仕事に役立つ本をご紹介しています。
本日ご紹介する本は、平凡な商品、平凡なサービスを消費者に指示してもらうための戦略、「エクスペリエンス(=経験)」をどのように付加価値として売っていくかについて考察した一冊。
サラリーマンの日々の仕事をうまくこなすコツではなく、自分を売り込む、より高く買ってもらうために持っておきたい知識です。
署名: 『[新訳]経験経済』
著者: B・J・パインII
本書は、一度絶版になり、2005年に「新版」として改定されたもので、私も新版しか読んでません。
本書は、ダイヤモンド社のページで、一部が無償公開されていますので、ちょっと読んでみると良いかもしれません。
■概要
企業の売り物は、やり方次第でコモディティ、商品、そしてサービスという 3 つの経済価値のいずれにもなりえる。
それぞれが顧客にとって独自の価値を持っている経済価値である。
一方で、企業が提供する経済価値が経験(エクスペリエンス)という第 4 のより高いレべルの価値となる場合、顧客はいっそう高い対価を支払ってくれるようになります。
※注記:ディズニーランドがいい例ですね。
モノやサービスを購入した結果として、顧客の心の中に作られる経験が価値を持つようになるからです。
それぞれの経済価値を個別に検討すると、コモディティは代替可能、商品は有形、サービスは無形、経験は思い出に残るという特徴があることに気づくと思います。
コーヒー豆を例に取ると、コモディティが売買される先物取引ではカッブ 1 杯に換算すると 1 〜 2 セントです。
それを加工業者が豆を挽き、袋に詰めてスーパーで商品として売ると、カップ 1 杯当たり 5 - 25 セントになります。
その豆を使っていれたコーヒーが普通のレストランやカフェで提供されると、そのサービスは 1 杯につき 50 セント 〜 1 ドルになる。
※注記:本書の出版された頃の米国ではこの値段が普通だったみたいです。
※日本だと、最終価格が200〜300円くらいでしょうか。
ところが、特別な場面でコーヒーが出されれば、消費者は 1 杯当たり 15 ドル以上支払っても構わないと思う。それは彼らが思い出に残る時間を過ごすという経験を購入しているからだ。
※注記:観光地などで、200円の缶コーヒーでも売れているのはそういうことですね。
経験という経済価値が提供されるところに新たな付加価値の源泉があり、ライバル会社の売り物との差別化を可能にする鍵もある。
●コモディティ化を防ぐ
「コモディティ」という言葉はいわゆる原材料・ 1 次産品以外にも、ありふれた日用品を指す場合がある。
差別化ができなくなったため代替可能になり、市場の需給関係で価格が決められてしまう点が似ていると考えられているからだ。
だが、多様な経験を提供することで、企業は価格競争に巻き込まれることなく、自社の提供する特別な経験価値にふさわしい特別な価格を請求できるようになる。
先に見たように、コーヒー豆というコモディティであっても、経験という大きな付加価値を生み出せる可能性を秘めている。
●顧客を積極的に関わらせる
経験は、つねに演劇やコンサート、映画などのエンターテイメント志向の売り物の核心部にあった。
そのため、経験経済が発展するには、娯楽的な要素を加味して、娯楽産業化を進めればよいという浅薄な見方がある。
だが、経験経済が発展するには、顧客に積極的に経験に関わってもらわなければならない。顧客を単におもしろがらせるだけでなく、彼らの参加度を考え、彼らの経験への入り込み方を工夫しなければ、経済価値としての経験は作り出せない。
●成功する経験のポイント
経験を提供している企業の例として、ディズニーを挙げることができる。
顧客に忘れられない印象を売り、五感に訴えて非日常経験へと導き、そして思い出を作る。こうした能力こそディズニーの成功の秘密だ。
成功への鍵は、一貫性があり、ボジティブで、心に残る経験を顧客に提供することだ。
思い出深い経験を創造する際に有効な 5 つのデザイン上の原則がある。
・経験にテーマを与える。
・テーマの強化に役立つキューを用意し、印象を一貫した全体にまとめ上げる。
・テーマにとってマイナスになるキューを排除する。
・記念品を活用する。
・五感に訴える。
●経験経済の将来
社会が豊かさを増し、消費者が従来の経済価値では飽き足らないと感じるようになっている今日、経験経済がますます発展するのは必然の流れである。
その一方で、経験経済が発展するにつれ、経験価値を提供する少なからぬ数の企業が淘汰されるだろう。
魅力的な経験を提供できなかったり、価格設定が高すぎたりすれば、いかに経験価値とはいえ、顧客の支持は得られないからだ。
だが、歴史を振り返って工業経済の発展期を見ても、同じような事態が起きている。
かつてミシガン州東部にあった 100 社以上の自動車メーカーは、現在ビッグスリーと呼ばれる 3 社になるまで淘汰された。
経験経済が発展する過程でも、経済学者のジョセフ・シュンペーターの言うところの「創造的破壊の嵐」に耐えた企業が生き残るはずである。
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●本書を引用した記事
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経験経済:経験とは付加価値である
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