戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方6




仕事に役立つ本をご紹介しています。本日は、戦争のやり方の本。

よくビジネスで、「戦術」とか「戦略」という言葉を使いますが、これは文字通り戦争をするために考えられたものをビジネスに転用していることはよくご存知かと。

孫子」なんてその典型的な例ですね。
ただ、「孫子」は普通のヒラサラリーマンにとっては、それを使う場面なんてあまり多くありません。どちらかというと、「あっちに行って、死んでこい」と言われる方なので…。

ただし、何かのリーダを任されるときはあります。小部隊の隊長さんレベル。



そこで、本書は少部隊の隊長になって特定の条件下に置かれたときにどのように判断するのか、どのような情報収集をすればいいのか、どのように上司の支援を仰げばいいのかについて、仮想戦場に放り込まれた感じで考え方を教えてくれます。

まあ、戦場と自分の仕事の共通点を考えられない人にはもう少し具体的に仕事の局面を挙げた本のほうがいいかもしれませんが、エッセンスを抽出したり、教訓を活かしたりする事ができる人には、役に立つ本だと思います。

何回かに分けてご紹介します。
本日は最終回。
面白かった一節をまとめて紹介。




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●有効な命令の下し方
指揮官は任務をうけると、参謀たちに「指針」を示す。「指針」には、

 ・参謀活動(見積り、計画)を終了し、報告する時期
 ・すぐに処置する事項。
 ・戦闘指導の基本的態度、作戦の基調、たとえば「始めは処女のごとく、終わりは脱兎のごとし」など。
 ・特別な兵器の運用、たとえば、核兵器。
 ・特別に注意をはらう事項、たとえば、マスコミ対策、政治家・官僚対策。

などがふくまれる

注意すべきことは五つある。第一は、指針は指揮官がみずからの責任・哲学において一方的に決定するものであるから、自分の個性に合わないことをのべないことである。

たとえば、慎重な性格の指揮官が大胆な案を要求しても、自分が実行できるわけ力ない。

日ごろの自分を考えて大胆な行動をきらう性格であれは、自分はその程度の器であるとあきらめるしかない。そうでないと、参謀たちがムダな作業をすることになる

第二は、形容詞、副詞をつかわないことである。これは参謀活動に、その解釈をめぐって混乱をきたす元凶になる。

第三は、指針を決定するにあたって背景となった、指揮官の状況認識を、正確に説明することである。生身の人間である指揮官に私心のないことはむすかしく、任務の遂行にあたって、なにがしかの個人的欲望や、政策的判断がはいってくる。それを包みかくさず白状することだ。

指揮官の個人的欲望・政策的判断まで、参謀たちが推測することは不可能である。こうすることによって、参謀たちは、指揮官の状況認識がせまかったり、まちがっていると判断した場合には、指針そのものの訂正を要求することができる。

第四は、この作戦において特別に協同、支援する部隊、配属される部隊に対する配慮である。功をゆずり、損害を少なくするようにしなければ、つぎからまともな協力・支援をうけることができなくなる。

第五は、初陣の部隊、先の戦闘において苦戦した部隊に対する配慮である。彼らには「勝ち味」をあたえるようにしなければならない。

指針をきめたうえで指揮官は、状況を判断することになる。敵の状況を見積り、作戦について考える。

ここでは、「なにが勝ち目か?」をはっきりさせることである。

ビジネスでいえば、セールスポイントを、しっかりさせることだ。

つぎにいよいよ作戦が計画される。

ここでは、「計画できないこと、計画してはならないことを計画するな/だ。作戦が一歩すすめば、状況が変化する。それがわかっていなカら、先のことまで計画するのはムダということだ。先のことは、大ワクと方向性のみで十分なのた。

そして、命令が下達され、命令の実行を監督する。

軍隊の命令は、原則として、「後命は自動的に前命を取り消す」である。前命を取り消さない場合はかならず、前命が生きていることをつけくわえる。

一般企業における命令は、この点がきわめて不明瞭である。部下はいつのまにか、いくつもの命令をせおいこむことになる。命令をあたえた上司は、自分の下した命令を管理しなくなり、都合が悪くなると、部下をよびつけて「どうしたか?」と聞く。このような問題は軍隊にはない。

