自分のモノではなく、他人の問題になります。影響の輪と影響力の山「影響の輪」という図をごぞんじでしょうか。「7つの習慣」で有名になったスティーブン・コヴィーという人が書いた書..



■同じテーマの記事

コーチングの罠

「きみならどうしたいと思う?」「きみは、次にどうする?」最近良く聞くようになったセリフですね。管理職になったり、管理職直前の人に対して、人事教育の一環としてコーチング研修をする会社が増えましたし、ビジネス書などにもよく出てきます。でも、これを無条件に使おうとする上司がいたり、そういった説明をするコーチングの講師がいたりすると、ちょっとむっとします。数年前ですが、講師に噛み付いたことがありました。「自律的に考えて、こちらの思ったことができる部下なら、自分の経験で..




posted by 管理人 at 22:57 | Comment(0) | 思考技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。