ものの見方の10パターン07:弁証法・否定弁証法




多くの仕事の中で、自分の能力をフルに使わないといけない仕事は、自分の持っている専門知識を使って「ものごと」を分析して、その分析結果に基づいて次の行動につなげていくという作業なのではないでしょうか。




 「××について検討しなさい」
 「○○について調査しなさい」
 「○○の課題はどのように対応しようと考えるか?」

こんな課題が与えられた時に、上司をうならせる分析手法があります。
私はこれを

 ものの見方の定番

と呼んでます。

このシリーズ(最近多いなぁ)はこれらを一気に紹介します。

本日はその第 7 回目。弁証法・否定弁証法 をご紹介します。


本日は、弁証法と否定弁証法という2つの概念(ものの見方)をご紹介します。




■弁証法


これはヘーゲルを始祖とする論理で、ヘーゲルは『精神現象学』で、意識がより高次なものへと変化していくさまを描いていますし、『法の哲学』でも、権利や共同体が発展していく経過を切り取って論じています。

この根本にある理屈は、

★――――――――――――――――――――――――――
 ある命題(テーゼ)があるときに、対になる命題(アンチテーゼ)が存在し、それをともに生かしつつ共存させることによって、発展した統合命題(ジンテーゼ)が導き出せる
 全てのものは己のうちに矛盾を含んでおり、それによって必然的に己と対立するものを生み出す。生み出したものと生み出されたものは互いに対立しあうが(ここに優劣関係はない)、同時にまさにその対立によって互いに結びついている(相互媒介)。
 最後には二つがアウフヘーベン(止揚,揚棄)される。このアウフヘーベンは「否定の否定」であり、一見すると単なる二重否定すなわち肯定=正のようである。しかしアウフヘーベンにおいては、正のみならず、正に対立していた反もまた保存されているのである。ドイツ語のアウフヘーベンは「捨てる」(否定する)と「持ち上げる」(高める)という、互いに相反する二つの意味をもちあわせている。

 Wikipedia 弁証法
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%81%E8%A8%BC%E6%B3%95
――――――――――――――――――――――――――★


ということです。わかります?
私はいまだによくわかってませんが…。

ただ分かるのは、テーゼに対しては常にアンチテーゼが存在し、この2つはひとつの真理に内包されるものである、ということで、論理的視点の構築には常にアンチテーゼを受容性が必要だということです。
※もうちょっと簡単な言葉で説明できるといいのですが、私の力ではこのあたりが限界。

たとえて言うと、企業活動が健全に成長するためには、競合企業が必要だが、競合企業によってその企業活動を停止させられる(競争に負けて倒産する)ことも起こりうるわけです。つまり、この場合のテーゼは、「競合企業が必要」となり、アンチテーゼは、「競合企業による企業活動の停止」となります。

もうひとつたとえ話というか、小説の話を。

「銀英伝」でラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーが初めて会見した時に、ヤンが、ラインハルトから「臣下にならないか」と誘われて、民主主義のいいところを説明する場面があります。ラインハルトが「君は私に民主主義を説くのかね?」と聞くと、ヤンは「いえ、私はアンチテーゼを示しただけです」という場面があります。
ヤンは「民主主義こそ人類の究極の政体だ」と言っているわけではなく、このような弁証法の理論を使って、あらゆる制度は、あるテーゼとアンチテーゼを含んでいると言いたかったのかもしれませんね。

■否定弁証法(差異)


要は弁証法のところで述べたように、ものごとは2つの側面を持っています。これを分離して考えるべきだというのが、否定弁証法です。
ただ、否定弁証法というと、弁証法がよくわからないのに、さらにその否定というのがもう呪文の世界。

なので、単純に「差異を考える」という言葉にしてます。

相反するA案とB案があって、それぞれにいいところと悪いところがあったら、それを一つにまとめるとなんだかよくわからないC案が出来る、みたいな感じが弁証法で、「そんなC案はよくないでしょう」というのが否定弁証法と考えてます。

差異は差異のまま残しておくのがよくて、矛盾を解消しようとしても(ジンテーゼに達しようとしても達成できない)というのがポイント。

結構日本人には感覚的にわかりやすい理屈で、「そう無理して統一しなくてもいいじゃない」式な流れです。

論理を構成する上では、この差異を際だたせることによって、相互矛盾する命題にひねりを加えた結論(つまり統一しない統一)の論点を作ることができます。
ただ、説明が難しくて、聞く方も難解になりやすく、説得力という点ではよほど弁が立たないと難しいというのが私の個人的経験則。





■参考図書 『精神現象学




本書は、観念論の立場にたって意識から出発し、弁証法によって次々と発展を続けることによって現象の背後にある物自体を認識し、主観と客観が統合された絶対的精神になるまでの過程を段階的に記述したもの。
カントの認識と物自体との不一致という思想を超克し、ドイツ観念論の先行者であるフィヒテ、シェリングも批判した上で、ヘーゲル独自の理論を打ち立てた初めての著書である。難解をもって知られ、多くの哲学者に影響を与えた名著。





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精神現象学
著者 :G.W.F. ヘーゲル
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●関連 Web
 ヘーゲル 『精神現象学』 における疎外論と物象化論 (1)
 ヘーゲル『精神現象学』 「T 感覚的確信」について - YouTube
 ヘーゲル「精神現象学」の要約

●本書を引用した記事
 嫌なことがあった時には、難解な本を読む
 ものの見方の10パターン07:弁証法・否定弁証法
 古典・名著のすすめ2―解説本の使い方


●関連図書
 ヘーゲル「精神現象学」入門
 超解読! はじめてのヘーゲル『精神現象学
 純粋理性批判
●このテーマの関連図書


ヘ-ゲル『
精神現象学』入門(講談社選書メチエ)

新しいヘーゲル(講談社現代新書)

超解読!はじめてのヘーゲル『
精神現象学』(講談社現代新書)

歴史哲学講義(上)(岩波文庫)

歴史哲学講義〈下〉(岩波文庫)

完全解読ヘーゲル『
精神現象学』(講談社選書メチエ)





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