人を動かす:父は忘れる




本日は、著者自身の言葉ではありませんが、『人を動かす』にかかれていた「父は忘れる」という手紙をご紹介します。

私自身、不登校児童の父でもあり、子供が小さいにあったいろいろなことが思い出されて、もっと早くこれを知っていればというちょっとした「忸怩たる思い」みたいなものがあります。ですので、これは、サラリーマンとしてではなく、父親として長く覚えておきたい文章だと思っています。

★P29〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

●父は忘れる
                    リヴィングストン・ラーネッド

坊や、きいておくれ。お前は小さな手に頬をのせ、汗ばんだ額に金髪の巻き毛をくっつけて、安らかに眠っているね。

お父さんは、ひとりで、こっそりお前の部屋にやってきた。
今しがたまで、お父さんは書斎で新聞を読んでいたが、急に、息苦しい悔恨の念にせまられた。罪の意識にさいなまれてお前のそばへやってきたのだ。

お父さんは考えた。これまでわたしはお前にずいぶんつらく当たっていたのだ。

お前が学校へ行く支度をしている最中に、タオルで顔をちょっとなでただけだといって、叱った。靴を磨かないからといって、叱りつけた。また、持ち物を床の上に放り投げたといっては、どなりつけた。
今朝も食事中に小言を言った。食物をこぼすとか、丸呑みにするとか、テーブルに肘をつくとか、パンにバターをつけすぎるとかいって、叱りつけた。

それから、お前は遊びに出かけるし、お父さんは停車場へ行くので、一緒に家を出たが、別れるとき、おまえは振り返って手を振りながら、「お父さん、行っていらっしゃい!」といった。すると、お父さんは、顔をしかめて、「胸を張りなさい!」といった。

同じようなことがまた夕方に繰り返された。

わたしは帰ってくると、お前は地面に膝をついて、ビー玉で遊んでいた。
長靴下は膝のところが穴だらけになっていた。お父さんはお前を家へ追いかえし、友達の前で恥をかかせた。

「靴下は高いのだ。お前が自分で金をもうけて買うんだったら、もっと大切にするはずだ!」
――これが、お父さんの口から出た言葉だから、われながら情けない!

それから夜になってお父さんが書斎で新聞を読んでいる時、お前は、悲しげな目つきをして、おずおずと部屋に入ってきたね。うるさそうにわたしが目をあげると、お前は、入口のところで、ためらった。

「何の用だ」とわたしがどなると、お前は何もいわずに、さっとわたしのそばに駆け寄ってきた。

両の手をわたしの首に巻きつけて、わたしに接吻した。
お前の小さな両腕には、神さまがうえつけてくださった愛情がこもっていた。

どんなにないがしろにされても、決して枯れることのない愛情だ。

やがて、お前は、ばたばたと足音をたてて、二階の部屋へ行ってしまった。

ところが、坊や、そのすぐ後で、お父さんは突然なんともいえない不安におそわれ、手にしていた新聞を思わず取り落としたのだ。

何という習慣に、お父さんは、取りつかれていたのだろう!

叱ってばかりいる習慣――まだほんの子供にすぎないお前に、お父さんは何ということをしてきたのだろう!

決してお前を愛していないわけではない。お父さんは、まだ年端もゆかないお前に、無理なことを期待しすぎていたのだ。お前を大人と同列に考えていたのだ。

お前の中には、善良な、立派な、真実なものがいっぱいある。
お前の優しい心根は、ちょうど、山の向こうからひろがってくるあけぼのを見るようだ。
お前がこのお父さんにとびつき、お休みの接吻をした時、そのことが、お父さんにははっきりわかった。ほかのことは問題ではない。

お父さんは、お前に詫びたくて、こうしてひざまずいているのだ。

お父さんとしては、これが、せめてものつぐないだ。

昼間にこういうことを話しても、お前にはわかるまい。だが、明日からは、きっと、よいお父さんになってみせる。
お前と仲よしになって、一緒に遊んだり悲しんだりしよう。小言を言いたくなったら舌をかもう。そして、お前が子供だということを常に忘れないようにしよう

