マッキンゼーの思考技術2:問題解決は事実から出発する




前回からマッキンゼー・アンド・カンパニーの問題解決の技術の基本についてご紹介しています。

前回の記事で、マッキンゼーの問題解決法の柱には

 ・事実に基づく
 ・MECEで構造化する
 ・仮説主導で

の3つがある、と書きました。

その第1、「事実に基づく」について、『マッキンゼー式 世界最強の仕事術』から引用します。




■事実から出発する


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●問題解決は「事実」から出発する
   事実は、解決に到達するための道を敷き、それを支える柱を築くためのレンガである。事実を恐れてはならない。

マッキンゼーの間題解決は「事実」から始まる。

エンゲージメントの初日、担当チームの全メンバーが、山のような新聞や雑誌の記事、内部リサーチ文書を徹底的に読み込んで、担当する問題をイメージできるだけの事実をかき集めて、最初のチーム会議にそなえる。

そして、チームとして、その間題についての「当初仮説」を立てるやいなや、その仮説を(適切な分析を経て)立証するために、あるいは、その仮説が誤りであることを証明するために、おおわらわで必要な事実を集めにかかる。
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 :(中略)
 :
事実の力にもかかわらず(あるいは、それだからこそ、だろうか)、ビジネス人のなかには事実を恐れる人が多い。おそらく、事実を凝視すると(あるいは上のだれかに凝視されると)、そこに見たくないものが見えてくるのが怖いのだろう。

見ないでいれば、嫌な事実は消えるとでも思っているのかもしれない。しかし、消えないのだ

事実から目をそらすことは、失敗へのたしかな処方菱になる。

真実は最後には必ず露見するものだ。事実を怖がってはならない。事実を追い求め、使いこなす。恐れてはならない。

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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本書では事実を調べることの理由として、

1.事実は直感の欠如を補完してくれる
2.事実は信頼性の溝に橋をかけてくれる

と述べています。

表現としてはいかにもコンサルタントらしい比喩表現ですが、これは全くの真実。私では異論の余地も補足の余地もありません。




■想像と事実を履き違えてはいけない


ただし、私の環境だけなのかもしれませんが、事実と想像がごちゃごちゃになっている人がいます。ここは厳密に区別しないといけない。

たとえば、5人に聞いたら「この仕事は手間がかかって大変だ」と言ったとします。

だから、5人が言った事実を持って「この仕事は大変なので改善しなければいけない」という結論に至ってはいけません。

「5人が言った」という事実はたしかに事実ですが、「大変」かどうかは事実ではありません。単なる所感です。

さらに、これを「}みんな}が大変だと言っている」と変換してくれる人もいます。これも事実ではありません。

■仮説を事実で否定する


本書によると、マッキンゼーでは、この「当初仮説」は「否定すべきもの」と捉えられているようです。つまり、当初仮説は当然間違っている。コンサルタントはその会社のことを詳しく知らないんだから、間違っていて当然。当初仮説に事実を加えて、証明できるものだけを残し、否定されたところは、それが肯定できる仮説を立てる、と書かれています。

これは非常に効率的なやり方で、相手(クライアント)の全てを知る必要がなくて、ある評価したい面だけを調査する事ができればコンサルティングは可能なわけです。
※まあ、コンサルタントの言うことが、うまくいかない理由もここにあるのですがね。
※所詮、ある一面だけを切り取って、「こうあるべき」なんていうから、いざ実行しようとするとコンサルタントから見えなかった部分が足を引っ張って結局うまくいかない

マンガネタで恐縮ですが、「ハンター×ハンター」というマンガで、クラピカがノストラードファミリーの警護をするときに、「想定される襲撃者は?」と聞くシーンンがありましたが、相手がゲリラなら対ゲリラの用意を、対抗ファミリーであれば、その狙いそうなところを守れば効率は良いわけです。

もちろん、警備隊長のダルツォルネの言うように「どんな相手に対してもボスを守るんだから、相手を絞り込んで失敗をするな」というのも必要ですが。仕事をする上では、完璧を目指すよりも、効率を目指したほうがいいですから。

■マッキンゼーの仮説・事実


つまるところ、問題からまず「当初仮説」を立てること。それを事実によって補正すること

これがマッキンゼーの仕事術、第1の方針です。

当初仮説については、次々回にご紹介します。
次回は MECE について。





■参考図書 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術





立ち読みできます立ち読み可
本書は、2つの貴重な意味を持っている。ひとつは、これまで謎に包まれていた世界的なコンサルティング会社マッキンゼーの仕事や組織、経営について、その一端を明らかにしていること。つまり、マッキンゼーそのものがテーマになった本である点だ。もうひとつは、彼らがビジネス経営問題をどのように解決するかを書いていること。つまり、世界中から集められた、きわめて優秀な「仕事師」たちの思考やテクニックを教えてくれている点だ。著者はマッキンゼーで3年間働いた元社員。そこでの経験と、同社を退職した人々へのインタビューから本書を書き起こしている。

本書の主要部分は、ビジネスの問題をどう考え、解決に向けてどんな方法をとり、そして解決策をどう売り込むかという、実際に彼らがコンサルティングを進める手順に沿って展開されている。いわゆる「マッキンゼー式」の真髄は、その最初の段階の「事実に基づき」「厳密に構造化され」「仮説主導である」という3つの柱で示されている。なかでも、問題を構造的に把握して3つの項目に集約させるテクニックや、まず仮説を立て、証明や反証を重ねながら正答に導くプロセスは、ビジネス思考の究極のモデルになるものだろう。

一方で、チームの編成、リサーチ、ブレーンストーミングの各方法や、「売り込みをしないで売り込む方法」など、すぐに応用できる実践的なテクニックも数多く紹介されている。多忙を極めるCEOに30秒でプレゼンする「エレベーター・テスト」や、毎日1つチャートを作るといったユニークなトレーニングもある。また、彼らのストレス対処法やキャリアアップの方法などもスケッチされていて、彼らの「生身」の側面をうかがい知ることができよう。

マッキンゼーの人々の仕事に対する思考やテクニックが、見事に描き出された1冊である。一読すれば、ビジネスにおける強靭な精神と、すぐれた知性の源泉に触れた気になるはずだ。





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マッキンゼー式 世界最強の仕事術
著者 :イーサン・M. ラジエル
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