社員の評価をするときに、「いろいろなことを勉強している人」と言うのはどのように評価されるでしょうか。
『社長は君のどこを見て評価を決めているのか?』という本に、「経営者は勉強好きの社員をこう見ている」という一文がありました。
★P137〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
●経営者は勉強好きの社員をこう見ている
経営者は勉強好きの社員を「積極的でいい」と評価します。
ただし、仕事の成果に直接関係のない勉強に励んでいる社員を評価しない経営者もいます。
資格を取ったり、セミナーや講演に参加したりする意欲は買うけれども、海外に支社や支店がない会社の社貝が、ビジ不ス英会話の勉強をする必要はない。
趣味で勉強する分にはいいが、「私は英会話学校に行っています」とアピールされても、別に評価はしない。なぜなら、英会話を勉強しても、活用する機会がないからだ」
このように考えています。勉強好きの人は、その勉強が仕事の成果につなかっているかどうかを考えてみましょう。
勉強することによって視野を広げるのはいいですが、仕事の成果を上げるために優先順位の低いことを学んでも、評価はされません。
松本順市(著) 『社長は君のどこを見て評価を決めているのか?』
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一方で、ドラッカーは次のように述べています。
★P253〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
知識社会においては、継続学習の方法を身につけておかなければならない。
内容そのものよりも継続学習の能力や意欲のほうが大切である。
ポスト資本主義社会では、継続学習が欠かせない。学習の習慣化が不可欠である。
P.F.ドラッカー(著) 『ポスト資本主義社会』
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どうも、2つの本は言っていることが逆なような気がしますが、このあたりが、私の経験と一致しているような気がします。
他の会社ではどうかわかりませんが、ある人を評価するときには、その人の望ましい結果を出す能力、いわゆるコンピテンシーで評価がされます。
単年度は仕事の成果で評価をします。
・いかに業務効率の改善に寄与したか
・いかに部門の目標達成に寄与したか
ということですね。しかし、昇進昇格は「どれだけ寄与したか」ではありません。「将来寄与できるであろう」という期待値で決定します。
この期待値を決めるのに、「その人が勉強好きかどうか」は結構重要なポイントです。
■勉強するというスキル
過去記事でも何度か書いていますが、「勉強する」という行為は、生まれ持った才能ではなく、単なるスキルです。
その人がいろんな資格にチャレンジすること自体は、仕事に影響するものではありません。上記の『社長は君のどこを見て評価を決めているのか?』にもある通り、海外とやり取りすることがない仕事をしていて、TOEIC 900点を取ったとしても、何ら仕事の成果は変わらないわけです。だから、単年度の評価としては、その人の評価が上がることはありません。
しかし、「英語ができる」というスキルではなく、「英語の勉強ができる」というスキルは、つぎに仕事で新しいスキル「材料科学ができる」が必要になった時に「材料科学が勉強できる」というふうに役に立つ、と考えられるわけです。
■長期的には勉強するものが昇進する
結局、短いスパンにおいては、『社長は君のどこを見て評価を決めているのか?』で言うとおり、結果に影響したことだけを評価します。
一方で、将来性を見るような長いスキルでは、ある特定の業務をするスキルは評価対象にはなりません。
『ポスト資本主義社会』などでドラッカーが強調しているように、継続的な学習能力のように、汎用的なスキル(ポータブルスキル)を持っているかで評価されます。
これは、TOEIC のように数値で評価できるものではありません。そのスキルを発揮して出した数値を多数集めて、そこから持っているスキルを類推するという形で評価がされます。
つまり、一発芸のように「TOEIC 900点を取った」ではダメで、次の年には「情報処理技術者試験に合格した」みたいなことを続けて初めて評価されるものだということです。
■参考図書 『ポスト資本主義社会』
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●関連 Web
ポスト資本主義 | スリームデザイン
3分間ドラッカー
●本書を引用した記事
意思決定をする
リスクマネジメント:4つのリスクに備える
いかにして学び続けるか
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意思決定回避のリスク
知識と情報、知識の血肉化
ドラッカー:人は、自らがもつものでしか仕事はできない
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自分を律すること
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ドラッカー名著集12傍観者の時代(ドラッカー名著集12)
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■参考図書 『社長は君のどこを見て評価を決めているのか?』
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自分の評価を知る方法
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