ひとつには、すでに上司が気がついている場合があるからです。それに対して上司があなたを始めとする部下に何も指示をしていないというのは、
・どうしていいか困っている
・機が熟するのを待っている
可能性があります。そんなところへ声高に「こんな問題があります!」って鬼の首を取ったように報告したら、上司としては気分がいいわけがありません。直情型の人なら「そんなことは知っとるわ!、余計ないことを言うな!」と怒るでしょうし、抑制型の人なら「よく気がついたね。でもちょっと待ってね」と、あなたの意見は結局まともに聞いてはもらえません。
■恐怖を呼び起こす説得の微妙な効果
R.B.チャルディーニの名著『影響力の武器 実践編』では表題「恐怖を呼び起こす説得の微妙な効果」の節で以下の様な記述があります。
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就任演説において、第32代アメリカ人統領、フランクリン・ルーズべルトは不安を抱えた世界大恐慌時代のアメリカ国民に対し、次のような有名な一節をもって語りかけました。
「まずは皆さんに、私の固い信念をお伝えしたい。私たちが恐れるべきなのは恐怖そのものだけです。……(中略)……恐怖は、後退を前進へと転化させる力を麻癖させてしまいます」
さて、ルーズべルトの言葉は正しかったでしようか。
聞き手を説得しようとするとき、彼が言うように恐陥は人を麻痺させるのでしようか、それとも人にやる気を起こさせるのでしようか。
研究結果によれば、ほとんどの場合、聞き手に恐降をあたえるコミュニケーション方法は、その恐怖を取り除くための行動を聞き手から引き出します。
ただし、この原則には一つ大きな例外があります。たとえば聞き手が恐怖を与えられ、危険が示されていても、明確で具体的、効果的な危険回避手段が伝えられていないと、聞き手はその情報を遮断したり自分は大丈夫だと思い込んだり(否認)することで恐怖に対処することがあるのです。
その結果、その人は本当に麻痺してしまい、全く何の行動も取らなくなります。
ハワード・レーべンタールらの実験では、学生たちに破傷風の危険を詳述した公衆衛生パンフレツトを読んでもらいました。パンフレットは、破傷風感染の結果を示す恐ろしい画像が入ったものと人っていないものを用意し、また、一部の学生には破傷風予防注射の具体的な受け方を伝え、それ以外の学生には伝えませんでした。さらに、対照群となる別の学生たちには、破傷風の危険は告げずに予防注射の受け方のみ教えました。その結果、恐怖を強く訴えたメッセージを受け取った学生たちは破傷風の予防注射を受ける気になりましたが、これはそのメッセージが予防注射を受けるための具体的な方法も同時に示していて、破傷風の恐怖が和らげられた場合に限られました。
このことから、具体的な危険回避手段を添えることがなぜ重要なのかが分かります。つまり、恐怖を取り除くための手段が明確であればあるほど、情報の遮断や否認といった心理的な対処法に頼る必要がなくなるのです。
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つまり、問題や課題の指摘(報告)には以下の3つの要素が必要だということです。
・放置しておくとどのようなことが起こるかの具体的例示
・課題の本質の報告
・具体的な回避策・対策
です。この3つがなければ、あなたの問題発見は上司や関係者に対して全く説得力を持ちません。
また、別の記事でも書いたとおり、回避策(案)には「松竹梅戦略」が必要です。
■参考図書 『影響力の武器』
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◆その他Webリンク
『影響力の武器』の[第三版] - マインドマップ的読書感想文
http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/52139102.html
影響力の使い方講座 - ダイレクト出版
http://www.directbook.jp/cin/index_af.html
影響力の武器とは?説得するときにはこれ - DCC用語集
http://www.direct-commu.com/terms/terms_eikyoryoku.html
影響力の法則 影響力の武器 - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=QTwgNDv6Igk
影響力の武器:マネジャーとしての影響力は、どうすれば発揮できるのか?-Bizトレンド
http://biz-trend.jp/article/2014/118