お父さんはお前を一人前の人間とみなしていたようだ。こうして、あどけない寝顔を見ていると、やはりお前はまだ赤ちゃんだ。

昨日も、お母さんに抱っこされて、肩にもたれかかっていたではないか。お父さんの注文が多すぎたのだ。

デール・カーネギー(著) 『人を動かす
――――――――――――――――――――――――――――★


この文章のあとで、著者カーネギーは以下のように書いています。

★P32〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

相手を理解するように努めようではないか。

どういうわけで、相手がそんなことをしでかすに至ったか、よく考えてみようではないか。

そのほうがよほど得策でもあり、また、おもしろくもある。

そうすれば、同情、寛容、好意も、おのずと生まれ出てくる。
すべてを知れば、すべてを許すことになる

英国の偉大な文学者ドク夕ー・ジョンソンの言によると

 「神様でさえ、人を裁くには、その人の死後までお待ちになる

まして、われわれが、それまで待てないはずはない。

デール・カーネギー(著) 『人を動かす
――――――――――――――――――――――――――――★


かなり難しいですけどね。

そして、この章は以下のように結ばれてます。

 人動かす原則1:批判も避難もしない。苦情も言わない

これまた凡人には相当ストレスかも、ですが努めたいですね。




■参考図書 『人を動かす

これを読まざるしてヒューマンコミュニケーションを語るなかれ!
デール・力ーネギーによる自己啓発の源流とでもいうべき不滅の名著。原版(How to Wln Friends and Inffuence Peaple)は、世界各国で 1500 万部以上、日本語版も 400 万部を超える大口ングセラー。
この脅威の部数は、本書が「人間心理の本質」を正面から扱った最初の一冊であることを示している。多くのヒューマンコミュニケーションに関する本は本書の焼き直しと行っても過言ではない。これらの本を読む前に、まずは本書を読んでから語ってほしいもの。




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著者 :デール・カーネギー

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●関連 Web
 悪用厳禁!心理学で人を動かす7つの秘法 - ライフハックブログ
 人を動かす-Wikipedia
 人ひとを動うごかす―デール・参考カーネギーによる人間関係の古典―:日本語文学ガイド
 転職を繰り返したD.カーネギー――世界最大の自己啓発本「人を動かす」を作った男
 説得コミュニケーションの原則―Diamond Online
 悪用厳禁!心理学で人を動かす7つの秘法 - ライフハックブログ

●本書を引用した記事
 会議が失敗する理由
 新しいシステムには一番協力してほしい人の名前を入れる
 人を動かす:相手の話を聞くときには手を止めなさい
 上司が部下の相談に乗ってくれないのはなぜ?
 海外出張に行くときは、その国の言葉で挨拶をしなさい
 事前に上司に電話をしてもらう
 人を理解するなら修飾語に注目する
 リスクは上げるより見直す1:リスクは上げるより見直す
 相手の評価を上げる
 部下力のみがき方3:キーメッセージ
 部下力のみがき方2:要約
 会議の予定は多めに入れる
 遊び時間を作る
 仕事の4条件のスコープを決める
 たたき台を作ると成長できる
 報連相の手段―上司を捕まえる
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 会社で生きることを決めた君へ_3
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 面接で「年上の部下・担当者への接し方」を聞かれたら2
 面接で「年上の部下・担当者への接し方」を聞かれたら1
 人相記憶術―その4連想記憶
 残念な人の仕事の中身
 残念な人の仕事の中身
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 マイクロ挫折をする
 ザ・プレゼンテーション
 質問する
 OhLife
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 他者と違う行動を恐れてはいけないが慎重にやりなさい
 人を動かす:人に好かれる原則2:聞き手にまわる
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 人を動かす:人に嫌われる方法
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 人を動かす:日光を吸い込みなさい
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 人を動かす:一心に相手の話を聞くことは、相手に対する最大の賛辞である
 人を動かす:人に好かれる原則3「名前は当人にとって最も快い、最も大切な響きをもつものであることを忘れない」
 人を動かす:人に好かれる原則1「誠実な関心をよせる」人を動かす:人に好かれる原則1「誠実な関心をよせる」
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 人を動かす:幸福は自分の気持ちで決まる
 人を動かす:笑顔で電話しなさい
 7つの習慣:率先力を発揮する
 意識をして廃棄をしなさい
 人を動かす:あなたの応援がしたい
 「こんなこと発言していいのかな?」と思ったことをいってみる
 7つの習慣:人生の責任を引き受けなさい
 人望が集まる人の考え方:相手に注意を与えて成果を上げるための7つのルール
 人を動かす:相手が優位であることを探す
 ポイントカードテクニックで仕事を頼む方法
 7つの習慣:人間は刺激と反応の間に選択の自由を持っている
 人と動かす:他人のことに関心を持たない人は、苦難の人生を歩まねばならない
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 人を動かす:相手の心のなかに強い欲求を起させること
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 人を動かすことは褒めること
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 人を動かす
 決定事項に必須の3要件
 上司を使えない部下は後輩も使えない
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 意思決定をする習慣
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 ビジネス書名著目録(必須図書)
 会社で生きることを決めた君へ

●このテーマの関連図書


道は開ける新装版

話し方入門新装版

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか(はじめて読むドラッカー(自己実現編))

思考は現実化する―アクション・マニュアル、索引つき

カーネギー名言集新装版

完訳7つの習慣人格主義の回復





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