誰かと話している時に、相手の言っていることをメモしてる人、いますね。
私もよくメモを使います。
特に、打ち合わせで上司が何を発言したのかは、上司と一緒に出た打ち合わせでは必ずメモをとるようにしています。
■メモの効用
ところが、多くの人がメモを利用していないように見受けられます。
たとえば、
上司:○○をするために今年度は××と△△をする
部下:××、△△っと
上司:その××をするためには、□□が重要なキーになる
部下:□□っと
上司:その上で、◎◎に関する技術動向に注意する必要がある
部下:◎◎…
なんて具合に、進んでいくと、部下のメモには
○○
××
△△
□□
◎◎
と書いたメモが手元に残ります。話し言葉と比べると「書く」という行為はスピードが遅いのですべてを記録することはできません。勢い、こういうメモになるわけですね。
上司が使った単語は、上司が一定の思い入れをもって選び出した言葉ですので、それをちゃんと記録することは重要です。
それを正しく覚えていないと、上司の考える戦略を実際に実行に移していくことはできません。
これができるかどうかわかるのは、何かの会議を主催させて(つまり、その場で発言全文を記録する余裕が無い)、あとで詳細な議事録を提出できるかどうかでわかります。
多くの人が、結論を書くのが精一杯で、途中の議論でだれがどのように発言して、それがどのように合意されたのかを書き起こすことができません。
■メモの功罪
ところで、このメモ、後で見て「上司の思い」を復元できるでしょうか?
簡単にいえば、上記の5つのキーワードの相関関係です。
メモすることに一生懸命になっていると、メモすべきキーワードにばかり意識が行ってしまって、上司が本当に語りたかった文脈がすっぽり抜け落ちるなどということになりかねません。
過去記事に
高速メモの技術1
というヒントを書きましたが、これにしても単語を記録するのが精一杯でしょう。
日本語だけでなく、あらゆる言語の単語には複数の意味や概念があります。その意味や概念のうち、どれを上司が使ったのかは、文脈がわからないとわかりません。大抵のメモにはこの文脈が抜け落ちることが多いわけです。
■脳内メモ
人間の記憶は非常に曖昧な上に、知っている何か(「フック」といいます)と関連していないと覚えられないそうです。
関連性についても、一度だけ関連を持たせても、何度も同じ関連をトレースしてみないと記憶できないそうです。
繰り返し学習しないと身につかないというのは、こういうことなんですね。
つまり、これらの上司が発言した単語だけを記録しても、メモとしては、「その場で書きつけた」という満足感はあっても、それに基づいた行動は取れません。これでは上司から指示されたことをきちんと実行できるようにはならないわけです。
なので、上司が発言した事を正確に記録することも重要なのですが、それの関連性を記録に残さないといけないわけです。
しかし、前述したとおり「書く」という行為は、「話す」という行為と比べると恐ろしくスピードが遅いので、書き物としての記録では実現できません。
必要なのは、脳内にキーワードの地図を描くことです。こういうのは脳は得意です。ただし、キーワードを正確にするのは不正確なので、メモが必要になります。
フックをベースポジションにして不正確なキーワードの地図を描き、不正確に覚えたキーワードは書き物としてのメモを利用する。
この2つがうまく作用すると、上司の言っていることがきちんと理解できるようになります。
■短期記憶と長期記憶
ただし、人間には短期記憶と長期記憶があって、短期記憶はすぐに忘れてしまいます。長期記憶に移動させるには、反復とインパクト。
なので、脳内から消えないうちに、上司が言ったことを全文、文章に復元したり、図解したりして、脳から出したり入れたりを繰り返さないとちゃんと記憶に残りません。
メモは取ったらすぐに、文章で復唱すること。
復唱したら、文章や図解で記録し、それを読みなおすことで、脳から出したり、入れたりができます。
脳内メモと紙メモを併用すると、ちゃんと記憶できます。
これが機能すると、1時間程度の会議の議事録(会話録)は簡単に作れるようになりますよ。