学習という行為をするためには、たった2つの方法しかありません。
つまり、何かを勉強したいと思うなら、2つにひとつ、あるいはこの両方をするしか方法はありませんので、勉強を始めることは意外と簡単です。
その方法とは
1.人に教わる
2.書物に教わる
です。
前回は、「人に教わる」ことについて、ドラッカーがどのように述べているかから、制約事項について考えました。
今回は、「書物に教わる」ことについて考えてみたいと思います。
■書物に教わる
もう一つの学びの方法が、「書物から学ぶ」という方法です。
例えば、ビジネススキルを学ぶ方法であれば、直接的に「ビジネススキル」に関する書物を読むという方法ですが、べつに「歴史書」からでも学ぶことはできますし、「伝記」でも可能です。
ようは、読んだものをどのように解釈するのかによっています。
ドラッカーは、『プロフェッショナルの条件』の中で以下のように述べています。
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●神々が見ている―フェディアスの教訓
ちょうどそのころ、まさにその完全とは何かを教えてくれる一つの物語を読んだ。
ギリシャの彫刻家フェイディアスの話だった。
紀元前 440 年ころ、彼はアテネのパンテオンの屋根に建つ彫像群を完成させた。それらは今日でも西洋最高の彫刻とされている。だが彫像の完成後、フェイディアスの請求書に対し、アテネの会計官は支払いを拒んだ。「彫像の背中は見えない。誰にも見えない部分まで彫って、請求してくるとは何ごとか」と言った。
それに対して、フェイディアスは次のように答えた。
「そんなとはない。神々が見ている」。
この話を読んだのは、ちょうど 『ファルスタッフ』を聴いたあとだった。
ここでも心を打たれた。今日にいたるも、私は到底そのような域には達していない。
むしろ、神々に気づかれたくないことをたくさんしてきた。
しかし私は、神々しか見ていなくとも、完全を求めていかなければならないということを、そのとき以来、肝に銘じている。
「あなたの本のなかで最高のものはどれか」とよく聞かれる。そのときには、次の作品ですと本気で言っている。
ヴェルディが 80 歳のときに、それまでずっと取り逃がしてきた完全を追求して、新しいオペラを書いたときの言葉通りのことを意味しているつもりである。
すでに私は、ヴェルディが『ファルスタッフ』を書いた歳を超えた。しかしちょうど今、2冊の本を構想し、実際に書き始めている。その二冊とも、これまでのどの本よりも優れたもの、重要なもの、完全に近いものにしたいと思っている。
P.F.ドラッカー(著) 『プロフェッショナルの条件』
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「私の生涯の作品の中で最高のものは、次の作品である」というのは、有名なお話なのでご存じの方も多いと思います。
私もこんなことを言ってみたいものだと思いますが、駄作の成果の連続で…。
■両方が必要
ドラッカーは自分の学びたいことを直接教わることについてはあまり言及しておらず、どちらかと言うと、ある出来事やある記述から、自分にあったエッセンスを取り出して、自分の糧にすることを述べています。
※私の読み方が足らず、間違っている可能性もありますが。
すなわち、前回の「人から学ぶ」でも書いたとおり、人の行動はその人のためのものであって、だれかに教えるためのものではありません(そうでない場合もありますが、究極的には自己満足の世界です)。書物も同じで、たとえ直接ビジネススキルを教えてくれる本であっても、それは著者が持っている崇高な目標のための一部にすぎないわけです。あなたのために書かれた書物ではありません。
そこから何を学ぶのか、どの様な価値を見出すのかは、読んだ人自身の問題なわけです。
ある書物を読んだとして、そこに書かれていたことから、自分にとっての価値ある情報を引き出し、それの実践を通じて、知識(ゲシュタルトと言ってもいいかも)を構築していくのは、本人にしかできないわけです。
人から学ぶ機会というのは、人間が生きている期間や環境によって非常に限定されます。
これが、書物というツールを使えば、文字を残す文化を持った時代から現代に至るまで、洋の東西を問わず可能になります。集約されたエッセンスを得やすい環境がそこにあるということですね。
そういう意味で、書物を読まない人というのは、結構損をしているような気がしてなりませんが、それもまた考え方次第かも。
■参考図書 『プロフェッショナルの条件』
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