マッキンゼーの思考技術4:最初の会議で問題を解決してしまう




本連載「マッキンゼーの思考技術」でマッキンゼーの問題解決の3つの柱についてご紹介してきました。

 ・事実に基づく
 ・MECEで構造化する
 ・仮説主導で

本日は「仮説主導」における当初仮説についてご紹介します。

■当初仮説

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●最初の会議で問題を解決してしまう――当初仮説
  複雑な問題の解決は、長い旅のようなものだ。問題解決のための地図が、当初仮説である。

当初仮説はマッキンゼー式問題解決プロセスの第三の柱だが、説明が一番むずかしい。
読者にわかりやすく、そして、私にとって説明しやすくするために、この項を次の三つの部分に分けることにする。
 ・当初仮説の「定義」
 ・当初仮説の「立案」
 ・当初仮説の「テスト」

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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「当初仮説」という単語自体、あまり仕事では使わないものですが、私は本書を読んでからよく使うようになりました。

前回の記事

 マッキンゼーの思考技術2:問題解決は事実から出発する

で書いたように、問題を解決に導く上で、もっとも効率がいいやり方だからです。
当然、この記事に書いたように、リスクもあります。ある一面だけにフォーカスしてしまったり、バイアスがかかって事実を読み間違えるリスクです。しかし、それを補って余りある効果があります。

そして、マッキンゼーでは関係者との第1回の打ち合わせまでに、この当初仮説という解決策を作り上げてしまうのだそうです。それぞれのコンサルタントは、この当初仮説をそれぞれ作って持ち寄り、それをブラッシュアップさせた上で、コンサルティングに臨むのだそうです。

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●当初仮説の「定義」
当初仮説とは、要するに「行動する前に問題の解決策を考えること」である。

これは矛盾のように思えるかもしれないが、じつはだれでも、いつでも、していることである。

たとえば、自分の住んでいる町のあまりよく知らない区域にあるレストランへ行くとしよう。

スミス通りを行って、三つ目の角で左に折れて、最初の角で右折、レストランはその角からすぐだ、と教えられている。

スミス通りへの行き方は知っている。そこからこの指示どおりに行くだけだ。そう、それでいい。あなたは当初仮説を立てた。
 :
 :(中略)
 :
前項で使った架空ナントカ社に戻ろう。あなたのチームはナントカ事業部の売上げ増のための方法を見つけなければならない。

ナントカ事業について知っていることを話しあってブレーンストーミングをしたあと、そして、事実を集めて分析する作業にとりかかる前に、次のような大項目からなる当初仮説が立つだろう。

ナントカの売上げを向上させるためには

 ・ナントカの小売販売店向け販売法を変える
 ・ナントカの消費者向けマーケティング法を改善する
 ・ナントカの単価を下げる。

次の項で説明するが、このあと、仮説の三項目のそれぞれを証明あるいは反証するにはどのような分析が必要かを確定するために、もう一つか二つ下のレべルまで詳細に考える。

仮説というのは、これから証明あるいは反証されるべき案にすぎないことを忘れてはならない

これは解答ではない。

当初仮説が正しければ、数カ月後のプレゼンテーションで、それがそのまま一枚目のスライドになっているだろう。

当初仮説がまちがっていたとわかったら、まちがっていることを証明したことで、あなたは正しい解答に向かって進むための情報を手にすることになる。

当初仮説を紙に書けば、そして、それをどのように証明あるいは反証すればいいのかを見定めれば、証明済みの最終解決に向かって進むための道路地図を作成したことになるのである。

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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いかがでしょう? すごく強力な方法だと思いませんか?

私はこの方法を知って、実際に試してからすっかりトリコになりました。MECE もそうですけど、こちらもすごく強力な方法です。

…ということで長くなってしまったので、次回に続く。



■参考図書 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術

本書は、2つの貴重な意味を持っている。ひとつは、これまで謎に包まれていた世界的なコンサルティング会社マッキンゼーの仕事や組織、経営について、その一端を明らかにしていること。つまり、マッキンゼーそのものがテーマになった本である点だ。もうひとつは、彼らがビジネス経営問題をどのように解決するかを書いていること。つまり、世界中から集められた、きわめて優秀な「仕事師」たちの思考やテクニックを教えてくれている点だ。著者はマッキンゼーで3年間働いた元社員。そこでの経験と、同社を退職した人々へのインタビューから本書を書き起こしている。

本書の主要部分は、ビジネスの問題をどう考え、解決に向けてどんな方法をとり、そして解決策をどう売り込むかという、実際に彼らがコンサルティングを進める手順に沿って展開されている。いわゆる「マッキンゼー式」の真髄は、その最初の段階の「事実に基づき」「厳密に構造化され」「仮説主導である」という3つの柱で示されている。なかでも、問題を構造的に把握して3つの項目に集約させるテクニックや、まず仮説を立て、証明や反証を重ねながら正答に導くプロセスは、ビジネス思考の究極のモデルになるものだろう。

一方で、チームの編成、リサーチ、ブレーンストーミングの各方法や、「売り込みをしないで売り込む方法」など、すぐに応用できる実践的なテクニックも数多く紹介されている。多忙を極めるCEOに30秒でプレゼンする「エレベーター・テスト」や、毎日1つチャートを作るといったユニークなトレーニングもある。また、彼らのストレス対処法やキャリアアップの方法などもスケッチされていて、彼らの「生身」の側面をうかがい知ることができよう。

マッキンゼーの人々の仕事に対する思考やテクニックが、見事に描き出された1冊である。一読すれば、ビジネスにおける強靭な精神と、すぐれた知性の源泉に触れた気になるはずだ。




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マッキンゼー式 世界最強の仕事術
著者 :イーサン・M. ラジエル

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●本書を引用した記事
 かっこいいグラフを作れるテンプレートChartChooser
 「わかりません」にはしつこく食らいつく
 目標は達成可能でなければならない
 すり減らない働き方2
 マッキンゼーの思考技術5:当初仮説の立案とテスト
 マッキンゼーの思考技術4:最初の会議で問題を解決してしまう
 マッキンゼーの思考技術3:MECEを守ろうとすると論理が強くなる
 マッキンゼーの思考技術2:問題解決は事実から出発する
 自分より職位が上の人を驚かせてはいけない
 初めての問題は存在しないが同じ問題も存在しない
 キー・ドライバーに集中する

●このテーマの関連図書


マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック

マッキンゼー流図解の技術

人を助けるとはどういうことか本当の「協力関係」をつくる7つの原則

マッキンゼー流入社1年目問題解決の教科書

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル(Bestsolution)

マッキンゼー流入社1年目ロジカルシンキングの教科書





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