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6月5日 スペシャリストの昇進
●スペシャリストにとってマネジメントへの転進による昇進は難しくなる。
情報型組織に働くスペシャリストは、イギリスのインド統治体制はもちろん、オーケストラや病院よりも大きなキャリア上の機会を与えられなければならない。だが昇進の道は、それぞれの専門分野に限定されている。しかも、これからはマネジメントへの転進による昇進は難しくなる。 ミドルのポストが激減する。
ところが今日にいたるも、彼らはマネジメントの道だけを意味ある昇進としている。マネジメント側の人たちも、そのよ、つに考えている。事実、ほとんどの企業の昇進システムが、マネジメント上のポストを重視することによって、相も変わらずスペシャリストの考えを裏書きするものになっている。
問題の解決は容易でない。。おそらく参考となるのは、アメリカの法律事務所やコンサルタント会社の人事システムであろう。それらの組織では、最上席のパートナーさえスペシャリストである。しかも、パートナーになれないスペシャリストは、かなり早い段階で外へ出る。どのような方法をとるにせよ、今日の報奨システムは根本的に変えることが必要である。(新しい現実)
上田惇生 著 『ドラッガー365の金言』
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以前のサラヒンの記事で何度か触れていますが、会社における昇進の方向としては、ドラッカーのいうところの、スペシャリスト系列とマネジメント系列の2つの流れがあります。
しかし、スペシャリスト系列は多くの場合、経営者から見るとあまり好印象は受けていないのが、おそらく現実。
理由は簡単で、自分がマネジメント系列で昇進してきたから、ぜんぜん価値観の違うスペシャリスト系列というのをどう評価していいかわからないところにあります。
つまり、サラリーマンの目標は、成果を出し、役員に気に入られて昇進して最終的には、役員や経営者の一翼になること。あわよくば社長、というのが、今の経営者の価値観です(当然、そんなことは表立っては言いませんよ)。
ところが実際には、一般職から離れたがらない人がいたり、人をマネジメントするのを嫌がったりする人がある一定割合でいます。多分、この「会社という選抜組織」の根本的なところで価値観が違っているのでしょうね。
その価値観の違いを否定するつもりはありませんが、マネジメントはマネジメントの価値観で仕事に取り組んでいることは理解しなければいけません。マネジメントとしても、その人の価値観を理解しないといけませんが。お互い様ですね。
なので、もしあなたが、係長や課長への昇進のオファーに対して、迷う可能性があるなら、それ以前によく考えておくことです。
上司(昇進に価値観がある人)から見て理解できない存在になる可能性があることに対して、それで生涯仕事を続けられるのか、満足できるのかということをです。仕事を続けられるのかというのは、今の仕事の範囲がこれ以上(経営という切り口で)広がっていかなくても、この先のサラリーマン人生をやっていけるのか、ということですね。「マネジメントが悪いからオレの仕事がやりにくい」などと文句をいうなよ、と。
昇進する前は、すごく不安です。
特に技術者に多いのですが、今まで十年以上にわたって積み上げてきた技術が、マネジメントになれば不要になります。その喪失感みたいなものがどうしてもありますので、その時点は「やっぱり惜しい」気持ちにはなります。でも60歳になるまで、今の技術だけでやっていけるのか(貢献して成果が出せるのか)は見えにくいとは思いますが考えないといけないところです。
人のマネジメントをすることで成果を出していかないといけないとすると、今までの仕事のやり方(自分が成果を上げればいい、というやり方)は通用しません。自分以外の人が成果をあげるようにしないといけなくなるのです。未知のものに対しては不安なのは仕方ありません。
ただ、不安だからといって逃げてしまっては、スペシャリスト系列に行くか、永遠の現役になる以外ありません。社会はどんどん変化しているので、もしそのスペシャリストとしての仕事が価値を持たなくなれば、冷や飯食いか、悪くすれば追い出しを食らうリスクもあります。
専門化するということは、進化論的に考えても、リスクになるかもと考慮しておいたほうがいいです。
ま、うまくすれば、マーフィーの法則よろしく、無能になって、そこに定年までとどまれる可能性もありますが。
■参考図書 ドラッガー365の金言
ドラッカーのすごさは、簡潔な文章をもって複雑な世界をずばりと切り裂き、真理を明らかにするところにある。禅師のごとく普通の真理を数言をもって示す。読むたびにこちらの理解が深まっていく。本書ドラッカー365の金言は、それら至言のいわば宝石箱である。読者は一万ページを読むことなく真髄を得ることができる。
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書名 :ドラッガー365の金言
著者 :上田惇生