「ガーデン・パス・ストーリー」という言葉があるそうです。
ネットでググってもほとんどヒットしないので、あまり一般的な用語ではないかもしれません。
元ネタはこの本から。
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●日常に起こり得る「}逸脱した習慣}」の罠
私が妻のへレンの行動を観察したことについての、ある単純な事例を紹介することで、このチャプターの結びとしたい。この話から[見えない問題を見抜く力」を解き放っことで、私が意図することを詳しく説明したいと思う。
へレン「玄関のドアの鍵がかからないわよ。ドアの口ックが壊れているのかしら?」
私「ええと、私の鍵は大丈夫だ。ドアの口ックは問題ない。君の鍵がおかしいに違いない」
ある日、へレンの鍵が壊れていたようで、私は金物店へ行き、へレンのために新しい鍵を作ってもらった。家に戻り、その新しい鍵を試してみた。しかし、鍵が利かない。
おそらく、その店の鍵を複製する機械に問題があったのだ。
ゲーリーは 2 軒目のお店に行き、もう 1 つ別の鍵を作ってもらった。しかしその鍵でもまだ、ドアを □ックすることができなかったのである。
私は鍵穴を注意深く観察してみた。
そして、自分の鍵を取り出して鍵穴に差し込んでみた。するとドアのロックに引っかかってしまい引き抜くのが大変だったのである。
そこで私は鍵穴に潤滑油を吹きかけた。
すると、 3 つすべての鍵でドアを開けることができるようになった。
そして、私は鍵の問題を解決した。へレンも何の問題もなく家の中に入ることができるようになった。
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:(中略)
:
これは「見えない問題を見抜く力」についての話である。
「鍵が悪い」という思い込みが、「ドアのロックが悪い」という考えに変わったのである。
私たちは、そうした思い込みにレッテルを貼ってしまうものだ。
つまり、それは「ガーデン・パス・ストーリー」である。
ガーデン・パス・ストーリーとは、人がどうやって誤った自分の概念にとらわれ、たとえその概念に反対するような事実が生じてきたとしても、自分の考えを堅持することである。
つまり、私は「問題は鍵にある」という誤ったガーデン・パスの中に迷い込んだことになる。
あとのほうのストーリーで、私は 1 軒目の金物屋で作られた合鍵を無視し、 2 軒目の金物屋に行くことになった。
ガーデン・パス・ストーリーについて、「もし人がガーデン・パスに迷い込むとしたら、彼らがどのようにその中にまぎれ込んでしまうのか」「どうやってそこから抜け出せるのか」ということを、私たちは知りたいと思うものである。
2 軒目の合鍵が駄目だったからといって、果たして、私は 3 軒目の金物店に行くところだったのだろうか?
私は、その可能性がなきにしもあらずだったことを認めなくてはいけない。
さらに深く調べてみると、なぜ私が 1 回目の段階でガーデン・パスに迷い込んだのか不思議に思ったかもしれない。
最初の合鍵でドアが開かなかったとき、私は自分の鍵には問題ないと思っていた。しかし、私の鍵が突然に鍵穴に入らなくなったのではなく、徐々にそうなっていったのである。
だから、この出来事は「逸脱した習慣化」についての話である。
「逸脱した習慣化」とは、例外的な出来事が繰り返し起こることで慣れ親しんでしまい、それ以上の注意を払うことがなくなってしまうということである。
コロンビア大学社会学教授のアイアン・ウォーガンは、「逸脱したことの習慣化」による NAsA の宇宙船チャレンジャー号の悲劇を本にしている。
発射時にリングが焦げており、整備の技術者たちは、本来そのような問題が起こるはずもないのに起きていたので心配していた。ところが、次から次と作業上の指令が出てきたので、技術者たちはその焦げたリングに注意を払わなくなってしまった
ゲイリー・クライン(著) 『「洞察力」があらゆる問題を解決する』
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■鍵は問題じゃない
ちょっとここだけ読むとわかりにくいかもしれませんが、前半に書かれているストーリーを簡単にまとめると、
2つあるうちの一つの鍵が使えなくなった
鍵屋で新しい鍵を作ってもらったがダメだったので、別の鍵を別の鍵屋で作ってもらった
それでもダメなので、問題なかった方で確認したらこれもだめになっていた
鍵穴に潤滑油を吹きかけたら全部使えるようになった
最初から潤滑油を吹きかけるだけで良かったじゃん (ちゃんちゃん)。
ということです。
ここのなにが問題かというと、最初に「鍵のほうが悪い」と思い込んでしまったために、ドアのロック(鍵の回される側)に問題がある可能性に気が付かなかったことです。
2つセットになって初めて機能するものが正常に機能しないからと言って、いずれか一方が悪いと思いこんでしまうと、問題を解決するまでに大きな回り道をすることになります。
半日か1日、鍵屋巡りで潰すだけなら、まあ諦めも付きますが、本書では山火事で炎に取り囲まれてしまった消防士や低空で飛来するミサイルを発見した将官の話も出てきます。
もし、そっちだったら数分後には命をなくしていたかも、という話です。
■ガーデン・パス・ストーリー
で本題の「ガーデン・パス・ストーリー」。これは、本書でも詳しく説明はありませんし、ネットで調べても詳しくは説明をしているサイトがないのですが、私の解釈では
誤った自分の仮説にとらわれ、たとえその仮説に反対するような事実が生じたとしても、自分の考えを堅持すること
ではないかと。1度目の鍵屋の鍵がダメだったときに気がつくべきだったよね、と。
実際の仕事の場面でも思い当たることは多々ありますね。
岡目八目でみると、「なんでそんなことに気が付かない?」と思えるようなことを本人はいたって真面目にやっていたり。
後半のNASAの話も仕事をしていると、ときどき気になったりするものです。多くの場合は、NASAの技術者のように流れに身を任せてしまうのですが、普通の仕事では爆発まではしないので、それが痛い経験にすらならないという…。
ちなみに本書における鍵の話の締めくくりがこちら。
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私の場合、鍵が鍵穴に入りにくくなってくると、ガチャガチャと鍵を強く捻っていた。
そして、そうした行動に慣れていき、鍵を強く捻ってドアを開けることが習慣となった。
いつの間にか、「そうすることがおかしい」と感じる意識が、まったく働かなくなってしまったのである。
私がこの考えをへレンに話すと、彼女は違う理解をしていた。
彼女が言うには、この出来事は私たち 2 人の関係性を示していると言うのである。
つまり、私は彼女が望むほど注意深く彼女の発言を聴いていないということであった。
彼女は、こうなる前からドアのロックの問題のことを私に指摘していたという。
私はそれを無視しているだけでなく、彼女が私にその問題に注意を払うようにさせるまで、私は何も思い出していないと言うのである(「人の話に熱心に耳を傾けよ」とは、自分への警告だった)。
私はへレンが、「ドアのロックに問題がある言ったことを思い出すことができず、そのことを完全に忘れていた。これは、名誉ある亭主のストーリーではない。むしろ、それはおバカな亭主のストーリーである。
ゲイリー・クライン(著) 『「洞察力」があらゆる問題を解決する』
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もし一度やってみてうまく行かなかったら、同じことを繰り返してやってみるのではなく、原点に立ち返って、他の可能性はないかを考えてみるといいかもしれません。
私は何か決断したり行動を起こす前には、「選択肢を複数出して、}決断するのではなく選択する}」ようにしています。いつもできているわけではありませんので、「なるべく」ですが。
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