■何時でも相談に乗る
たとえば、あなたとあなたの上司(あるいは、あなたとあなたの部下)で「いつでも相談にのるから」という会話をしたことはありませんでしょうか?
あれ、実際に相談にのってもらった(あるいは相談にのってあげた)ことがあります?
ちょっとこんな会話事例を用意してみました。
上司: 「×××の対応の件、今どうなってるの?」
部下: 「あの……。いろいろとバタバタしていて、すみません」
上司: 「いや、進捗を教えてよ。どこまでやったの?」
部下: 「えっと……。まだ、ちょっと手つかずのままです…。すみません」
上司: 「すみませんって……。これって3カ月前に君がやるって決めたことだね?」
部下: 「本当に申し訳ありません」
上司: 「それで、どうするの?」
部下: 「はい。他業務をもう少し効率化してやっていきます。また相談にのってください」
上司: 「わかった。君が大変だっていうのは分かっているから。いつでも相談に乗るから、とにかくコミュニケーションを密にしてやっていこう」
「ちゃんと相談に来いよ」「はい、相談させてください」という会話で、経験的には効果があった試しがありません。
■部下の一言に安心する上司の本音
上司としては部下に対して、「いつでも相談に来い」と言えば、それで上司としての責任を果たしているように感じます。
「オレは部下に対して、いついかなる時でも聞く姿勢を持っている」という気がするからです。実際に部下の困り事を聞いたわけではありません。
部下は部下で、「仕事が進んでない」という非常に漠然としたテーマなので、何かの対策が出るということもありません。出たとしても「このプロジェクトから自分を外してください」みたいなとんでもない案くらいしか思いつきません。
結果、次の進捗でも「どうなんだ」「進んでません」「相談に来いといっただろうが」という会話をすることになります。
これは責任という観点では上司が悪いです。
少なくとも上司は、なにかネタを持ってこない限り、「お前はどうしたらいいと思うんだ」くらいしか返す方法がありません。
もし、あなたが「相談に来い」と言われたら、試しに「相談に来ました」と言って上司の前に黙って座ってみてください。
上司が「××したらどうだ」なんて言ってくれることは絶対にありません(これが言える上司のかたが見えたら申し訳ありません。私の見識不足です)。
だからといって、「××のプロジェクトから外してください」とか「私だけ残業制限を解除してください」といっても「ダメだ」と言われて話は終わりです。
「いつでも相談に乗る」と上司から言われて、「また相談に乗ってください」と答える部下がいる。部下にそう答えられて安心するのか、「いつでも待ってる」と上司が応じるのだが、2人とも完全に「思考停止状態」。上司も部下も何かしたような気になっているだけ。
上司も部下もはただその場のを乗り切ることができればいいだけ。
真剣に、何とかしようと考えているなら、今、具体的な行動を検討するはずですね。
■具体化しない限り答えは出ない
重要なことは、期待された結果を出すことですよね。結果を出すためには具体的な行動を検討しなければいけませんね。
・この3ヶ月どの様なプロジェクトにどの程度時間を使っていたのか?
・今の課題より優先順位の被くいものは何か
・今あるタスクで予定を変えられるものはなにか
こんな質問をしない限り、結果につながることはありません。
■悪化すると組織を歪ませる
ここからは上司視点のお話ですが、こういうことが積み重なると、上司は、その部下の「意欲」や「モチベーション」に疑いを持ち始めます。
相談に来いといっていたのに、相談にも来ない。
仕事をやり遂げようとする意欲が足らないのではないか?
とまぁ完全に勘違いなのですが。
でそれが高じると、マネージャ会議などで、「最近、仕事を成し遂げようという意欲が少ない奴がいる」みたいな話になって、みんなで「そうそう!」という事になり、「意欲アップのためのセミナーを受けさせてみましょう」とか「コーチングの勉強会をしましょう」とかいう展開になってきます。
もうこの辺に来ると、「仕事をしないのは部下の意識の問題」にすり替わってしまっているので、他人ごとならなんでも言えます。行っちゃえ状態。
いつのまにか組織の目標が、結果を出すことではなくて、「意欲を出せる仕事」みたいな訳の分からないものになります。