初めての問題は存在しないが同じ問題も存在しない







■初めての問題は存在しない


たとえば、「コミュニケーションミス」みたいなトラブルはどこの会社にもあります。「ノウハウが経験者にのみ蓄積されて、若者に伝達されていかない」なども同じ。

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●初めての問題など存在しない(その1)
 たいていのビジネス問題は、互いに違っているより、似ている部分のほうが多いものだ。ということは、少数の問題解決テクニックがあれば、幅広い種類の問題に答えられるということである。
 おまけに、そのテクニックが、あなたの組織のどこかに転がっていないともかぎらない。何かの文書にあったり、同僚の頭のなかに収まっていたり……。転がっていなかったら、自分の経験を利用して自分自身の道一式をそろえる。

コンサルティング・ファームならどこでもそうだが、マッキンゼーも問題解決のためにいくつもの手法を開発しては、華々しい名前をつけてきた。いわく、「付加価値分析」「ビジネス・プロセス・リデザイン」「プロダクト・マーケット・スキャン」等々。
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 :(中略)
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「フオーシズ・アット・ワーク」と呼ばれる、分析のための枠組みもひんばんに使われる。

これはエンゲージメント開始時にとくに真価を発揮し、外部からクライアントにどんな圧力がかかることになるのかを検討するのに役立つ。

このテクニックでは、「クライアントの原材料供給業者」「顧客」「競争相手」「代替製品の候補」などを特定する。

そのあと、この四つのカテゴリーのそれぞれについて、そこに起こる変化をすべて挙げていく。

そうした変化は、

 ・プラスもマイナスも含めて、クライアントにどのようなインバクトを与えるか?
 ・また、クライアントおよびクライアントの業界に、どのような内部変化があって、影響を及ぼしているのか?
 ・クライアントによる自社製品のデザイン、製造、流通、販売、アフターケアに現実に大きな変化を起こしうるのは、これら要因のうちのどれか?

あなたがどんな業界にいるとしても、この枠組みはとても役に立つ。競争環境のスナップ写真を見せてくれるし、その環境がどう変化するか予想する助けにもなる。ぜひ試してみることをお勧めする。シンプルに見えるかもしれないが、戦略的ビジネス問題をめぐる思考を大いに刺激してくれる、強力な方法である。

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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■同じ問題は存在しない


多くの会社が、同じように人間によって成り立っているのであれば、そこに起きる問題というのは、大なり小なり似通ったものになります。
それが違うのは、その会社の目標が違う、顧客が違う、戦略が違う、市場環境が違うなどの違いはありますが、本質は似たようなものです。

ですので、いろいろなフレームワークは、それらの問題解決に役立つ方法だからこそフレームワークとして一般化したものだと考えて間違いありません。
フレームワークを学ぶことは、解決手法を学ぶことと同義だと考えています。

しかしながら、上記のように、本質は同じでも表面的には異なるため、同じ問題は存在しません。

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●まったく同し問題は存在しない
 ビジネス問題には類似点が多いといっても、似た問題に同じような解決策を使えることにはならない。当初仮説(あるいは直観)は事実に基づいた分析によって立証しなければならない。そうすれば、提案もすんなり受け入れられるというものだ。

手に握っているのがハンマーだけだったら、問題という問題がぜんぶ釘に見えるだろう

マッキンゼーにかぎらず、経営コンサルティング全般を批判する人たちは、コンサルティング会社が、その時点で最新流行の経営モデルを、すなわち、知的道具箱のなかでいちばん人気のある道具を、解決策として提示するだけだと言う。
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 :(中略)
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クッキー型で抜いたような解決策を避けるということに付随して言えば、やみくもに直観に頼ることにも十分注意しなければならない。

ビジネスで経験を積むうちに、いくつもの問題を見て、それを解決するうちに、業界で何がうまくいって、何がうまくいかないか、かなり精通してくる。たしかに直観が正しいことは多いのだが、ここはレーガン元大統領のモットー、「信じよ、そして立証せよ」を肝に銘じるべきだろう。

現在はマーチャントバンクで働くマッキンゼー卒業生は、それを幸いっている

 「ビジネス経験を積んだ鋭い中間管理職なら、たいていの場合はマッキンゼーと同じ結論をだせる。それもずっと短い時間で、つまり直観でね。しかし、重役はたいていそれほど優秀ではない。マッキンゼーは間題に懸命に集中するから、ほとんどの場合、最も優秀な重役でも鶴わないようながっちりした解決策をだせます。ところがたいていの重役は時間をかけないから、必ずいくつかのことを見逃す。時間をかけていられないんですよ、ふつう」

だから、あなたの最初の直観は正しいかもしれない―おそらく正しいだろう― が、時間をかけて、その直観を事実に照らして立証することだ。

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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■異なる解決策を導き出す方法


同じ問題が存在しない以上、同じように見える問題も、過去にやった同じ対策で対策できるとは限りません。
解決策は星の数ほどあり、その中からもっとも適切なものを選択肢ないと行けないわけです。

