某大会社ではないですが、経営者は従業員に「チャレンジ」(言い方はいろいろかも)を要求します。「今できる仕事よりもより高度で難易度の高くて成果の大きくなるような仕事をしなさい」とのたまいます。
こういうのが標語になるということは、逆に言えば、できないから標語として掲げられるということですね。だからといって、そういうことに対して全員が全員積極的に取り組めるかというと、そうでもありません。
取り組めない人には取り組めないなりの「理由」があります。
マネージャとして、そこは認めてあげないと、チームとして成り立たなくなります。
■人は「チャレンジ」したくない
過去記事でなんどか、『仕事は楽しいかね?』という本の一節、
「やってみることに失敗はない」
ということをご紹介してます。
そうはいえ、サラリーマンなので、「損金を出した」「プロジェクトを遅らせた」などと言われたくはありません。そんなことになったら、最終的に仕事が完了したとしても、いい思い出にはならず、痛い思いが残るからです。
過去記事で、「失敗してもクビにはならない」みたいにも書いています。確かにその通りですし、そう考えていろいろチャレンジをしたりしていますが、失敗したら怒られるし嫌な思いもするわけです。
そういった「嫌な思い」や「気持よくない事態」を避けるにはどうするかというと、
言われたことだけを、今までと同じ方法でやる
ことです。それなら、やり方を決めたのは自分ではありませんし、「やる」と決めたのもの自分ではないので、自分には一切責任はありません。そういう方向性を持った人には、そういう価値観があるのであって、その価値観を否定はできない、と考えています。
※それが部下だとしたら、高い評価をするかどうかは別問題。
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●「試行錯誤」による学習
「試行錯誤」による学習、とだれもが口にするようになった。行動方針が計画どおりの結果をもたらさないことを発見することによって学習していくことである。
初めの意図を達成する手順が見えてくるまで、一度ならず何度もいろいろな方法を試してみる。こうした一連の行動を通じて、最終的な方法を発見し採用する。これが「試行錯誤」学習法の要点である。
しかし、この過程の中でひとつの重要な要素が見逃されている。
それは意識的に残しているものではないが、無意識の領域に必ず残っている苦痛という要素である。 やともすると、成功は一連の試行すべてが結実したものであり、その成功に至るまでの失敗は心から消え去るものだと思いがちだ。
しかしそれでは、これらの失敗に終わって顧みられなくなってしまった試みが、今後の行動を決める際にはかりしれないほどの重要性を持っている点を考慮していないことになってしまう。
最後には成功したとしても、それまでには、ときに滑稽で、ときに苦しく、また耐え難い屈辱すら味わうことさえある。
成功したからといって、記憶の中に最後に成功した要素だけが刻まれるわけでもなければ、失敗や苦痛が無意識の領域で取るに足らぬものとして活動をやめるわけでもない。
無意識の領域では、苦痛、屈辱、疲労を極度に恐れている。積極的に喜びを求めるよりも、絶えず苦痛を避けようと努めている。そのため、何もやろうとしない無精を決め込む嬢うに重きが置かれることになる。
積極的な活動をすれば自分のためになるときですら、われわれは無精に屈服してしまう。苦痛に直面するくらいなら、むしろ何もしないほうがよいと考えるのである。昔の失敗の古傷をうずかせたり、ましてや新たに自分自身を傷つけるリスクを冒すよりも、われわれは知らず知らずのうちに無精を決め込む。
あるいは本来やるべきことよりも楽にできることを選んだり、以前苦汁をなめた地点の近くで計画を実行してお茶を濁したりする。
こうしたやり方だと、すぐに逃げ出す口実を得られるものの、事は成就せず、報酬はもらえない。
このように子どもじみた無意識が優位に立っているならば、少なくとも、かつての古傷が再び傷っけられることはない。言うまでもなく、こんなことをするのはまったくばかげている。
たとえば、些細な不満を避けようとして、将来の禍根となる失敗をせっせとため込んだり、二度と巡ってこないかもしれないチャンスを次から次々と見逃したり、なんとか避けられそうな苦痛よりもはるかに大きな苦痛を自ら背負い込んだりするのは愚の骨頂である。
だが、いずれにせよ昔の恥辱の記憶は、眠り込んでいたかと思うとひっきりなしによみがえるし、半ば目覚めた状態になったりもする。
