前回の記事損失回避で説得力が増すで、人の損失回避という心理を利用して説得力を増す方法について書きました。
一方で、自分が説得される側になると、この「損失回避」によって判断を間違わないように注意しないといけません。
■自分が説得されてしまわない
この人の損失回避の判断の悪影響は、本書にズバリ書いてあります。★〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
さらに、自分自身もこの方法に過度に影響されてしまう可能性があることを、念頭に置いておかなければなりません。
たとえば、悪質な交渉相手だと(あるいは車の販売員でも)、こちらに話を決裂させる気がないのを十分承知のうえで、最終合意まであと少しのところで、受け入れがたい条件をもち出して無理に決断を迫るということもありえます。何と言っても、交渉を途申で止めてしまうということは、多くの時問や手間や機会を失うこと(「埋没費用」とも呼ばれます)を意味するわけです。
またもし仮に、ある阪売員がこの方法を使ってあなたの損失回避の気持ちを操作しようとしたときは、損失を意識すべきなのはその販売員のほうだということをはっきり示してください。
ロバート・B・チャルディーニ(著) 『影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣』
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時々、投資関係のセールスや広告で、
「円安が進むと、円で資産を持っていると年間10%の価値が失われる」
みたいなトークを見かけます。これが損失回避を利用したセールス方法。
あるいは、
「人の能力は磨き続けないと、下りエスカレーターに乗っているみたいに〜〜」
「これからの時代は、英語ができない人は〜〜」
なんてのもありますね。
「だから、●●●を買って資産を増やしましょう」とか、「駅前留学をしましょう」とか、いう結論が待ってます。
■損失回避の罠にハマらない
もちろん、その損失がほんものである可能性はあります。しかしながら、それが誇大に強調されすぎていないか、それを誇大に評価しすぎていないかは検証が必要です。一種の脅しであることを意識して、その脅しが現実のものになるのかどうかの可能性をきちんと考えた上で考慮しないと、相手の術中にハマりかねません。
円安で資産価値が減る
というものには、通貨の他の通貨との相対変動が一方的に進むという前提が説明されていません。その前提が正しいのかどうかを考えないと、そのリスク(損失)が正しいかどうかは考えられないんです。
この2つの暗黙の仮定を検討してみると、相手の言いなりにならなくて済むかもしれません。
すなわち、通貨の相対価値は上がったり下がったりしているのに、それをこの先もずっと円の価値が(相対的に)下がり続けるという前提で話しているわけですね。
もうひとつは、通貨の価値というのは、異なる通貨と交換するときに発生する相対的なものだということです。
つまり、円でもち円で使い続ける限りは、1円は1円の価値であり続けます。リスクが有るとするとインフレリスクのほうが可能性があるわけです。インフレリスクであれば、その通貨を外貨預金にするより、貴金属などのモノに変えたほうが安全という可能性もあります。
損失を回避しようとしてもっと大きな損失を出すのは残念なパターンですので、ご注意を。
■参考図書 『影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣』
人が「イエス」という仕組みを心理学を使って科学的に分析し、実際に応用可能なレベルにまで高めた本。社会心理学者の口バート・ B ・チャルディーニ氏は、宗教や悪質なセールス、募金の勧誘、広告主などありとあらゆる「承諾誘導」の専門家の手口を研究し、彼らの手口は基本的に 6 つの力テゴリーに分類できることをつきとめた。心理学の専門書であるが、ビジネスからプライべートまでその応用範囲は極めて広い。
現在の心理学を応用した仕事術、交渉術、会話術などの本のほとんどすべてがこの本に書かれている。
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●関連 Web
『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』の[第三版] - マインドマップ的読書感想文
影響力の使い方講座 - ダイレクト出版
影響力の武器とは?説得するときにはこれ - DCC用語集
影響力の法則 影響力の武器 - YouTube
影響力の武器:マネジャーとしての影響力は、どうすれば発揮できるのか?-Bizトレンド
●本書を引用した記事
魅力的な名前をつける
やる気が出る11のヒント
失敗は正確に報告する
「なぜなら」を口癖にする
選択肢を多くするとカスを選ぶ
出張・旅行でおみやげを買ってくる
人を動かす:人を説得する原則2:相手の意見に敬意を払い、誤りを指摘しない
相手を挑発して決断を誘導する方法
感情的になっているときの決断を避ける
他者と違う行動を恐れてはいけないが慎重にやりなさい
ポイントカードテクニックで仕事を頼む方法
提案は松竹梅でする
知覚コントラストを利用する
キャッチフレーズをつくる
親しみのある「たとえ」を使う
心理的にプレッシャーを与えると交渉が楽になる
多重人格者になる
影響力をもつと仕事ができるようになる
長所を挙げてもらうと勝手に説得されてくれる
損失回避の感情を意識する
損失回避で説得力が増す
影響力の武器実践編
復唱をすることの効用
ラベリングテクニックで人を操る方法
チームが高い成果を出すための方法
●このテーマの関連図書
影響力の武器戦略編:小さな工夫が生み出す大きな効果
影響力の武器[第三版]:なぜ、人は動かされるのか
シュガーマンのマーケティング30の法則お客がモノを買ってしまう心理的トリガーとは
マンガでわかる最高の結果を引き出す心理交渉術
影響力の武器コミック版
プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く