『学習する組織』から、5つのディシプリン(構成要素)を引用してご紹介します。本日は第4回。
前年度末に売上目標のため無理をした結果、今年度は期首から大幅な目標未達。
マネジャーが「自分がやった方が速い」と仕事を抱え込む結果、部下が育たず悪循環。
会議では有力者の発言ばかりが目立ち、それに疑問を示せる雰囲気ではない。
思い当たるフシがありませんか。「学習する組織」のアプローチが役に立つかもしれません。
■リーダーの責務:ビジョンを示す
よく言われるリーダーの責務のひとつとして「ビジョンを示す」という事があります。
リーダーとして求められることは、成果を出すこと、すなわち売上や利益を上げることはもちろんなのですが、その先にある、組織としての理念を実現することです。
組織としての目指す方向性、すなわちビジョンを明確にして掲げ、そのビジョンに向かってぶれずに進んで行くことだと考えます。
では、どのようにしてビジョンを明確にするかというと、かっこいいことを言えば、リーダー自身が持つ価値観や能力、環境の状態などの意識を統一させ、より高いレベルにあるビジョンを実現させるための道筋を示すようにすることです。
NLPの共同創始者であるロバート・ディルツ氏が提唱し、体系化した「ニューロ・ロジカル・レベル」というものがあります。
ニューロ・ロジカル・レベルとは、自分自身の認識を定義したもので、以下の6つの階層から成り立ちます。
・自分の周囲の環境を表す「環境」
・自分が行っていることや振る舞いを示す「行動」
・自分が持っている才能などを示す「能力」
・自分が信じていることや思いこみなどを示す「信念・価値観」
・自分のミッションやビジョンを示す「自己認識」
・自分の存在と世界とのつながりを示す「スピリチュアル」
この6つのレベルにおいて、統合された自分が望む状態を作り出すことが「ビジョン」だと定義されています。
ただし、リーダーシップとしては、ビジョンが必要なのですが、組織としてはビジョンがあるだけでは役に立ちません。
そこに必要なものが、センゲの言うところの「ビジョンの共有」です。
■共有ビジョン
共有ビジョンにおいて、『学習する組織』では次のように初められています。
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●共有ビジョン
リーダーシップの分野で何千年にもわたって組織に刺激を与え続ける考えがあるとしたら、それは、私たちが創り出そうとする未来の共通像を掲げる力である。
組織全体で深く共有されるようになる目標や価値観や使命なくして、偉大さを維持し続けている組織は、ほとんど思いあたらない。
IBM には「サービス」があったし、ポラロイドには「インスタント写真」、フォードには r 大衆のための交通機関」、アップルには「取り残された私たちのためのコンピュータがあった。
内容や種類はまったく異なるが、こういった組織はどれも、ある共通のアイデンティティや使命感を中心にして人々をまとめることを成し遂げてきたのである。
(おなじみの「ビジョンステートメント」ではなく)真のビジョンがあると、人々は卓越し、学習する。
そうするように語われるからではなく、そうしたいと思うからだ。だが、多くのリーダーは、組織を活性化する共有ビジコンにはつなげられないままに終わる個人のビジョンしか持っていない。
たいていの場合、企業の共有ビジョンは、リーダーのカリスマ性や、一時的に全貝を活性化する危機にもとづいている。
だが選べるものなら、大部分の人は、危機のときだけでなくどんなときでも、高い目標を追求することを選択する。
これまで欠けていたのは、個人のビジョンを共有ビジョンにつなげるためのディンプリン――つまり、「料理のレシピ」ではなく、一連の原則や基本理念――だ。
共有ビジョンの実践には、追従よりも真のコミットメントと参画を育む共通の「将来像」を掘り起こすスキルも含まれる。
このディシプリンを習得するとき、リーダーは、ビジョンについて指図することは、たとえそれが心からの行為であったとしても、逆効果であることを学ぶ。
ピーター・M・センゲ(著) 『学習する組織』
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組織を運営する立場の者としては、「理想的だなあ」と感じます。逆に言えばそういう状態は作り出すことが不可能なくらい遠いお話に聞こえます。
「私はこの組織をこうしたい!」というのが普通のビジョンなら、共有ビジョンとは、メンバー全てが「私たちはこうなりたい」というものを持っていて、それが組織内についてはほぼ同じであるという状態です。
さらに本書の中にある「アイデンティティ」に至っては、「こうだから私たちなんだ」とまでいえる状態です。
『ビジョナリー・カンパニー』などで示された超優良企業では多くの人がそこまで出来ていたみたいに書かれてますが、時々新聞などに載る自分の会社の説明などを読んでも、「これ、オレの会社か?」と思えるようなときもあるので、全員が常にその状態だったわけではないでしょう。
ただし、それを目指さなければ達成できることはありません。少なくとも。
本書ではそれを実現するために、「ダイアローグ」という手法を薦めています。それだけではありませんが。
この辺の詳細はまた別の機会に。
■参考図書 『学習する組織』
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●本書を引用した記事
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