マッキンゼーの思考技術5:当初仮説の立案とテスト




本連載「マッキンゼーの思考技術」でマッキンゼーの問題解決の3つの柱についてご紹介してきました。

 ・事実に基づく
 ・MECEで構造化する
 ・仮説主導で

本日は「仮説主導」における「当初仮説」の使い方についてご紹介します。




■当初仮説は事実に基づいて


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●当初仮説の「立案」
当初仮説は、事実と構造化が組み合わされたところから立ちあらわれてくるものだ。

したがって、当初仮説を立てる第一歩は事実にある。

しかし、どこを掘れば情報があるのかわからないうちに、むやみにあちこち掘り返すことは避ける。このことを忘れてはならない。
 :
 :(中略)
 :
当初仮説を立てるときに、すべての事実を知っている必要はない。その業界やその間題の全体的なイメージを描けるだけの事実があれば十分だ。あなた自身の業界の問題だったら、必要な事実はすでに頭に入っているかもしれない。

それは結構だが、しかし、事実だけでは十分ではない。そこに構造をあてはめなければならない

当初仮説を立てるには、まず問題をその構成要素に分解することから始める。

キー・ドライバー (3 章の「キードライバーを探す」、68頁参照)に分解するのである。

次に、それぞれのドライバーについて、実施可能な提案を考える。「実施可能な」という点が非常に大事だ。

たとえば、そのビジネスが天候に大きく左右されるとする。現実に、ある四半期の利益に関しては天候が主な決定要因だった。そこで、「天気がよくなるように天に祈る」は、実施可能な提案ではない。

しかし、「天候の変化に影響される弱点を改善する」とすれば、これは実施可能な、大項目になる提案である。

次のステップは、大項目に挙げた提案のひとつひとつを、もっと細かな問題点に分ける。

提案が正しいとすれば、それはどのような問題点を提起するだろうか?
それぞれの問題点について、さまざまな答えの可能性を検討する。

それから、さらに下のレべルの項目に移る。それぞれの問題点について、仮説を証明あるいは反証するためにどのような分析が必要だろうか?
多少の経験を積めば、そしてチーム内で議論を重ねれば、どんなことに可能性がありそうか、なさそうか、かなり確実にわかってくるだろう。

こうすれば袋小路に迷い込まずにすむ。

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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つまり、当初仮説を立てることで、それを証明する方法、あるいは否定する方法を検討し、それを僅かなコンサルティングセッションで導き出すようにすれば、非常に直線的に問題解決のプロセスが進むということです。

これは、最初から答えがわかっていて、その答えが正しいことを証明しなさい、という数学の問題を解くようなものです。

本書で、

 そこに構造をあてはめなければならない。
 当初仮説を立てるには、まず問題をその構成要素に分解することから始める。

と書かれている部分は、最初にご紹介した MECE を使います。

つまり、当初仮説で切り口を決めて、その切り口を分解し、分解したものに抜け漏れがないようにすることです。

これによって、ムダのないコンサルティングプロセスが構築できるわけです。

同じことは普段の仕事でも可能です。

ある課題が与えられたら、それの解決策を思いついたもので突撃するのではなく、その課題の本質は何で、それを誘発している問題は何なのか(当初仮説)を考えます。つぎに、もしそれが正しいとしたら、他にどのような事実が観測されるべきかをリストアップし、たしかにその事実が確認できるかどうかを調べにいけばいいわけです。

その結果、それが正しいという確信が得られれば、その仮説は真実になります。
あとは、その証明過程で出た事実を分類して、もれなく解決してやれば結果は出ます。

ここで漏らせば、あとでバレで慌ててやり直すことになるので、この漏れのない検討(事実を集めるかどうかは別問題です)が必要になるわけです。





■仮説を確認する


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●当初仮説の「テスト」
問題解決のための地図を持って実際に道路に出る前に、やはり各部を点検すべきだろう。

これは、この業界について、クライアント企業について知っているかぎりで考えうるべストの当初仮説だろうか?

すべての間題点を洩らさず考えただろうか?
問題のすべてのドライバーを考えに入れただろうか?
提案のすべてが実施可能で、無理がないだろうか?

当初仮説の立案のところで私は、「あなた」ではなく、「あなたのチーム」と書いた。

マッキンゼーでの経験から、そして、この本を書くためにインタビューしたたくさんのマッキンゼー卒業生の経験からも、チームがまとめた当初仮説のほうが、個人が立てた仮説よりはるかに強力であることがわかったからだ。

なぜか?

たいていの人は自分自身の考えをうまく批判できない

自分のアイデアのあら捜しには、他人の目が必要だ。だから、頭脳明断な三、四人から成るチームこそ、最も優れた手段になる。

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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本書のように人間には思考にバイアスがかかります。自分が「いい考えだ」と考えた時点で、もはやそれは冷静には判断できません。

だから、第三者に検討して貰う必要があります。

自分の考えを誰かに話してみることです。同じ目標を持っているチームなら簡単なことです。仕事はチームでするからひとりでは出せない成果が出せるのですから。




■参考図書 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術





立ち読みできます立ち読み可
本書は、2つの貴重な意味を持っている。ひとつは、これまで謎に包まれていた世界的なコンサルティング会社マッキンゼーの仕事や組織、経営について、その一端を明らかにしていること。つまり、マッキンゼーそのものがテーマになった本である点だ。もうひとつは、彼らがビジネス経営問題をどのように解決するかを書いていること。つまり、世界中から集められた、きわめて優秀な「仕事師」たちの思考やテクニックを教えてくれている点だ。著者はマッキンゼーで3年間働いた元社員。そこでの経験と、同社を退職した人々へのインタビューから本書を書き起こしている。

本書の主要部分は、ビジネスの問題をどう考え、解決に向けてどんな方法をとり、そして解決策をどう売り込むかという、実際に彼らがコンサルティングを進める手順に沿って展開されている。いわゆる「マッキンゼー式」の真髄は、その最初の段階の「事実に基づき」「厳密に構造化され」「仮説主導である」という3つの柱で示されている。なかでも、問題を構造的に把握して3つの項目に集約させるテクニックや、まず仮説を立て、証明や反証を重ねながら正答に導くプロセスは、ビジネス思考の究極のモデルになるものだろう。

一方で、チームの編成、リサーチ、ブレーンストーミングの各方法や、「売り込みをしないで売り込む方法」など、すぐに応用できる実践的なテクニックも数多く紹介されている。多忙を極めるCEOに30秒でプレゼンする「エレベーター・テスト」や、毎日1つチャートを作るといったユニークなトレーニングもある。また、彼らのストレス対処法やキャリアアップの方法などもスケッチされていて、彼らの「生身」の側面をうかがい知ることができよう。

マッキンゼーの人々の仕事に対する思考やテクニックが、見事に描き出された1冊である。一読すれば、ビジネスにおける強靭な精神と、すぐれた知性の源泉に触れた気になるはずだ。





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マッキンゼー式 世界最強の仕事術
著者 :イーサン・M. ラジエル
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