今、私が務めている会社は従業員が数万人規模になってしまいましたが、私が入社した当時はかなりこじんまりしたものでした。
そういう会社の過去を知っていて、今の若い部下は「可愛そうだなあ」と思うのが、
分業しか経験できない
こと。何かの製品開発プロジェクトをやるにしても今では数百〜数千人の関係者がいますので、「あんたの仕事はここまでね」みたいにしっかりした切れ目があります。しかし、私が若い頃はそういったものがなくて、設計から生産作業や販売まで、あらゆることをお互いに手伝わないとできませんでした。
確かに大変だったのですが、逆に、今でもその経験は生きていて、いろんな部署の人とつながりがありますし、その人達の業務も詳細は分からないにしても、どんなことをしているのかはだいたいわかります。ものや情報の流れなども。
本書『入社10年目の羅針盤』にも同じようなことが書いてありました。
★P112〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
●地味な仕事にチャンスあり
「自分はもっと大きい仕事を任されたいのに、今担当しているのは地味な仕事。ちょっと格好悪いし、同期にもバカにされる」
会社の風土によっては、同期との比較が気になるという人もいるでしょう。
僕は若いころ、社内で「地味」とみなされていた小さいプロジェクトに配属されることが多かったです。投資ファンドのリップルウッドに在籍していた時、社内では 3000 億円近い大型案件である日本テレコムの買収が脚光を浴び、同期も何名か担当チームに入っていました。この時、僕は静岡県のある鋳物メーカーを上司と 2 人で担当していました。案件総額は 200 億円前後。
周りからは、「岩瀬も地味なプロジェクトにまわされたな」と思われていたかもしれません。でも実際は、困ることはありませんでした。規模が小さい企業のプロジェクトでよかったと思います。なぜなら小さなブロジエクトだったからこそ、仕事のすべてを一通り経験することができたからです。大きなプロジェクトでは、全体像が見えず、自分がいったい何の仕事をしているのか分からないということもあります。そのうえ、メンバーに与えられる責任や権限も小さいものです。
その点、小さなプロジェクトであれば自分に大きな権限が与えられ、スタートから一通りのことを経験できるのでやりがいがあります。
僕も実際、銀行に行って資金調達の交渉をしたり、社長候補を面接したり、経営計画を立てたりしました。大きなプロジェクトにいたら、そのどれかの担当はできたかもしれませんが、すべては経験できませんでした。
漢文の授業で、「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざを習いましたが、まさにその通り。
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もしあなたが就職・転職活動で会社を自由に選べる立場にいるのならば、僕は大企業より、小さくても勢いのある会社に行くべきだと思います。小さなプロジェクト、小さな会社でも、「自分は大きな責任を持たされているんだ」と胸を張っていればいいのです。そのほうが個人としても間違いなく成長するはずです。
岩瀬大輔(著) 『入社10年目の羅針盤』
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最後の1文は賛同しかねますが、それ以外は私の経験値からいってもその通り。
小さなプロジェクトに積極的に参加しなさいというのは、経験を広げる意味でも、人脈を広げる意味でも、積極的に手を上げたいですね。
■参考図書 『入社10年目の羅針盤』
右肩上がりの時代なら、一流企業に就職し、順調に出世して、経済的にもゆとりのある暮らしを築くことが、共通した幸せの概念だったかもしれない。しかし人々の間で物質的な豊かさよりも精神的な豊かさが求められている昨今、若い人たちも、上を目指すだけでは自分の幸せにたどり着くことができないことに気づき始めている。よく「最近の若者は出世欲がない」などと言われるが、出世の先に自分の目的とする場所があるわけではないということを、感覚として分かっているからではないだろうか。入社10年目というと、30歳前後の若手ビジネスパーソンにあたる。経験を重ね、スキルも身についている頃だが、責任も与えられ、部下を束ねている人もいる。私生活でも結婚や出産を意識するなど、考えることの多い年代だ。若い頃はただがむしゃらに進めばよかったかもしれないが、30代以降はしっかりと方向を定めて進んでいかなくては目的地にたどり着けない。
うまくいかない時、つまらない仕事をしなければならない時もあるだろう。しかし自分の目標が定まっているのであれば、それを平然と乗り越えていく術も必要だ。
失意泰然(しついたいぜん)、得意淡然(とくいたんぜん)。
うまくいっていない時こそどっしりと構えよ、うまくいっている時こそ謙虚であれ、といった意味合いの言葉だ。この本でも紹介している。
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●本書を引用した記事
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