感情的になっているときの決断を避ける




多くの場合、感情的になっているときにした仕事は、あとで思い返すと嫌な思い出になっていることが少なくありません。

たとえば、嫌なことがあると憂さ晴らしに買い物をしたり(それも冷静になるといらないようなものまで)、やけ食い(この言葉自体がすでに憂さ晴らし的ですが)をしたり。




★P199〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

ラーナーたちは、人は悲しい経験をすると、気分を切り替えようとして、環境を変えたくなるという仮説を立てました。

また、その気持ちが、買い手や売り手としての行動に異なる影響を与えるはずだと考えました。

つまり、買い手が悲しい気分だと、ふだんと比べて、同じ品物に対してより高い値段を払ってもよいと思い、逆に売り手が悲しい気分のときは、同じ晶物をより低い値段で手放してもよいと思うということです。

この仮説を検証するために行われた実験では、参加者に 2 種類のビテオの、うちひとつを見せて一方のグループを悲しい気分にさせ、もう片方のグループには特別な感清を抱かせないようにしました。
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 :(中略)
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そのあとで、参加者全員に最初とは無関係な二番目の調査に参加してもらうと告げて、蛍光マーカーのセットを渡しました。

そして、半数の人にはそれをいくらなら売るか、残りの半数にはいくらなら買うか、それぞれ値段を考えてもらいました。

結果はラーナーの主張を裏づけるものでした。悲しい気分だった買い手は、平静だった買い手と比べるに約 30 パーセントも静い値段で買ってもよいと答えたのです。また、悲しい気分の売り手も、そうではない人より約 33 パーセントも低い値段で売ってもよいと答えました。さらに、ビデオを見てから価格の判断を行うまで感清の高まりが持続していたことに、参加者は自分では全く気づいていなかったことも明らかになりました。

彼らは、悲しい気持ちが残っていたせいで自分がどれだけ深く影響を受けたか、全く分かっていなかったのです。

ロバート・B・チャルディーニ(著) 『影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
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マイナス側の感情に揺さぶられているときというのは、自分に不利な条件(割高なモノを買う、不要なものを買う、など)を飲んでしまったりする傾向があるそうです。

おそらく経験的に、「感情的になっているときに決断をすることは良くない」というのは多くの人は知っていると思いますが、だからといって、決断が必要な事項が待ってくれるわけでもありません。

つまり、何かをするときには、感情を鎮めることが正しい判断力をつけるために、必要だということのようです。

本書では、「一歩下がって」と書かれています。




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この研究結果はあなたにどう関係しているでしようか。

重大な決定をしたり、命運をかけた交渉に臨んだり、無愛想な E メールに返信したりするのでさえ、その前に自分が感情的にどのような状態でいるか把握しておくことがとても人切です。

たとえば、納人業者と契約の金銭面について交渉する場合を考えてみましよう。

それが、何か感情的になる出来事の直後ならば、たとえ自分の意思決定能力に影響はないと思っても、その交渉を遅らせるべきです。

少し遅らせるだけでも、気持ちを落ち着かせて理性的な選択を行うのには十分ですから。

自分の気持ちがどうであろうと、高い価値をもつ判断を行う場合には自分を落ち着かせる時問をとるのを習慣にしておくとよいでしよう。

よく便利だからといって、立て続けにミーティングの予定を人れる人がいますが、その合問に小休止を挟むことで、激論を交わしたミーティングで高まった感晴が、次に波及するのを防ぐことができます。これは、次のミーティングで重大な決定が控えている場合には特に大切です。

同じことは、家庭で何か判断する際にも当てはまります。新しい家具や家電の購入、家の増改築、あるいは新居の購人を検討中だとか、オンラインで何かを売り出す値段を考えているといった場合が考えられます。そういうときは、必ず一歩下がって自分の気持ちを確かめ、心が平静になるまでその行動を延ばすのが賢明です

ロバート・B・チャルディーニ(著) 『影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
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たしかに、勢いに任せて高いものをオンラインで買ってしまう、というのは結構あります。

一生懸命、あちこちのサイトで比較しながら、「どれにしよう?」とか考えてて、どんどん時間が立ってしまうと、そのうち面倒くさくなって、「まぁなんでもいいか」って、いま目の前に開いているサイトで買ってしまうとか…。「あるある」ですかね?

これを逆用する方法も本書には書かれています。

つまり、他人の感情を揺さぶっておいて、自分に有利な判断を引き出す方法も可能なわけですね。

長くなっちゃったので、これは別記事で紹介します。





■参考図書 『影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣




人が「イエス」という仕組みを心理学を使って科学的に分析し、実際に応用可能なレベルにまで高めた本。
社会心理学者の口バート・ B ・チャルディーニ氏は、宗教や悪質なセールス、募金の勧誘、広告主などありとあらゆる「承諾誘導」の専門家の手口を研究し、彼らの手口は基本的に 6 つの力テゴリーに分類できることをつきとめた。心理学の専門書であるが、ビジネスからプライべートまでその応用範囲は極めて広い。
現在の心理学を応用した仕事術、交渉術、会話術などの本のほとんどすべてがこの本に書かれている。





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影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
著者 :ロバート・B・チャルディーニ
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影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
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●関連 Web
 影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』の[第三版] - マインドマップ的読書感想文
 影響力の使い方講座 - ダイレクト出版
 影響力の武器とは?説得するときにはこれ - DCC用語集
 影響力の法則 影響力の武器 - YouTube
 影響力の武器:マネジャーとしての影響力は、どうすれば発揮できるのか?-Bizトレンド

●本書を引用した記事
 選択肢を多くするとカスを選ぶ
 面接質問:あなたはどのように反対意見を求めていますか?
 仕事で使える心理学1:詳細目次
 仕事で使える心理学4:ポイント抜粋―ストレスに対応する
 多面的交渉術をトレーニングする「ピラミッド交渉力」
 多面的交渉術をトレーニングする「ピラミッド交渉力」
 仕事で使える心理学3:ポイント抜粋―リーダーにとって必要なこと
 仕事で使える心理学2:ポイント抜粋―判断に影響する心理
 魅力的な名前をつける
 やる気が出る11のヒント

●このテーマの関連図書


影響力の武器戦略編:小さな工夫が生み出す大きな効果

影響力の武器[第三版]:なぜ、人は動かされるのか

予想どおりに不合理行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」増補版

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

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