報告書に必須の4要素:6.文字にして4要素を吟味する




仕事で上司から「×××の報告書を作りなさい」と指示されたり、メールでちょっと長文のメールを書くことがありますよね(以下、まとめて「報告書」といいます)。
この時に、わかりやすい報告書とそうでない報告書を見比べてみると、わかりやすい報告書にはいくつかの特徴があります。

 ・設問者が期待した答えがある
 ・だれに何をして欲しいのかが分かる




というポイントが押さえられています。

一気に書くと長文になってしまうので、「報告書に必須の4要素」シリーズとしてご紹介します。

最初に登場人物をご紹介しておきます。

 報告書: 報告書・メール・プレゼン資料などの文書
      場合により、口頭での報告なども含む
 報告者: 報告書などの文書を書く人(多くは部下)
 書き手: 報告者と同じ。文書を作ることを意識して使い分ける事があります。
 設問者: 報告者に文章を書くように指示した人
      (多くは上司・メールの発信者)
 設問 : 設問者が報告者に発した内容そのもの
 読み手: 報告書を読む人。設問者も含まれるが、報告書は多数の人が読む場合もある。

本日は、「報告書に必須の4要素」シリーズのまとめをお送りします。

前回までの内容は以下をご覧ください。

 報告書に必須の4要素:1.概説
 報告書に必須の4要素:2.正しく「問い」を認識する
 報告書に必須の4要素:3.「テーマ」を文章にする
 報告書に必須の4要素:4.「答え」を論理的に推敲する
 報告書に必須の4要素:5.「反応」を引き出す




■4つの要素


今までの記事で、報告書の4要素について、私なりに考えていることを書いてきました。

読み手として意味の分からない報告書には以下の様な特徴がありました。

 ●「問い」  そもそも何のために書くのか、設問者の目的がわかってない
 ●「テーマ」 どの様な「テーマ」について論じるのかが曖昧
 ●「答え」  問に対する答えはなにかを明確にしていない
 ●「反応」  相手にどのような反応をして欲しいのかを言葉にしていない

これは、私の経験則で「うまく行った」「うまく行かなかった」ものについて、分析してみた結果なので、業種や会社等によって、どこに重きがおかれるか、それ自体が必要か、他にも重要な要素がある、など違いはあるかと思います。

ただ、ビジネス書なども参考にしましたので、基本的な構造はほぼ押さえていると考えています。

勢いで書いた報告書などはこうした構造がすっぽり抜け落ちているので、「思いつくことを思いつくままに書いたな…」なんていうことがわかってしまったりします。提出した報告書を上司が表紙だけ見て、書類入れに放り込まれないようにするためには、事前の推敲は必須で、その拠り所のひとつとして読んでいただければありがたいです。

最後に、この4要素で考える習慣をつけるためのちょっとしたコツについてご紹介したいと思います。

■4つの反応を考えて、基礎構造を検討する


文章を作ったり、ビジネス上の会話をするときには、この4要素を意識して考えてみてください。

たとえば、今アウトルックを開いてみて、自分宛てに来たメールを一つだけ適当に開いてみてください。
そして、その

 ・問い
 ・テーマ
 ・答え
 ・反応

をそれぞれ書き出してみてください。相手の言葉ではなく、自分の言葉に置き換えて。

意外と難しいですよ。

これらの設定は、これから組み立てていく論理の導入部と本論の輪郭をつかむための、いわば準備運動です。
そして、報告には、このテーマ建てが正しいのかを確認する部分が導入部になります。
そして、回答となる本論を展開することになります。

もし、導入部が間違っていれば、その時点で以下の本文を苦労して読むことはありません。
※この導入部というか、テーマが書かれてないメールや文章も多くて、意外と苦労します。
※私も、あまりかけてない方ですね。

相手が関心を持つ「問い」と、期待する反応から導かれる重要な「問い」がずれていたとします。

自分としては、シェア向上策の実行を承認してもらうために、問い「向上させるための施策は?」に重点を置いたつもりが、上司はアクション以前の問い「低下の原因はなにか?」に関心を持っている、といった場面もあります。

こういうことにならないよう、報告書が完成する前に、期待する反応が相手を考慮せずに先走っていないかどうかをチェックする報連相が重要なんですね。

相手の関心事の問いに十分な説明を用意して、さらに、なぜ、今シェア向上策の実行の承認が必要なのかを説明して、相手の関心を自分の関心のある問いにまで広げられないか、と考えることが有効です。

そして、書き手が製品 X を熟知する担当者である以上、報告者の言いたい問い「向上させるための施策は?」の説明が、担当者ならではの広がりや詳しさを備えていてはじめて、読み手は納得します。

期待する反応、読み手、書き手の各観点から、テーマを考察することに意義があります。

複眼的にテーマを考察することで、読み手に納得感を持ってもらえ、書き手にとっても期待する反応を引き出せる本論の輪郭をつかめるからですね。

以下、『ロジカル・ライティング』からの引用。

★――――――――――――――――――――――――――

「何について、何のために、誰が、誰に向けて書くのか]というコミュニケーションの設定が暖味模糊とした状態。これが、わかりにくい文書の温床になる。

特に気をつけたいのは、「何について,何のために書くのか」、つまり、文書のテーマと読み手に期待する反応が暖昧なまま、書く作業に邁進する、という落とし穴だ。

行き先未確認の見切り発車は禁物だ。

まずは、テーマ、読み手に期待する反応、書き手、読み手というコミュニケーションの設定をしっかり確認しよう。

なぜなら、これから進める文書全体の組み立てのィメージを持てるからだ。

・導入部の土台となる、文書のテーマと期待する反応は何か?
・本論では、テーマをどのような「問い」に置き換えて答えればよいのか?
・答えるべき「問い」が複数あるならば、どれに説明の主眼を置くのか?