以上の記述が間違いなければ、仕事に取りかかるときに、いつでもおまじないをかけてくれる催眠術師がいたらどんなに便利だろう。自分専用の催眠術師を持てたらどんなにすてきだろう。
もちろん、それは不可能だし望ましいことでもない。自分自身の仕事をするのに、他人の意志の支配下に置かれる必要などまったくないのだ。
ドロシア・ブランド(著) 『目覚めよ!生きよ!』
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■意識しようとするまいと苦痛はある
ということで、『目覚めよ!生きよ!』の引用が長くなってしまいましたが、試行錯誤をすれば、苦痛や嫌な思いが残る、ということをちゃんと意識化に置いておくようにしています。
もし、「やっぱり、これをやった時のデメリットが…」とか思ったら、もしかして、この「苦痛を避ける本能が言わせている後付の理由」にすぎないかもしれません。
それを無意識下から意識下に移してみると、「多少はマトモな判断が下せるようになる」ように考えてます。
一方で、他人に対しては、「苦痛を避けることが優先な人」もいることは、ちゃんと認識していないといけないですね。特に管理職やリーダーと呼ばれる人は。
■参考図書 『目覚めよ!生きよ!』
![]() ![]() | 女流作家ドロシア・ブランドにより1936年に出版されるや瞬く間に全米ミリオンセラーとなり、今も世界中で読み継がれている成功哲学の古典『Wake up and Live!』の初の日本語訳版。この本で語られている最も重要なコンセプトは、人間の心の奥底にひそむ「失敗しようとする意志=破滅願望」の存在である。 「成功の公式」として紹介される内容はシンプルですが、明快な行動基準として示され、実に80年近く前に書かれた内容なので、事例などは少し古さを感じさせるが、根本的にはいまなお通用する原理原則である。また「as if の法則」など近年再び話題となっている考え方も平易に紹介され、多くの方の人生にとって、示唆が多い一冊となるだろう。 |
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●本書を引用した記事
腹五分目
自己管理能力を上げる方法
生産的であるために4:対人関係編、もの編、計画編、食事・健康編の詰め合わせ
やってみることには苦痛がともなうと意識する
目覚めよ!生きよ!:さあ、第一歩を踏み出そう
失敗の報酬
なぜ失敗するのか
生産的であるために3:技術編
仕事が完了したらすぐに次の仕事にとりかかる
アドバイスが毒になる
●このテーマの関連図書
■参考図書 『仕事は楽しいかね?』
![]() ![]() ![]() | 出張の帰りに、大雪のため一昼夜空港のロビーに足止めされた「私」。そこで出会った話し好きの老人。その含蓄ある言葉に「私」はしだいに仕事観を揺さぶられていく。 本書は、将来への希望もなく日々仕事に追われる主人公が、老人のアドバイスに自己変革のアイデアを見いだしていく物語である。それは、唐突に繰り出される老人の言葉とそれを問いただす「私」の会話で展開していく。 老人は「目標を立てるな」「遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る」「明日は今日と違う自分になる」などのアドバイスをおくり、「私」はビジネスマンとして大きな自己変革を遂げていく。 連作として 仕事は楽しいかね? 2 仕事は楽しいかね?《最終講義》 仕事にちょっとつまずいたあなたへ―上司や部下がマヌケに見えたときに頼るメール がある。 |
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![]() 仕事は楽しいかね? 著者 :デイル・ドーテン | 楽天では見つかりませんでした | ![]() 仕事は楽しいかね? 検索 :商品検索する |
●本書を引用した記事
数値の利用して自分の評価を上げる
神様フェイント
今日学んだことを3つ上げなさい
準備8割
7つの仕事力_前編
事実と真実
やってみることには苦痛がともなうと意識する
「意思」は信用しない
目標の立て方(基本編)
人生に変化を起こす方法
●このテーマの関連図書
仕事は楽しいかね?2
仕事は楽しいかね?《最終講義》
チーズはどこへ消えた?
自分の小さな「箱」から脱出する方法
まんがで変わる仕事は楽しいかね?
ずっとやりたかったことを、やりなさい。