会社に入って5年くらいになると後輩が増えてきます。
仕事も自分の仕事をしていればいいだけではなく、部下や後輩の面倒を見ながら、彼らが結果を出すのを手伝わないといけなくなります。
■5年目以降に覚えるべき5つのこと
サラリーマンのキャリアは、ひとつはその部署において、専門的な能力を身につけて、仕事の成果として発揮することですが、5年目以降になると徐々にもう一つのスキル
部下(後輩)指導力
が問われるようになります。
この指導力が、やがてリーダーシップにつながっていき、さらにマネージメントになって管理職へのステップになります。
5年目以降、こうした仕事をする能力ではなく、他人を指導する能力が必要になるわけです。
単に指導力と言っても抽象的なので、部下には「5つの行動規範を示せ」と言ってます。
その5つとは
・明確な説明を提示できること
・実際にそれをやって見せられること
・「正しい行い」は何時でも誰に対しても同じことを言うこと
・危機感と向上心を持たせること
・繰り返し、継続できること
です。
今週はこの5つのスキルについて考えてみたいと思います。
■明確な説明を提示できること
人を指導する上でどうしても必要なのが、「なぜ、これをやることが必要なのか」を相手にわかるように説明することです。
人は自分が納得出来ない限り、自らの意思で動くようにはなりません。
もちろん、「とにかく、オレの言ったことをやれ」でも「給料が貰えるから、黙っていうことを聞け」でもやることはやりますが、それでは機械のように言われたことを何の工夫もなく単純にやるだけになってしまいます。
その指導を受ける人を成長させたいと思うなら、「なぜ」をきちんと説明する必要があります。
当然、「会社の利益になる」ことが重要ですが、新人レベルでは専門知識や視野が狭いので、その知識レベルと視野に合わせた説明の仕方が必要です。
これができないと、永遠にその指導する人が、「それ、いまだ! さあやれ」と言わない限り新人はやってくれませんし、やった結果は単なる過去のコピペです。パソコンで自動計算させたほうがよっぽど楽になります。人を育てるためには、その人が自分の判断で、自分の能力を使って行動できるようにしないといけない、ということです。
説明には以下の方法があります。
・それをする理論的裏付け
・それをする背景と目的
・それをすることによって得られる効果
・一般論におけるその意義
・指導を受ける人の成長の要素
・仕事に対する考え方のヒント
これらを多面的に説明することが重要です。
ある程度の年になればわかりますが、物事はある一面だけを捉えて、その発生原因や効果を説明することはできません。
そういった立体的・多面的な知識を実践の中で植え付けるために、説明をするということです。
■実際にそれをやって見せられること
説明したからといって、聞いた人がやれるようになるわけではありませんし、言葉だけでは(ほんとうの意味で)わかるものではありません。
山本五十六ではありませんが、
説明して
やって見せて
やらせてみて
フィードバックして
始めて一人でできるようになります。
ところが、「デキない指導者」というのは、「やれ」と言う割に、「じゃぁお前がやってみろ」といわれるとデキないんですよ。
管理職なら別ですよ。管理職は管理することが仕事なので、仕事の質が違います。
業務の指導者というのは、その業務ができてあたり前なんです。
たまたま、その担当者がいないので、指導者に「ちょっと、代わりにやっておいて」というと、「これ、どうやるかわかりません」と平然と言ってくる指導者がいますが、それでやり方を教えるなんてできるわけがありません。後輩に「おい、やっとけよ」と言っているだけは指導者ではありません。単なるパイプで、中身が無い。
後輩に「やれ」と言っていることが、後輩以上にうまくやれるでしょうか?
