結果の成否を検討せずにコミットメントしてはいけない




交渉事において、結構マズイと思われることが

 コトの成否を考えないままコミットメントすること

だと考えてます。




■意思決定は失敗する


★P17〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

●印象管理
人間は失敗を認めたがらないものだ。

誰だって首尾一貫した人物だと見られたいし、行動の筋が決まっていれば、前までの行動へのコミットメントも強まるのである。

組織間の相互作用でも個人間の相互作用でも、そこにおける一貫性は社会のなかでは強力に再強化される。

バリー・ストウとジェリー・ロスは、 人は行動の方針をあちこち変える指導者より、一貫した態度を示す指導者を好む、と論じている。

たとえば、ギャラップ世論調査によるカー夕ー大統領就任一年後の印象は、彼に関する不満の第二位が、この一貫性のなさだった。

同じように、ジョン・F・ケネディは「勇気のかたち」のなかで次のように述べている。

 「政治家が常に下さねばならない最も勇敢な決断の一つは、自分の選挙民の最大利益であると信ずるが、その選挙民が決して好まないと分かっている行為を選択することだ。」

上述したことと合わせれば、その選択に一貫性がないと見なされた場合には、コンフリクトは特に厳しいものになる。

その結果、おもしろいパラドックスが生まれる。

自分の組織のための最良の選択とは、将来の費用と便益に基づく最高の決定を下し、これまでのいろいろなコミツトメントは一切無視することだと言える。

ただし、前に行ったお粗末な意思決定に固執しても、それで首尾一貫した人物だとの評判が生まれ、より多くの見返りが得られることもある。

だから組織は、効果的なイメージ管理にまさる、優れた意思決定に見返りを与える仕組みを創り出す必要がある。

第一に、責任をあずかる立場の人は、質の高い意思決定を犠牲にしたイメージ管理などくそくらえだ、ということをみんなにしっかり伝えなければならない

第二に、組織は従業員の価値観を組織の価値観に近づける報酬システムを確立しなければならない

つまり組織が管理職に優れた意思決定をしてほしければ、その良い意思決定が管理職の将来のキャリアにとっても必ずやペストとなるものでなくてはならないのである。

意思決定を結果ではなく過程で評価することは、ピーターズとウォー夕ーマンが 『エクセレント・カンパニー』のなかで「完壁なる失敗」として指摘したハインツ社の経験に一致する。

完壁なる失敗という考え方は、多くの意思決定が本来リスクの高いものだということをよく認識している。

事実、ピー夕ーズとウォーターマンは、経営者は失敗からいかに多くのことが学習できるかを知るべきだと述べ、

 失敗が発生したらそれをめでよ!

とまで言っている。

大切なのは、管理職は結果の良し悪しではなく、選択の良し悪しの違いを知ることを学習しなければならないのだ、ということである。

マックス H・ベイザーマン(著) 『マネージャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋
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よく心理学で言われる「一貫性の原理」というのはあらゆるところで問題を起こします。
その最たるものが、「最初にコミットメントしてしまってそれに縛られること」です。

私はそれでよく失敗しました…。




■結果を考えずに自分の意志を言ってはいけない


たとえば、「ウチの会社は従業員教育のプロセスがないよね」と言われて、「そうだよね」と答えてしまうと、「じゃあ、教育プロセスを作りましょうよ」とか「あなたが教育プロセスを検討してよ」と言われたときに、「オレ、関係ないもんね」とはいいにくいでしょう。

最初に、「教育プロセスがない」という問題に同意してしまっているので、「その問題はない」とはもう言えないんですね。

そうなると、「やります」と答えるか、「もっと優先度の高い問題がある」というかしないと、一貫性が保てません。

これが相手が掘っておいた落とし穴だったりするわけ。
さすがに普通の会話で、これほどでかい落とし穴はありませんが…

つまり、「話がどういうところに行くのか?」「相手の真意は何なのか」がわからないうちに相手に同意してしまうと、墓穴を掘るハメになるわけです。

詐欺なんかでも「健康に興味がありますか?」からスタートして「このツボを買うと健康になれます」「このスポーツジムをお安くしてます」っていう結論が待っているわけですね。

本書にある通り、意思決定をするというのは、リスクが高いんですよ。とくに管理職・リーダーと言われる立場になると、その影響範囲はどんどん広くなります。

だから本来なら、職位が上がるほどに慎重にならないといけないのですが、職位が上がると判断や決断を求められることが多くなるので、それに慣れてしまって、お手軽に発言してしまう人がいます。

で、結果自分で自分の首を絞める。
最初に立ち位置を表明してしまうと、一貫性の原理に引きずられて、バイアスがかかってしまいます。

■意思表明するのは、条件と求められる結果がわかってから


で、最近はどうしているかというと、自分の立場は最後に表明するようにしています。

つまり、ある会議などで冒頭に「××って問題ですよね?」と聞かれても「もう少し具体的にあなたの課題認識を教えて下さい」とか「あなたの考えを教えて下さい」などと言って、自分の立ち位置を明確にしない(はぐらかす?)ようにしています。

会議が進んできて、ある程度結論や対策、活動内容が明確になったところで、おもむろに自分の立場をはっきりさせるようにしています。
※場の空気が一方向に傾く前でないといけませんが。

こうしておくと「一貫性の原理」にとらわれずに、このあと起きることを考慮に入れた意思決定ができるようになります。

意思決定のミスを減らすためには}ギリギリまで意思表明をしない}こと。
そして、意思決定した結果なにが起きるのかをちゃんと見極めてから、意思表明することです。




■参考図書 『マネージャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋




優れた交渉力はビジネスの成功には必須のスキルである。
認知心理学は交渉におけるネゴシエーションの基本となる学問であり、その現実への応用方法を紹介する。
例:1.アンカーリング(係留効果)
  2.Foot in the door
  3.Door in the face
  4.フレーミング
  5.トレードオフ戦略
  6.勝者の呪縛
本書では交渉におけるシチュエーションとして、1対1の交渉だけでなく、現実に起こりうる多数の利害が絡む交渉についても、認知心理学に基づいた戦略を提示する。





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マネージャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋
著者 :マックス H・ベイザーマン
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●本書を引用した記事
 合理的に交渉する仕組みを作るための質問
 複数の仕事を並行して進めるための必須作業
 交渉の認知心理学:交渉の一般的なミスを避ける自問
 献立とレシピ
 社会的ジレンマ
 マイレージプログラムで航空会社は利益を得るのか?
 新しい技術、プロセスについて試してみる
 結果の成否を検討せずにコミットメントしてはいけない
 合理的に交渉する仕組みを作るためのチェックリスト
 交渉の認知心理学:社会的ジレンマ

●このテーマの関連図書


ハーバード×MIT流世界最強の交渉術---信頼関係を壊さずに最大の成果を得…

「話し合い」の技術―交渉と紛争解決のデザイン

サプライ・チェインの設計と管理―コンセプト・戦略・事例

マーケティング(NewLiberalArtsSelection)

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posted by 管理人 at 05:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 交渉・会議・面接 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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