では、どのようにしたらその解決策が選択できるのかというと、本書では「検証しなさい」としつこく書いてあります。

つまりは、

 ・事前に情報を集めて裏付けを取る
 ・少しだけやってみて、フィードバックする

ということです。

■聞きなさい


本書『マッキンゼー式 世界最強の仕事術』では、最後に「聞きなさい」と書かれています。

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●初めての問題など存在しない(その2)
 どんな問題でも、どこかのだれかが、すでに似たような問題に取り組んでいる可能性が高い。もしかしたら社内にそういう人がいて、電話一本で知りたいことがすべて聞けるかもしれない。

 あるいは、同じ専門分野、他の部署、他社のだれかが、すでに同じ問題に遭遇しているかもしれない。そういう人を探し出して知り合いになろう。自分なりに調べて質問する。これで時間と労力を大いに節約できる。時間は貴重なので、よけいな手間ひまをかけて、むだにしてはならない。

マッキンゼーには、 PD ネットというデータべースがあり、最近のプロジェクトや社内の研究活動の報告書を見ることができる。

私がアソシエート一年目のとき、比較対象となる業界や問題など、何か参考になりそうなことを洗いざらい PD ネットで検索するのが、プロジェクト開始時における仕事の一つだった。

PD ネットで検索すると、どうしても山のような文書が出てくるので、そのなかから関係がありそうな一握りの文書だけを選び出す必要があった。
とはいえ、一日中、さらに、たいていは一晩中に及ぶこの作業は、チームを正しい方向に導くだけの情報をもたらすのがふつうだった。

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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羨ましいですね。そんなデータベースがあるのなら、自分にもほしいです。

すべての人に強制することはできませんが、私は私だけのデータベース、日誌を欠かさず書いています。

日ごとに分割されたファイルなので、あるプロジェクトやある課題で串刺し検索が出来るわけではありませんが、キーワードが特定できれば、そのキーワードで絞り込み検索をするなど、検索ツールにはいろいろ凝ってます。

でも、もっとも強力なデータベースは人間の脳みそと人間関係のネットワークです。

知っている人を知っている」というのは、課題解決には必須の知識でしょうね。




■参考図書 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術





立ち読みできます立ち読み可
本書は、2つの貴重な意味を持っている。ひとつは、これまで謎に包まれていた世界的なコンサルティング会社マッキンゼーの仕事や組織、経営について、その一端を明らかにしていること。つまり、マッキンゼーそのものがテーマになった本である点だ。もうひとつは、彼らがビジネス経営問題をどのように解決するかを書いていること。つまり、世界中から集められた、きわめて優秀な「仕事師」たちの思考やテクニックを教えてくれている点だ。著者はマッキンゼーで3年間働いた元社員。そこでの経験と、同社を退職した人々へのインタビューから本書を書き起こしている。

本書の主要部分は、ビジネスの問題をどう考え、解決に向けてどんな方法をとり、そして解決策をどう売り込むかという、実際に彼らがコンサルティングを進める手順に沿って展開されている。いわゆる「マッキンゼー式」の真髄は、その最初の段階の「事実に基づき」「厳密に構造化され」「仮説主導である」という3つの柱で示されている。なかでも、問題を構造的に把握して3つの項目に集約させるテクニックや、まず仮説を立て、証明や反証を重ねながら正答に導くプロセスは、ビジネス思考の究極のモデルになるものだろう。

一方で、チームの編成、リサーチ、ブレーンストーミングの各方法や、「売り込みをしないで売り込む方法」など、すぐに応用できる実践的なテクニックも数多く紹介されている。多忙を極めるCEOに30秒でプレゼンする「エレベーター・テスト」や、毎日1つチャートを作るといったユニークなトレーニングもある。また、彼らのストレス対処法やキャリアアップの方法などもスケッチされていて、彼らの「生身」の側面をうかがい知ることができよう。

マッキンゼーの人々の仕事に対する思考やテクニックが、見事に描き出された1冊である。一読すれば、ビジネスにおける強靭な精神と、すぐれた知性の源泉に触れた気になるはずだ。





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マッキンゼー式 世界最強の仕事術
著者 :イーサン・M. ラジエル
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●本書を引用した記事
 いつ終わるのかを言う
 矛盾す複数の問題を一気に解決する「インクルージョン思考」
 嫌なことは、「もし気分がよかったら」で切り替える
 通勤どこでも仕事術:毎日5分だけ勉強確保できる確実な方法
 マッキンゼー式世界最強の仕事術:ブレーンストーミングで最大の効果を引き出すテクニック
 今日学んだことを3つ上げなさい
 情報が聞きたければ話してはいけない
 少しだけの成功を積み重ねる
 かっこいいグラフを作れるテンプレートChartChooser
 「わかりません」にはしつこく食らいつく

●このテーマの関連図書


マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック

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マッキンゼー流入社1年目ロジカルシンキングの教科書

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