リーダーの敗北宣言「あいつは使えない」


何らかの組織を持って仕事をしているリーダー、とくに管理職で、「あいつは使えない」的な発言をする人が時々います。
とくに同じ部門の中だと、どうしても部門全体の評価会議の時に、「あいつはな〜」などと評価が低い理由がでてきます。



 それあなたのせいだから。

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かつて先輩が聞かせてくれた話があります。

「『あいつ使えない』という表現は、『あの人は役に立たない』という意味ではなく『私にはあの人を使う能力がない』という意味だ。 『あいつ』と指差した手の指のうち 3本は自分に向かっている」

これを聞いて、私はこの言葉は決して使わないようにしよう、と決めました。この言葉を発するということは、自分が彼、彼女に対して適切な対応を取ることができず、負けを認めることだと感じたからです。

しかし、現実には自分にとって、どうしても相性の悪い人も存在します。そういう人が自分の感覚ではありえない行動を取っているように見えるときは、相手を責めてしまいそうになることもあるでしょう。

でもそんなときでも、「あいつ使えない」という言葉は封印し、発想の転換をしてみてください。「あの人を使える能力を身につけよう」と自分の問題としてとらえ直すことで、他責にする代わりに前向きな解決策はないかと、ぎりぎりまで踏ん張ることができるのです。

河野英太郎(著) 『たった1%の仕事のコツ
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■リーダーとして自分の部下の能力を活かす配置をする


リーダーに期待されるのは、チームを率いて業務を分担し、ある目標を実現することです。

つまり、ひとつの仕事を細分化し、それぞれのメンバーの専門性=能力を活かして、一人ではできない大きな結果を出すことが求められます。
しかしながら、「あいつは使えない」といった時点で、おそらくリーダーの頭のなかから、「その人の持っている能力を引き出そう」という意識がなくなります。結果十分な成果が出せないか、あるいは特定の人の能力に依存して、工数がかかったり、成果が小さくなったりすることになります。

と、ここまでは建前論

現実には、この結果を出すためにほしい能力を持った人がメンバーに配置されない、とかいう場合も少なくありません。
というか、私の経験から言うと、十分な能力を持ったメンバーをもらえること自体が「まれ」です。

いきおい、「××がやって欲しいのだけど、やれる人がいない」「○○さんには振る仕事がない」ということになります。
これが期間に限りのあるプロジェクトだったりすると、まだましですが、ある部門や課、係などのある程度の固定組織だと、その組織において必要な能力を持っていない人が配属されたら、もう悲惨です。
役割を振ることができないし、振ったら降ったで他のメンバーの脚は引っ張るわ、面倒くさいことこの上ない。

で、最後には「あいつは使えない」と嘆くことになります。

ただし、それを発言として表に出すのは、リーダー(課長・部門長)の敗北宣言。
本書『たった1%の仕事のコツ』のように、「彼を使いこなせない」と言っているのと同じと考えないと、自分の上司から管理職としての能力を疑われかねません。
上記の建前論は、サラリーマンには刷り込まれてますので、「お前のリーダーとしての能力が低い」と思われてしまうわけ。

これには、やっぱり、その人を何とか使う工夫をしないといけません。
所詮、ベストの人材配置がされるわけはないですから。

■縦に切れなければ横に切る


リーダーが主に仕事を割り振るときには、仕事は縦に切ります。

つまり、ある研究プロジェクトだと、「××の研究」と「○○の研究」を合わせて目標の研究結果を出すみたいに、専門性の軸で切ってメンバーに渡すことが多いです。しかし、使えないひとはその割り振りに耐えられるだけの専門性を持っていないので使えないことになります。

そういう時は、横に切ってしまうと割とうまくいきます。

つまり、「××さんの研究の結果を板書するのでそれをレポートにまとめる」「口頭で指示した内容をメールにして出す」「ある決まった手順の実験をする」みたいに、専門の軸ではなく作業の軸で切り出すわけです。こうした作業なら割と単純作業で専門性は大して必要なくなるので、知識がない人や分析力が劣る人でも何とかこなせます。つまり、専門性のある人の能力を最大発揮することができるように雑務を切り出すイメージです。

意外とうまくいきますよ。

ただし、常に「雑務はないか」とリーダーが気配りしていないといけないので結構疲れますが。




■参考図書 『たった1%の仕事のコツ





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こんなことがありませんか?

 とにかく仕事がたまる/上司によく無視される/命がけでつくった書類を見てもらえない/「言ってることがわからない」と言われる/会議で反対ばかりされる/自分にだけ、メールの返信がこない(遅い)/いつもあら探しされる/いつもあとまわしにされる/いい仕事は全部他人にもっていかれる/やり直しばかりさせられる/まじめにやっているのになぜか報われない……

そんな人は、その「やり方」を見直す必要があるかもしれません。まじめさとパフォーマンスは決して正比例ではありません。悪い意味で「まじめ」すぎると、パフォーマンスは逆に下がるのです。

デキる人とは、このまじめの「力のかけかた」を知っています。

そこにはちょっとしたコツがあります。このコツを知っているか知らないかは、あなたのパフォーマンスをとても大きく左右します。
実は99%の人がしていない、ちょっとした、でも効果絶大な仕事のコツを、本書では紹介していきます。





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著者 :河野英太郎

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●本書を引用した記事
 考える仕事は早めに終わる
 メモ帳の消費量を測定する
 体調の維持管理をする
 目的に立ち返る
 問題・課題・懸念事項
 パニックになるのを避ける方法
 メモは簡潔がいい?詳細に書く?
 バブルマップノート:今日やることは常にデスクトップに置く
 命令か依頼か―リーダーとしてのメンバーとの付き合い
 議事録は清書してはいけない
 朝型仕事と夜型仕事を比べてみると
 要約と結論(約起承転結)
 「とりあえず」は忌み言葉
 強制メモ
 仕事の効率は上司が決める2
 できることしかできない
 ▼字型スキルを持つ
 「他力」を利用する
 ワークライフバランスを考える
 ストレス解消の方法をもってますか?
 簡単なことしか習慣化しない
 勝手にメンターにする
 ルールに触れるには覚悟が必要
 愚痴が言いたくなったら対策を考える
 リーダーの敗北宣言「あいつは使えない」
 誰もやらない仕事は誰がやるべきか
 リーダーの心得:失敗を経験させる
 人物カルテ:価値観を意識する
 99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ
 勇気を持って断る
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 迷わないと効率良くできる
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