指導者なら、指導を受ける人以上に、迅速かつ高品質にできて当然です。
■「正しい行い」は何時でも誰に対しても同じことを言うこと
後輩の指導をしている時に、一対一で話をしていることはほとんどありません。
オフィスでみんなのいるところで話をするわけですね。
大体の場合、その周囲の人も、後輩が何を言われているのかを聞いてます。
その時に、「以前に言ったことと違う」とか「別の人に行ったことと違う」というのがバレます。当然相手が指導者なので、そこを指摘する人は多くはありませんが、心のなかでは
前に行っていたことと違うじゃん
って思ってますよ。
教える人と教わる人は信頼関係が必要です。
言っていることが変われば信頼関係なんて築けるわけがありません。
また、上司からチャチャが入った場合もきちんと「いや、これは××なので、このやり方が必要です」ときちんと言えるだけのしっかりした発言をしないと、「都合によって説明を変えるヤツ」と思われれば、それで信頼関係はアウトです。
他の人に言う時やや別のシチュエーションにおいても、「何が正しいのか」「どうするべきなのか」は同じことを言うのが大前提。
■危機感と向上心を持たせること
スポーツジムのインストラクターは、まず体脂肪率や体格(贅肉の付き方)などを調べて、その人にあったメニューを提示します。その時に、「とりあえずウォーキングをしましょう」ではなくて、
体脂肪率が××なので
という問題点を指摘します。その解決方法として、「ウォーキング」を提示するわけです。
トヨタも危機意識を煽ることで従業員の結束やコスト意識を強化していますね。「あのトヨタですら」です。危機意識は動機付け(モチベーション)にはとても重要な要素なのです。
もう一つの動機付けが、向上心です。
殆どの人は、「仕事がデキる人になりたい」と思ってます。もし全くその気がなくても、人から褒められれば嬉しいものです。褒められるというのは危機意識に並ぶ動機付けの重要な要素ですね。
それをちゃんと刺激してあげることです。
なにかできるようになったら「××ができるようになった」とか「これ、いいね」と言ってあげましょう。別に言うのはタダです。
本人(指導を受けている人)は、まだ経験が浅いので周りの人とくらべて「できない」と思い込みがちです。でもその人が少しづつ進歩していることを認めて挙げることで、「もっと頑張ろう」という向上心を引き出してあげることが、指導者には必要です。
時には「こんなやり方じゃぁダメだ」と叱ることも必要ですが、叱るばかりだと萎縮してしまい、ますますできなくなります。反骨精神旺盛な人で反発力を狙うというのは今の人たちにはあまり向かないのかもしれません。「褒める」という方が、失敗が少ないみたいです。
褒めるポイントというのが、到達感です。
ここまでできるようになった
というのを以前の状態と比べて褒めてあげましょう。
スポーツジムのインストラクターはよく「ちょっと肩幅が大きくなりましたね」とか言ってくれると、私のような、すでに色気もなくなったようなジジイでも嬉しいものです。
■繰り返し、継続できること
人間、一度言われたくらいでできるようにはなりません。
どうも私も含めて多くの人は、「あの時言っただろう」というセリフを口にしたり、思ったりすることが多いようですが、私は一度くらい言われたからといって、自分の行動がいい方向に変わったりしません(アホなだけかも)。
「ここはこうじゃなくて…、○○するんだよ」を何度も言わないといけないんです。
その時に「前にも言ったけど」という前置きは言わないほうがいいです。
個人的に、カチンと来るのは「だからぁ〜」と言われるやつ。
アホは承知してますが、だからと言って、「あ〜、面倒くさいやつだなぁ」的に扱われると、「お前こそ何様なんだ」と感情が反発してしまいます。そうすると、相手の言うことがどんなに正論であっても受け付けなくなります。
そういう時は年の功で、なんとでも欠陥を指摘できちゃうので、ますます自分の行動がいい方向にはいけなくなる。ヘタをしたら直接反論をして人間関係を悪くする、なんて経験も多数あったりして。
※落ち込むので、この話はヤメ。
教える側から見るとできて当たり前のことも、教わる側ははじめての経験なのですよ。
自分ができる事ができないと、つい、「イラッ」としますが、そこを一生懸命おさえて教えないといけないんですね。顔に出さないように。
人に何かを教えるというのは
繰り返し、繰り返し、飽きずに、根気よく、繰り返し、手を変え品を変え
が基本ですかね。