この確認を通して組み立ての輪郭をつかむことができる。本章で取り上げた組み立ての準備は、一見、書くことからかけ離れているように見える。
だが、わかりやすく論理的な文書をスムーズに組み立てるうえで欠くことのできない、必須の準備だ。「急がば回れ」はロジカル・ライティングにも当てはまる。準備が整い、導入部を下書きしたら、次は文書の核になる本論の組み立てに進もう。

照屋華子(著) 『ロジカル・ライティング
――――――――――――――――――――――――――★


ということです。

ご参考になれば幸いです。




■参考図書 『ロジカル・ライティング




マッキンゼー出身のコミュニケーションスペシャリととして、ロジカル・シンキングをベースにしたコミュニケーション術を一般に広める著者の代表的一冊。もう1冊は『ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル 』でこちらも名著。
同名の本に、安田正氏のロジカル・ライティングもあるがこちらのほうが内容がソフト。







◆アマゾンで見る◆◆楽天で見る◆◆DMMで見る◆

ロジカル・ライティング
著者 :照屋華子
楽天では見つかりませんでした
ロジカル・ライティング
検索 :商品検索する



●本書を引用した記事
 文章校正のためのセルフチェックリスト
 「…による」には2つの意味が存在する
 「以下の通り」は使わない
 接種理論:論理構造を図示してアンチテーゼを出す
 れる・られるを多用しない
 報告書に必須の4要素:6.文字にして4要素を吟味する
 報告書に必須の4要素:5.「反応」を引き出す
 報告書に必須の4要素:1.概説
 ビジネス書名著目録(必須図書)

●このテーマの関連図書


ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル(Bestsolution)

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

問題解決のジレンマ:イグノランスマネジメント:無知の力

クリティカルシンキング・実践篇―あなたの思考をガイドするプラス50の原則

思考・論理・分析―「正しく考え、正しく分かること」の理論と実践

ロジカル・ライティング





■関連する記事

文章校正のためのセルフチェックリスト

私は、頭のなかで考えるのが不得手なので、いろいろなチェックリストを作って Excel に書き出していて、色んな場面でこのチェックリストを見ながら、抜け漏れがないかをチェックしています。メールなどでも、報告書を出すときにでも、読みやすい文章を書くために、普段から文章は一度書いてから推敲する時間をとるようにしています。そんなときに役に立つのもチェックリストです。これがあると、ちょっとした枝葉末節の部分にとらわれずに、効率的に..

「…による」には2つの意味が存在する

論理的な文章を書く際に、気をつけている単語があります。「〜によって」「による」「により」この単語が一つの段落や文節に2つ以上出てきたら、多分読まされる人は苦痛です。意味がわからなくなるから。「によって」を多用してはいけないこの「によって」という単語は結構便利な接続して、因果関係のある事象を結びつけるのに使用します。たとえば「AによってBの問題が発生した」みたいな文章です。ところがこれが多段接続する時があります。「..

「以下の通り」は使わない

複数の情報を書くときに、つい「以下の通り」って言葉を使いたくなります。実際にメールやレポートなどでよく見かけます。でも、これって冗長で、意味のない上に、「あとで説明するから」的な文章になってしまって、読みにくくなります。これを使わないように文章を構成すると、読みやすいスッキリした文章がかけると思っています。結構多用されているので、あまり気に留めていない人も少なくないみたいですが。説明は概要→詳細が基本『ロジカル..

お世辞も言わねばサラリーマンは務まらない

お世辞やゴマすりが人間組織の歴史からなくならないのは、それが効果があるからです。「お世辞で上司に取り入る」というとなんだか聞こえが悪いですが、上司にうまく取り入っていかないとサラリーマンとしては仕事が続けにくいです。上司に嫌われて、仕事がうまく行かなくなったという例は、枚挙にいとまがないですが、上司に好かれて仕事がしにくくなる、というのはたぶんそうそうありません(よほど持っているスキルとかけ離れた仕事を割り当てられない限り)。..

部下力のみがき方3:キーメッセージ

結構久しぶりですが、ビジネス書をご紹介します。図書名称:上司を上手に使って仕事を効率化する「部下力」のみがき方著者:新名史典いかにもサラリーマンに向けの本なので、読んだことがある方も見えるかも。私のブログでも時々引用させて頂いています。とくにポイントだと思うのは上司が仕事のボトルネックという点。仕事の効率を挙げるためには、上司をうまく巻き込んで行くことが重要。その点を「上司を上手に使う」と著者は表現しています。..

部下力のみがき方2:要約

結構久しぶりですが、ビジネス書をご紹介します。図書名称:上司を上手に使って仕事を効率化する「部下力」のみがき方著者:新名史典いかにもサラリーマンに向けの本なので、読んだことがある方も見えるかも。私のブログでも時々引用させて頂いています。とくにポイントだと思うのは上司が仕事のボトルネックという点。仕事の効率を挙げるためには、上司をうまく巻き込んで行くことが重要。その点を「上司を上手に使う」と著者は表現しています。..



■同じテーマの記事

Pマトリックスで優先順位を判断する

「仕事やタスクは重要性と緊急性で考えなさい」というのはよく言われる方法。ただ、これらはあまり明確な判断基準がありません。本日はその判断基準のひとつになりそうなものをご紹介します。重要性・緊急性を判断する「DIPS」という手法に、Pマトリクスというフォーマットがあります。これは重要度と緊急度をマップ上に決めて、自分が対処すべき問題、他の人にやってもらう問題、すぐに手を付ける問題、後回しでいい問題などを分類していくため..




posted by 管理人 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 知的生産術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。