松村劭(著) 『戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方
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ここではアマチュアを、すぐに、実戦に送りだすことのできる前者の思考順序を、紹介する。この思考方法は、基本的につぎの順序になっている。

@「命題」
 ・通常、上級部隊指揮官からあたえられる「任務」である。
 ・これを子細に「任務分析」し、達成する事項の優先順位をきめる。
A「前提」・作戦する地域を規定する。「地域の特性」をあきらかにして認識し、戦術的に分析する。
 ・現在までの敵情を解明し、将来の「敵の可能行動を列挙」して、採用公算と弱点を見積る。
 ・自分の部隊の状況を掌握し、敵戦力と相対比較して、勝ち目(とくにすぐれている点)と問題点をあきらかに認識する。
 ・こちらがとりうる「行動方針を列挙」する。
B「分析」
 ・すべての「敵の可能行動」とすべての「味方の行動方針」を総合的に組みあわせて戦闘シミュレーションを実施し、行動方針の選択のためのカギとなる要因を見いだす。
C「総合」
 ・比較のための要因に、重要度の順位を定める。
 ・行動方針を比較する。
 ・ついで、時間と空間の要因について考える(英国式。理論的ではないが、経験的に誤りをすくなくするためくりかえす)。
D「結論」
 ・選択の腹構えを定め、最良案を選択し、その問題点と対策をあきらかにする。
 ・英国式では、作戦計画の骨子を作成する。

松村劭(著) 『戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方
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戦術では、「すべて不等式で考えろ/」ということばをつかう。最大限に成功する場合と、最低限に成功する場合をつねに考えろという意味だ。そして最後に、成功しない場合を考えて、作戦方針を決定的に変史をする「代替案」を準備することである。

今日、企業では等式に考える傾向がある。たとえば予測売上高の線図がそうだ。

最大限の場合しか考えていない戦術と同様にあらためたほうが合理的であり、柔軟性に富む。

マーズ山の占領が容易でないという認識は、ほほ正しい。今夜の夜間攻撃が失敗すれば、すぐに代替案「ライプラ地区防御」に転換しなければならない。そうなったとき、早朝、部隊は疲労こんばいしており、昼間の方針変更と、迅速な防御準備は困難であろう。

A案はとれない。、D案はとりあえすの処置案であって、最終的にどう決着をつけるかは、もう一度決定しなければならない。

決断とは戦術目標が、きちんと目的のあるものであることが必要た。龍巻少佐の意見はあらっぽく奇策であるが、目的ははっきりしている。三鷹大佐はD案を採用した。

松村劭(著) 『戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方
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■参考図書 『戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方





立ち読みできます立ち読み可
日常生活やビジネスに必要なことはすべて「戦術」に詰まっている! 本書は、元自衛隊作戦参謀である著者が、自ら考案した本格戦術シミュレーション60題を通して、「戦いに勝つための9原則」(1「目標の原則」2「統一の原則」3「主導の原則」4「集中の原則」5「奇襲の原則」6「機動の原則」7「経済の原則」8「簡明の原則」9「警戒の原則」)を解説したものである。
「戦術」は決して特殊な知識ではない。人間社会やビジネスの世界において、かなり有効な要素を含んでいる。「他人と意見が食い違った場合、どうしたらいいのか」といった日常生活で出合う出来事から、「勝つための目標をどう立てるのか」「急激な戦況の変化にはどう対応するか」などビジネス上の問題まで「戦術」はあらゆる状況・場面に応用が利く。
現場は刻々変化している。普通に行動したことが戦機を生んだり、危機を招いたりする。冷静に分析しながら的確な判断力が身につく本。





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戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方
著者 :松村劭
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戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方
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●本書を引用した記事
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 戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方5
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 戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方2
 戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方1

●このテーマの関連図書


補給戦―何が勝敗を決定するのか(中公文庫BIBLIO)

戦術の本質戦いには不変の原理・原則がある(サイエンス・アイ新書)

軍事学入門

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戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方1

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