フレームワークに頼ってはいけない




世の中にはいろんな考え方のフレームワークが公開されてます。

とくに多いのは企業戦略についてですが、私達がよくよむビジネス書もほとんどは「こう考えるとより高い成果が出せる」というフレームワークのひとつです。見事な図になったものもありますし、文章だけのものものありますが。




■フレームワークは万能ではない


こういうところで示されたフレームワークは、何かの説明をするときに非常に強力です。

たとえば、マイケル・ポーターの5F分析。

    (1)「既存競合者同士の敵対関係」
    (2)「新規参入の脅威」
    (3)「代替製品・代替サービスの脅威」
    (4)「買い手の交渉力」
    (5)「供給者の支配力」(サプライアー)

これから参入しようとする新製品が市場に対してどのような効果があり、どのような方針で打っていくのかを説明するのにこれを使うと非常に説得力もあり、MECEでよく考えられているという印象を受けますよね。

販売戦略を立てる立場にないサラリーマンにとっても、PDCAなんてのは時々使うものではないでしょうか。

ところが、こんな本があります。




★P280〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
それには、ソリューションやメソッドや理論は「真理」ではなく、物事の仕組みに対するひとつの考え方にすぎないことを、ちゃんと理解しているかどうかが重要だ。洞察を深めるために他人の考えから学ぶのはいいが、なかにはまちがった考え方もあるかもしれないことは、しっかりと認識しておく必要がある。

どうしたらよいアイデアと悪いアイデアを見分けられるか?それは考えることから始まる。というより、まずは考えようとすることから始まる。

企業の経営の行き詰まりについてはコンサルタントにも大きな責任があると思うが、企業の側にも落ち度がある。多くの企業はコンサルタントを雇って、自分たちの代わりに考えてもらおうとする。企業が戦略の策定や、リストラや、合併の実現可能性の検討などをいつもコンサルタント任せにしてしまうと、あなたの会社のことを何もわかっていない人間が、あなたの会社のビジネスについて最も重要な意思決定を行っていることになる。
テイラー主義の最大の欠点のひとつは、考えることと作業を切り離してしまったことだ。その負の遺産はいまもなおビジネスの世界に受け継がれ、考えるよりもとにかく作業を完了させることを重要視する傾向がある。答えをはじき出してくれるソフトウェアのプログラムやチェックリストやスプレッドシートに頼るか、それとも頭を使って考えるかー多くのビジネスでは頭を使わない方法を選択するのである。

カレン・フェラン著 『申し訳ない。御社を潰したのは私です』
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フレームワークを使ってプレゼンをするのが仕事のコンサルタント(失礼)が言うとなんだかちょっと驚きですが、これがまたコンサルタントがいうからこそ妙に説得力がありますね。

■フレームワークを使いこなす


だからと言って、フレームワークを学ぶ必要がないというわけではありません。

フレームワークは、特定の条件における考え方のベストプラクティスとして非常に有効です。
だからと言って、それに頼りきってはいけないということです。

あなたが解決するべき課題は、その特殊性から世界で唯一の課題であって、後にも先にも誰も解決をしたことがない問題です。
一方でその課題の共通性は人間が数万年の歴史を刻んだ中で繰り返し出てきた問題でもあります。

したがって、この共通性の部分に対してのみその解決をしてきたベストプラクティスとしてフレームワークを適用し、その特殊な条件については別のフレームワークを持って切るなり、あなた自身が考えだすなりしてその問題を全体として解決に導かないといけないということです。

フレームワークを使いこなすというのは、フレームワークの美味しいところだけいただいて、あとは自分で完成させるということだと考えています。

ただし、フレームワークはその構造や単語の意味を知っているだけでは役には立ちません。
実際にそのフレームワークを現実の課題に当てはめてみて、その過不足を確認するとともに、その結果を確認して本当に効果があるのかどうかを評価していなければ、役に立つことはありません。そのためにはフレームワークについて、概要と実例を人に教えられる程度には詳しくなっていないということです。

 フレームワークは万能ではなく限界もあるが、『守破離の「守」』としてきちんと使えるまでトレーニングをする必要がある

ということです。

あなたはどんな思考フレームワークが使えますか?
それを人に説明できるような資料を作ってみてください。資料には実例を入れるのを忘れずに。

作っておくと、自分の復習の役にも立ちますし、分かった気になって実際に使えないという落とし穴に落ちずに済みますよ。





■参考図書 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。




■前代未聞! 気鋭のコンサルが業界の内幕を暴露。
コンサルの過ちを懺悔した全米騒然の問題作!

本書の著者は、マサチューセッツ工科大学及び同大学院を卒業後、
大手会計事務所系コンサルティングファームの
デロイト・ハスキンズ&セルズや戦略系コンサルティングファームの
ジェミニ・コンサルティングで活躍。その後、ファイザーや
ジョンソン・エンド・ジョンソンなどの大手企業で
マネージャーとしての経験を積んだ敏腕コンサルタント。

本書は、その著者が自ら「自分たちがコンサルタントとして
クライアントに勧めてきたことは、あれもこれも間違っていた」と
懺悔した前代未聞の書である。
「この30年、多くの企業に入り込み、『目標による管理』だの
『競争戦略』だのとお題目を唱えて回ったすべての
経営コンサルタントを代表してお詫びします」
と告白したのだ。

■大手ファームの仕事の「実態」とは?

著者は自らが経営コンサルタントとしてクライアントに勧めてきた
さまざまなメソッドについて、その経緯と理論を振り返りながら、
コンサルティングを受けた企業の顛末を詳細に語る。
「戦略計画」「最適化プロセス」「業績管理システム」など、
コンサルがどういう発想で改革を持ち込み、それが企業にどんな影響を
与えているかを具体的に理解できるのも面白いところだ。
現代の経営手法を根幹からひっくり返すような「告白」を満載した本書、
コンサル業界だけでなく、いまのビジネス潮流そのものに
一石を投じる一冊と言えるだろう。

目次

はじめに 御社をつぶしたのは私です
Introduction 大手ファームは無意味なことばかりさせている
第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない
第2章 「最適化プロセス」は机上の空論
第3章 「数値目標」が組織を振り回す
第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち
第5章 「マネジメントモデル」なんていらない
第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな
第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち
第8章 「ベストプラクティス」は“奇跡"のダイエット食品





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申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
著者 :カレン・フェラン

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●本書を引用した記事
 考えは伝えられない
 数値評価のワナ
 伝わった結果だけが問題2:どう伝わったかを判断する方法
 伝達の技術:どう伝わったかを判断する方法
 フレームワークに頼ってはいけない
 道具は目的を達成しない
 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

●このテーマの関連図書


コンサルは会社の害毒である(角川新書)

いたいコンサルすごいコンサル究極の参謀を見抜く「10の質問」

コンサル一年目が学ぶこと

戦略評価の経営学―戦略の実行を支える業績評価と会計システム

この1冊ですべてわかるコンサルティングの基本

コンサルティングとは何か(PHPビジネス新書)





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posted by 管理人 at 05:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 知的生産術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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